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#414 無くなってもまた作るのデス

SIDEアルドリア王国


‥‥‥国というものは、案外脆い物である。


 何か一点でも、大事な要素が抜け落ちてしまうだけで、あっという間に崩落の道を歩んでしまう。


 頑強に作ったつもりが砂上の楼閣だったりするもので‥‥‥いや、そもそもその思い込み自体が何も意味を成し得なかったのだろう。



 そう思いつつも、その国は既に滅亡の道を歩んでいる。


 周辺諸国は降伏したところにはきちんと対応していき、全てを受け入れていく。


 けれども、その地に残されているのは、選別された結果、本当にどうしようもない者たちしかいない。


 私腹を肥やしていた領主に貴族。


 冤罪をかけたり、自分のストレス発散のためにわざといたぶったりしていた衛兵や騎士。


 違法な物だと理解していながらも流通させ、財を築こうとしていた悪徳商人。



 その他諸々どうしようもない、本気でこの先どうしようもない人たちが捕らえられていき、各国で組んだ連合軍が進軍していく。




 そして、その行きつく先にあるのは‥‥‥‥この国の王城。


 城を守るはずの騎士たちは既におらず、守ろうとする者はいない。


 務めていた文官や大臣たちも既に捕縛済みであり、残すは王族たちのみ。


 その王族たちも腐り切っている者が多く、次々と捕らえていく中…‥‥一つの報告が入る。


 それは、国王ラッパリアの逃亡。


 この国を治めるべきでありつつもその能はなく、そもそもこうなる元凶を作り出した人物が、既に城外へ逃亡していたのだ。


‥‥‥その逃亡すら、彼女の計算に入っていたとは知らずに。






「‥はぁっ、はぁっ、く、愚民どもめ…‥‥まさか、反旗を翻すとはな」

「国王陛下、そろそろ一旦休憩された方が良いかと思われます。幸い、追手はまだ追いついていないようです」

「そうするか…‥‥水を持って来い!!」

「はい」


 命からがらに、必要な食料や水などを詰め込んだ馬車から持って来いと、国王ラッパリアはともに逃げた臣下たちと共に、休憩を取ることにした。


 王城に攻め入られた時には逃げ出し、いざという時のためにという事で、愚王の頭ながらも用意していた逃亡用の馬車で安堵の息を吐くが…‥‥逃げたところで、宛先がない。


 各国というべきか、周辺諸国が一斉に攻め入ってきたので、他国への亡命が出来ないのだ。


 けれども、臣下の一人が提案したとある逃亡方法を国王は選択した。



 周辺諸国が全て敵になっているのであれば、その諸国の手が回らないところへ向かえば良い。


 その回らないところと言えば…‥‥


「海上へ向かうための港はまだ無事のはずだな?」

「そのはずです。国王陛下が海外へ逃亡される時を備えて、あらかじめ用意しておいたのです」

「荷馬車の食糧以外にも、逃亡用の船には様々案物資が用意していますので、出港後も当分の間は大丈夫でしょう」


 その言葉を聞き、安堵したような息を国王は吐く。


「ならば、追手が来る前にさっさと着かなければな。休憩は終わりだ、向かうぞ!!」


 国王のその言葉と共にわずかな休憩も終え、彼らは港へ向かう。



‥‥‥国王は気が付かないのだろうか?


 ここまで落ちぶれたというのに、未だに臣下が共に来ているこの状況に。


 追手の速度がやけに遅く、追いついていない不自然な状況に。


 いや、気が付くはずもあるまい。賢くもなく、他者任せなところが多すぎるがゆえに、自分自身でかんげるという事を放棄しているのだから。


 自ら選び、進んでしまった最後の旅路。


 それは誰に求めることができず、結末は誰もが分かり切ってしまうだろうが…‥‥知らないという今の状況こそが、わずかな慈悲で与えられた幸せな時間なことに、国王ラッパリアは気が付くことはなかったのであった‥‥‥





――――――――――――――

SIDEシアン


「…‥‥娘たちが元気に育っているのは別に良いんだけどさ‥‥‥」


 ポチの件も終わり、平和な日常に戻った今日この頃。


 本日は休日であり、家族全員で遊んでいた。


‥‥‥なお、ミスティアの女王としての仕事もきちんと今日の分は消化済みであり、一家そろって遊ぶのはいいだろう。


 そして、新しい遊び場として、ワゼが新しく作ったテーマパークのような箱を利用させてもらった。


 なんでも王国での新しい観光地の目玉を考えているようで、ここであらかじめ作っておいて、確認作業をしているらしい。


 なので、ちょっとした貸し切り状態で、待ち時間もなく快適に過ごせるのだが…‥‥


【楽しいいいい!!】

「みーーーー!!急速落下の感じが癖になるー!!」

「うわあああああ!!回転しすぎるけど、これはこれでいいかもー!!」



「‥‥‥全員、絶叫系のアトラクションで楽しみまくれているんだよなぁ」

「絶叫なのに、響くのは悲鳴ではなく歓声だけど‥‥‥それでも、笑えているのなら良いですわね」


 様々な遊具がある中で、子供たちが気に入ったのは絶叫系のアトラクション。


 急速落下、超高速回転、急上昇からの紐なしバンジーモドキ…‥‥安全性も事前にワゼたちが確認しており、危険が無いとはいえ、子供たちのアグレッシブさには驚かされる。




【あ、安全とはいえ‥‥‥流石に心臓に‥‥‥悪かったです‥‥‥】

「ハクロ、無理しなくていいからね」


 ぶるぶると震えて立ち上がろうとしつつも、腰が完全に抜けて立てなくなったハクロを僕は支える。

 

