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#413 集めたデータもしっかりと利用しつつデス

SIDEボラーン王国:学園


‥‥‥ワゼが創り上げてしまった学園。


 現在はシアンの娘や息子たちも入学しており、皆しっかりと学びつつ、各々を高め合う場。

 

 そして本日は、ちょっとした新しい学習方法が取りいれられていた。


【筋肉増加を求める人用、特別補習授業?そんなのあったっけー?】

「んー、弟が好みそうな気がするかも?」


 昼食の合間に、学園の掲示板に張られていたその紙を見て、シアンの娘であるノルンとエイルはそう話し合う。


 彼女達も成長しており、アルケニーだった娘たちは既にアラクネの方へ進化しており、各自の能力は上昇。


 アルケニーではなく別種族になっていた娘たちの方もより成長しており、魔王の娘たちという事で人目置かれる存在ではあるが、彼女達は特に人の目も気にすることなく、皆と一緒に遊んだりしている。


 とはいえ、それでも家族同士の方が気が楽なので、こうやって一緒に食べる事も多いのだが‥‥‥


【まぁ、筋肉増加なんて特に関係ないかんじかも。うん、今日もご飯が美味しいっぴゃい】

「何だろう、この食欲の差を見ると負けたくないような、勝ったらダメな様な…‥‥複雑なかんじにゅ」


 まだまだ幼少期の口癖はそのままとはいえ、元から燃費の悪いノルンの食欲に、エイルはちょっと苦笑する。


 今食べている昼食の量の差は、果物でわかりやすく例えるのであればスイカとサクランボぐらいであろう。


 一応、ドーラお手製超カロリー蜜飴などもあるが…‥‥それでも食べることは好きなようで、胃にはいる量であれば関係なく食べてしまうようだ。


 それでも、体形自体は変動なく、姉妹全員ハクロと似たような成長をしているが。


 むしろそれだけ食べているぶん、他の姉妹よりもちょっとお腹ではない部分に栄養が行っている疑惑が密かに浮上しているのだが‥‥‥そんなことは気にしない。


「でもあの補習授業って、ワゼが絶対に提案したやつだよね?先生たちが提案するわけないもの」

【んー、その可能性は大きいかもね。あ、でも男子たちには好評というか、興味を買っているようだよ。‥‥あれ?なんかオルトリンデ姉様の姿があるような‥‥‥?】

「え?‥‥‥あ、本当だ。あの特徴的な翼は姉様というか、何で姉様も興味を…‥‥」


 気になりはするが、夕食の場では全員そろうのでそこで聞いて見た方が良いだろう。


「そう言えば、ロール姉様が最近やらかしちゃった話もあったねぇ…‥」

【ああ、ヒルド姉様と一緒に氷像彫刻対決をして見て、全部凍らせちゃったもんね‥‥‥何で、私たち姉妹、全員何かとやらかすのだろうか‥‥‥】


 筋肉に脅威を持ったらしい姉は放置して、別の姉の話題に切り替えると、ちょっと向けた話題を間違えたようで、少し互に落ち込んでしまう。


