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#396 情報力をなめんじゃないデス

SIDEシアン


「‥‥‥情報大国ネッタの記念式典?」

「そうですわね。兄様方の方で、どうやら動きがあったようですわ」


 数日ほど雨がありつつ、開けて久し振りの快晴に娘たちが喜んで遊ぶ中庭を見ながら、僕はミスティアからその話を聞いていた。


 彼女の兄である、第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーン‥‥‥いや、もう元が付くというか、既にその国の共同経営者という名が付いた彼らが興した情報大国。


 国名が何度も変わりつつ、規模も情報収集能力もどんどん増加し、今ではすっかり他国から情報を得るためにわざわざ頼られるという国なのだが、そこでとある動きが出ていた。


 その動きとは、その共同経営者になった二人の婚姻話。


 どうもつい最近、ようやく落ち着いてきたところで、彼らの後継者はどうするのかというまだ気が早そうでありつつ、国としては早めに決めたい問題が起きたようで、その問題を解決するために情報網を駆使し、それぞれの理想となり得る女性たちを見つけ、交際の末に同時の結婚式を挙げることになったらしい。


 情報大国というのもあり、できればここでお祝いを申し上げなければ、どこの国が祝っていないのかという事も赤裸々に公開されそうなこともあり、各国が祝いの申し出に出ているそうだ。


 そしてそんな中で、このボラーン王国の方にも、ミスティアが彼らの妹というのもあって、こちらは招待状が送られてきたそうなのである。


「めでたいと言えばめでたいけど…‥‥それってミスティアにとっては久しぶりの家族集合とかになるんじゃないかな?」

「そうなりますわね」


 既に隠居しており、温泉都市の方で色々な意味で名物になっている元国王及びその妻たち。


 他国へ嫁いだ第1王女夫妻や、現在流浪の修行の旅中の元第5王子にも届けられているようで、どうやら彼女にとっての血縁者が集合するようだ。


‥‥‥なお、元第1,2王子に関しては、こちらは何とか来れる可能性はあるらしい。


 情報によればとある無人島にたどり着き、そこで追ってきた女性たちと色々と暮らしているようだが、その日ばかりは必死になって脱出するのだとか。


 まぁ、終わったらすぐに戻されるらしいが。それは、あちらの事情もあるので僕らが深く入る事は出来ないだろう。



 とにもかくにも、全員集合となるような結婚式のようだが、僕等の方もミスティアの夫とその家族たちという事で招待されている。


 娘たちも一緒に来れるようなので、結構な大所帯で出向くことになるが…‥‥


「とはいえ、一応行き来に不安要素とかはないのか?」

「今のところはないですネ。情報国の情報網を狙う輩はいるようですが、逆に探知されて追われている状況のようデス」


 情報網の規模で言えば、こちらも負けていないワゼに聞いて見たところ、一応旅路に不安は無いようだ。


 盗賊とかも事細かな詳細が近隣に張り出されており、むしろ情報によって防衛されている国と言っても過言じゃないそうな。


‥‥‥軍事力とか暴力とか、そう言った類を遣わずに、情報だけで押さえる情報大国ネッタ。


 その情報力とでも言うべき力は、何となく前世の知識で言うところの情報戦争も起こせるようだが、一応悪事には使われていない。


 そうそう馬鹿な輩が入り込めないような、情報の壁によって守られているのか…‥‥平和的な解決方法っぽいが、ちょっと恐ろしさを感じる気もする。



 何にしても、一応義兄という事にもなるだろうし、めでたい祝い事のようなので、いかないという選択肢を取らないのであった…‥‥


「ところで、そう言う所って正装必要だよね。そのあたりも、最新の情報とか無いのかな?」

「招待状に付属して、今年流行中の婚姻式用の正装情報紙が付いていましたわ。あと、海上までの陸路、海路に関する天候や利用できる機関のおすすめなど、国ごとに送っているようですわね」