 普段は彼女の蜘蛛部分によりかかったりすることが多いけれど、こういう彼女からのよりかかりは珍しいものだ。


 まぁ、絶叫系に乗って腰を抜かしたとかじゃなくて…‥‥


「んー‥‥‥最近作り上げたお化け屋敷でしたが、奥様には刺激が強すぎたのでしょうカ?」

「強すぎたんだろうなぁ…‥‥」


 無理もない。リアル感あり過ぎるお化け屋敷って怖すぎる。


 楽しめる範疇なのでビビり過ぎることはなかったが、それでも無駄に技術が詰め込まれまくっているせいで、恐怖が増していたんだもの。


「アンデッド系のモンスターなどもいますが‥‥‥それらよりも怖さはあふれ出てましたものねぇ」

「本物の幽霊がいたとしても、裸足で逃げそうな気がするよ…‥」


 そもそも幽霊に足があるのかという部分が気になるが、それはどうでもいい。


 僕とミスティアの方はまだ恐怖にちょっとは耐性があったようだが…‥‥いかんせん、ハクロの方が耐性が無さすぎたようだ。



【何が原因で、腰が抜けるかもわかりませんよ…‥‥うう、足腰が震えてまだ動けません‥‥‥】

「まぁ、何とか立ち直るまで一緒にいるよ」


 なんというか、こうやってちょっと怯えて動けなくなった彼女も、可愛くは思えるが…‥‥少なくとも、この反応を見る限りあのお化け屋敷の公表はやめておいた方が良い気がする。


 同じように腰が抜けて動けなくなった人が大勢出た日には、確実に休憩場所とかが混むのが目に見えるからね‥‥‥まず動けるのかな?


 

「しかしワゼ、お化け屋敷のリアリティが高すぎないか?本物の死体とか使っているようなものとかあったんだけど」

「流石にこの施設では使えまセン。ちゃんと偽物を使ってマス。一応、恐怖を何段階かに分けて、一番最恐ではホムンクルス技術でギリギリを攻めようと計画はしていましたけれどネ」

「計画はしていた(・・)?中止したとかあるのか?」

「ハイ。流石にああいう場はその手の者が集まるのか、それとも追求しすぎたようで‥‥‥悪魔ゼリアスさん経由で冥界からちょっと苦情が届きまシタ」


…‥‥そんなところから苦情が来るって、本気でどんなものを作りかけていたんだろうか。


「まぁ、事情を話せばとあるところでの許可が下りた上に、協力をしてくれるそうなので結果としては良かったんですけれどネ」

「本気でどういう恐怖の施設を作る気なんだよ?」

「流石に国民へ開放して、心臓麻痺とか恐怖でのショック死とかは見過ごせないですわよ?」

「そのあたりは調節しマス。ええ、テストプレイ(・・・・・・)なども兼ねますのでご安心くだサイ」


 それならそれで、良いか。


 何にしても、色々な人が楽しめるような場所が出来上がるのも悪くはないと思えるのであった…‥‥


「ところで、ワゼさん、これ王国内に建設するとして、どのぐらいで作れますの?」

「3日ほどですネ。常人の御客様が来るなら1日程度の建設で済むのですが、何処かで漏れたのかそれ以外の方々も来るようでして、そちらに対応できるような施設も作らないといけないのデス」


‥‥‥ちょっと待って?それ以外の人って何?


‥‥‥色々とツッコミどころはあるようだが、安全な場所であれば問題はないと思いたい。

何にしても、家族皆で過ごせるような施設を増やすのは良いだろう。

しかし、子供たちがアグレッシブすぎるなぁ…‥‥おてんばと言えば聞こえがいいけど、もうちょっとおしとやかに育ってほしかったような気がしなくもない。まぁ、元気に成長しているのであれば、それで良いか。

次回に続く!!



「というか、本当に怖いもの知らずな感じがするなぁ…‥‥何故あんな風に育つのか」

「親として、できるだけ接してもああなるのかしら?」

【そして全員、何でお化け屋敷が平気なのでしょうか…‥‥まだ動けませんよぉ…‥‥】

‥‥‥個性を潰さずに、伸ばすように教育しているからこそのアグレッシブさなのか。それは誰にも分らない。

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