 これも血筋というべきか、何と言うべきか…‥‥シアンの子供たちは全員、ちょっとしたやらかしをしたりしているようだ。


「まぁ、でも夏場とかは涼しくなるし、問題ないかもね」

【それもそうかー】


 そして、落ち込んだぐらいでは持ち前の明るい性格もすぐに消え失せず、直ぐに元気を回復させる。


 どことなくのほほんとさせつつ、平和な一日が流れているのであった…‥‥‥



「そう言えば、落ち込んだヒルド姉様がトパーズ向けに手紙も出していたなぁ…‥‥私たちも、婚約者出来れば出し合う仲になれるのかな?」

【どうなるかはわからないけれどね。できれば彼氏が欲しいなぁ思う時があるけど‥‥‥今度、お母様にどうやってお父様をゲットしたのかとか聞いてみようか】


‥‥‥ゲットしたというか、されたというべきか。あとでハクロが困ったような表情を浮かべる羽目になるのであった。




【そう言えば私、元々ワゼさんに捕獲されてから見知りましたっけ…‥‥】

「材料探しで、電気玉ぶち込みましたからネ」


――――――――――――――――――――――

SIDEアルドリア王国


‥‥‥のほほんっとした緩い空気がボラーン王国内で流れて平和を楽しんでいる丁度その頃。


 海の向こう側にあるアルドリア王国では今、その平穏さが失われていた。


 いや、元から腐りまくっている政治ゆえに平穏自体が無いも等しいのだが…‥‥人々を取り締まるような者たちもいなくなっている現在、平穏という言葉が旅に出たかのような状態になっていた。




「…‥‥どういうわけだ!!ここ数日、ろくなものを食べることができないのだが!!」


 王城内、謁見室。


 アルドリア王国の国王は腹立たしそうにそう叫びつつ、臣下の者に問いかけるが、その回答は望んでいない者だった。


「陛下、今はもう、食料がありません。城中のすべてが無くなっているのです」

「どういうことだ!!」

「今年も豊作かという目途がありましたが…‥‥それが大外れし、現在我が国には食料がほとんど流れていないのです」


‥‥‥このめどが外れた原因は、言うまでもなく自業自得である。


 去年が豊作であれば今年も豊作だろうというめどを立て、各地の領主が税をその基準のままにしていた。

 

 だがしかし、そう毎年同じようなことがあるわけがなく‥‥‥普通の状態ならまだしも、どういう訳か今年は全てが駄目になっていた。


 農作物は枯れ果て、漁業を行おうにも魚がおらず、獣たちを狩ろうにも兎一匹見当たらない。


 昆虫食を考えた者もいたのだが、その虫一匹すらも無くなっていたのだ。


 そこにさらに、豊作基準の重い税により、流石に食べる者も根こそぎ取られては不味いと思い‥‥‥そして何よりも、各地の貴族や領主もそれに気が付き、自分達の食べる分が無くなるのは不味いと思い、流さなかったのである。