 抜かりなしというか、何と言うか。恐るべきだな情報大国‥‥‥‥










―――――――――――――――――

SIDEゼリアス


「…‥‥恐るべきだな、情報大国ネッタ」

「あれ?兄様、それは?」

「送られてきた招待状だ。ちょっと数年前に、別件で利用したことがあったが…‥‥その事を忘れずに、送ってきたようだ」


 シアンたちが話していた丁度その頃、離れた別大陸の国にある帰らずの森の中にある一軒家にて、悪魔ゼリアスとその妹の魔女ミーナは、届けられた招待状を読んでいた。


「ふむ‥‥‥なるほど。魔王の方も呼んでいるようだし、いくことに関して問題は無いか。というか、この参加予定の人の情報とかもあるが…‥‥」

「どれどれ…‥‥へぇ、中々の大物が多いですわね」


 出席するであろう予定客リストを見て、ゼリアスたちは感心する。


 情報大国だけあって、できるだけ利用することもありつつ、バカな者たちを向けられないのか、どうやら今回の結婚式には各国の大物たちが集まるようだ。


 賢王と呼ばれる者や、その国を牛耳っているとされる大臣、影で支える宰相など、各国での情報を利用しつつフルに活用し、世話になっているような人が多く出席するようである。


「まぁ、流石にこの世界に限っての招待客のようだが‥‥‥っと、一部見知った悪魔の名前もあるな。あっちは契約で人間のふりしてついてきているのだろうが…‥‥まぁ、問題あるまい」


 人間に交じって生活している悪魔も少々いるようだが、ゼリアスの知る限りでは問題児ではないだろう。


 まぁ、そういう情報大国だからこそ、むしろ問題を起こしたくはないだろうし、そうそう馬鹿が出る事もないはずである。


「あとは、あの悪食とかもか‥‥‥‥国のトップばかり集まる結婚式というのも、中々すごいなぁ」


 情報をフルに活用してか、忙しい人たちもいるはずなのに、それらが絶対に出席できるように日時を調整しているようで、情報大国の底力を見せられる。


 こういうのを見ると、本当にあちこちの情報を良く調べ尽くしているようだ。


「‥‥‥まぁ、流石に限界もあるだろうけれどな」


 そうぽつりとつぶやきつつ、直接行ってもいいかと彼は思う。


 先日あたりに、とある神についての情報を求めて向かったこともあったが‥‥‥‥まぁ、そこまで時間も経過していないのに、また向かっても良いだろう。


「それじゃ、支度をするか。ミーナ、久しぶりにそろって出かけるぞ」

「はい!」


 ゼリアスの言葉に、妹であるミーナは嬉しそうに返答する。


 義理というか、契約上の兄妹とはいえ、一緒に出掛けるのは楽しく、嬉しい事なのだ。


 そのため、出席するための支度を直ぐにし始めるのであった‥‥‥‥



「ところで兄様、これあくまでも予定客リストですよね?」

「そのようだが、どうした?」

「中には政治を担いつつ、問題ある愚王を傀儡にしていらっしゃる方々もいるようですが…‥‥操れている方々がいなくなると、その人たち暴走しませんかね?」

「‥‥‥その心配もあったな。そちらの可能性を考えると…‥‥それはあのメイドに相談するか」


‥‥‥不安はあったが、一応相談相手はいるので、ちょっと安堵の息を吐くのであった。


久し振りに出てきた、ミスティアの兄たち。

彼女の家族集合も珍しいが、めでたい祝い事なら出た方が良いだろう。

とは言え、家族一緒だと結構な人数になるのだが…‥‥まぁ、問題ないようにした方が良いかもね。

娘に何かされたら絶望と後悔をプレゼントする気でいつつ、次回に続く!!



‥‥‥さらっと次回予告の部分の言葉に、シアンの想いが混ざった。

魔王というか、彼、親馬鹿の魔王になってきているような気がするのは気のせいか?

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