 輸入もしようかと検討したが、金が無い。


 国庫が無くなった時から東奔西走して金を集めてもいたのだが…‥‥それらは全て無駄に国によって浪費されてしまい、取引すらできなくなっていたのである。


「なんだとぅ!?だが、そのぐらいの報告はすぐに来てもいいではないか!!」

「そ、それがする者は全員おらず、代わりに請け負っていた者たちもすでに逃げ出しており‥‥‥生憎乍ら、ここへ食料を届けるような者たちもいなくなっているのです!!」


 人材不足を解決していなかったがゆえに、能力の足りない者たちでは対応しきれず夜逃げ。


 金不足を解決していなかったがゆえに、いや、解決する気があるのかというような浪費に呆れ、集めていた人たちも逃亡。


 そして、こういう時の非常食があった食糧庫は、そもそも魔に被害に遭っていたせいで食べる者すらもない。


 そこへトドメをかけるかのように、食糧危機がやって来たのだ。


「民衆は既に、食べる者もなく飢えた状態…‥‥このままでは間違いなく、暴動が起きると思われます」

「だ、だが城にも食料はないだろ?そんなことができるとは思わないのだが?」

「それが‥‥‥‥」



…‥‥何もなくなってしまえば、人は次にどう出るのか。


 それは当然、ある所へ目を向けて、それを手に入れようとするだろう。


「そして他国にも目を付け、そちらの方へ助けも求めたようですが…‥‥全部、却下されてます。いえ、それはちょっと語弊があるようでして‥‥‥」

「どういうことだ?」

「条件付きならば、食料を譲っても良いという話がありました。ただし、その条件というのが‥‥‥属国になるか、あるいは国を一度潰してしまうか、どちらかにしろと」

「‥‥‥なんだとぅ!?どちらもできるわけがない!!」


 まさかの食料と国との交換条件ともいえる内容に、国王は思わずそう叫ぶ。


「そんなことを言う国々には、宣戦布告しろ!!そうだ、最初から全部奪えば良い話しではないか!!」

「それが簡単にできると思いですか、国王陛下?」

「どういうことだ?我が国の軍は優秀で、」

「この大陸中、全部の国々が言っているのです。ええ、過去に交戦し、属国にしていた国々までもが独立を言い始めた上に、我が国を攻め始める用意をし始めたようです」

「はぁぁぁあ!?」


 その内容に、国王は思わずそう叫んだ。


 それもそうだろう。過去に武力で占領した国々もあるのに、その国々すら反旗を翻して再び立ち上がろうとしているからだ。


「馬鹿な、我が国との戦力差を理解していないのか!?かつて負けた負け犬共が、今更束になっても意味がないだろうに!!」

「‥‥‥本当にそうでしょうか?」

「そうに決まっている!!だからこそ、さっさと全部へ宣戦布告し、食料、いや、全てを蹂躙して奪ってくるのだぁぁぁ!!」


 臣下の問いかけに対して、そう答える国王。


 その様子を見てその臣下は頷き、その命令を実行するために一旦退出する。


 そして廊下をある程度歩いたところで…‥‥彼は自身の服を脱ぎ去った。


 いや、元から来ていたすべての皮を脱ぎ去り…‥‥そこに立っていたのは、顔すらも臣下とは異なる一人のメイド。



「‥‥‥‥愚かというべきか、既に入れ替わっていたことにすら、気が付かないとは…‥‥過去の栄光にすらすがる馬鹿とは、一周回って哀れにも感じますネ」

「ええ、ですが、その分次の行動が計算しやすく、もう目に見えていたことでしょウ」


 彼女に続けて別のメイドがすっと現れ、廊下を歩んでいく。


「…‥‥まぁ、元々亡命しようにも、既に選別済みでしたので、誰も逃げられないのですけれどネ」

「そして一人一人、丁寧にこの状況になった原因を説明した際の顔は、皆同じだったのはちょっと見物でしたが…‥‥もういいでしょウ」

「ええ、ええ、最後の段階へ踏み切る前に、もうちょっと踊らせたかったのですが、それももう意味はありまセン」


 さらに新しいメイドが現れ、彼女達は一糸乱れぬ動きで歩んでいく。


「「「では、そろそろ終わりにさせましょウ」」」


 ふふふっと笑いあいつつ、彼女達は先ほど国王が下した命令を実行させていく。


 仕えるべき主ではない者の命令は聞きたくはないが、これは既に想定内の事であり、国王自らが選んでしまった道。


 人は人だけの道があり、その選択肢を自ら選ばせただけのことだ。



‥‥‥そしてそれから数日もしないうちに、アルドリア王国から全部の国へ向けて、宣戦布告が出された。


 その知らせは国民全員にいきわたったが…‥‥それがどのような結果を生むのかは、もう間もなくわかる事であった。




「…‥長々続ける地獄もありでしたが、流石に予算を多く使いたくもないですからネ」

「何やってんのワゼ」

「休息として、シスターズと最近新しく知ったTRPGというものをやっていたのですが…‥‥個人の思考は違うのですが、どうも全員同じように隙が無さすぎて、次の一手が出しにくくなってしまったのデス」

「運要素とかも絡んでいたと思うけど…‥‥それは?」

「どういうわけか、サイコロなどを利用しても全員その時の有利な手に進める状態になるんですよね…‥‥何故でしょウ」


‥‥‥流石にどうしようもないのもあるのだった。

方やのほほんほのぼのとした空気が流れる。

けれども、もう方やその空気は行方不明となり、荒れ狂い始める。

今さら気が付いたところで、もう遅い。彼女達は既に入り込みまくっているのだからな…‥‥

次回に続く!!



「というか、それ以外のゲームで遊べばいいような」

「全部引き分けになるのですガ」

…‥‥どうしろと。いや、流石にワゼたちにわからないことを問われても無理なんだが。

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