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#382 油断できないからこそdeath

SIDEシアン


…‥‥背後で倒れ、意識を失うワゼを確認した。


 一応、損傷はひどいようだがそれでも何とかなりそうかなと思いつつ、そっと衣の一部を切り取り、戦闘に巻き込まれないように彼女を保護する。


 そして、他のシスターズもまだ倒れ伏しているのを素早く衣を伸ばして掴み、ワゼ同様にさっさと安全な場所へ運んだ。



「で、元凶がこれか…‥‥」

「-----!!」


 声にならぬ咆哮をあげ、ワゼの魔導砲とかその他武器に似た物を使用し、撃ちまくってきている謎の怪物。


 先ほどまでは辛うじて人に近い原型を持っていたようにも思えていたが、どうも武器を使用するたびに何かの代償を払っているのか、だんだん形が変わって来た。


 なんとか衣で防ぐが、武器を放つたびに相手は肥大化しつつ、脂肪ではなく筋肉をむき出しにしていく。


「‥‥‥なんかバイオなゲームの敵っぽいなぁ」


 化け物じみているし養子になっているし、間違ってもないかもしれない。モドキとかそういう言葉が聞こえていたし、クローンとかの類であれば、分野的には多分合うのだろう。


 ただ、そう言うのはできれば現実で遭いたくなかったが‥‥‥残念ながら、その望みは絶たれ、本気でシャレにならない怪物のようだ。



 シスターズの数もそれなりにいたはずだし、ワゼの武器の凄さなども僕は理解している。


 長い付き合いだからこそ、彼女をぼろぼろにしたことに関して怒りを覚えつつ、そこまでできた相手には畏怖も少しは抱く。


…‥‥あのウルトラトンデモメイドを本気で破壊しているからね。油断したら、それこそこちらも足元をすくわれかねない。



「だからこそ、最初から全力で行かせてもらおう!」


 ぶわっと衣を身にまとい直し、大きな拳を作り上げる。


 まずは全力で殴りかかると、相手も拳でぶつけ合ってきた。



どっごぉぉぉぅう!!っと音が響き合い、ぶつかった個所から衝撃波が発生し、周囲へ広がっていく。


 力と力のぶつかり合いに地面が砕け、洞窟のようなこの場所の壁や天井にもひびが入り、そう長くは持たないところだとすぐに理解する。



「だったらそれを利用してやるまでだ!!」


 何度も何度も殴りつけ、相手も応戦する中で衝撃が周囲を破壊していく。


 全てを防ぎきれず、時たま拳がこちらにもあたり、あばらが折れたりするような音がするが、相手にも確実に当たっており、ぶつかり合う。


 砕け、砂と化し、天井からぱらぱらと破片が落ちてきて、直ぐに限界へ達したようだ。


「------!!」


 ここが崩壊することを理解したのか、相手はすぐに場を移そうとする。


 けれども、そうは問屋が卸さない。


「『アイスバインド』!!」


 魔法を唱えると同時に、相手の両足を氷の塊が覆い、一旦動きを封じる。


 けれども直ぐに動き直し、無理やり砕いていくが、連射して砕く方へ相手の意識を手中させる。


 そしてさらに拳を振りかざし、何度も何度も叩きつけ、この空間の崩壊を進める。


「この辺りで、『スチームバースト』!!」


 火と水の魔法の合わせ技で、強烈な水蒸気爆発を発生させた。


 発生したその水蒸気の爆発の勢いに相手は押され、僕の方も反動で思いっきりふっ飛ばされる。


 普段ならばきちんと飛ばされないように工夫を凝らすが、この場所では飛ばされた方が都合が良い。


 なぜならば、その勢いで加速してここから脱出できるのだ。




 壊れているシスターズも素早く抱えつつ、衣で覆いまくってえっさほいさっとトンズラする。


 ついでになんか一緒に倒れていたデュラハンのララも輸送し、鉱山と思わしき場所から出ると同時に、山が崩れ落ちた。



「-----------!!」


 崩壊する中で、相手の咆哮が聞こえてきたが、やはりこの程度で潰して終わるようなものではなかったようだ。


 そっとワゼたちを安全な場所へ再度輸送し直し、直ぐに崩れた場所へ向かって見れば、ちょうど都合よく、崩落した岩石をふっ飛ばし、化け物が飛び出してきた。


 その肉体はさらに巨大化しており、一体の巨人が出来上がったと言って良いだろう。


 だが、その表面は堕ちた岩石で傷ついておらず、機械のような物が大量に張り付いていた。


「サイボーグモドキってところか‥‥‥」


 ドクンドクンと、表面に出ているパイプには何かの液体が流れているようで、その箇所が大きくなっている。


 栄養でもたっぷり詰め込んでいるのか、先ほどの攻撃のダメージもさほどなく、物凄いタフさを見せ付けている。


「------!!」


 相手が吠えると、瞬間的に体の各所に穴が幾つも発生し、ミサイルのような物が飛び出してきた。


 おそらくは自身で改造を施して付けた武装であり、まずは弾幕を張り、こちらの動きを止めようとするのだろうが、あえて乗ることにした。


「魔法連射!」


 中立の魔王の名は伊達ではなく、大量の魔法を一斉に砲撃し、全て相殺させていく。


 光を落とし、水で切り捨て、火で焼き尽くし、風で跳ね返す。


 火薬以外にも中身に鉄片や岩石などが含まれているようで、消しきれなかった分が飛んできて抉って来るが、この程度ならまだ問題ない。


 っと、大量にぶつけ合う中で、そっと背後から何かが伸びてきた。


 相手の体の一部が地中を通ってこちらへ来て、そこから攻撃を仕掛けるようだが‥‥‥


「甘い!!」

「!?」


 衣を拳へ転じ、それをつかんだことで相手の顔が驚愕の表情になる。


 そしてただ掴むだけではなく、無茶苦茶な力技を振るう。



 ずぼぃっと相手の体の一部が地面から引き抜け、繋がっていた本体の方も一緒につられて地中を無理やり通り、引き抜かれる。


 そしてそのまままずは回転させ始め、ぶん回す。

 ぐぉんぐぉんっと強烈な遠心力がかかり、ミサイルを打っていた相手の体は攻撃を止め、遠心力に耐えようとする。


 だが、こういう攻撃には投げ飛ばす手段もあるが、何も投げ飛ばす以外の方法もあるのだ。


「せぇぇのぉぉで!!」


 横回転からいったん宙へ飛びあがり、立て回転へ切り替える。


 そしてすぐに重力によって下に落ちると同時に、縦に回していたという事は…‥‥


ドッゴォォン!!

「------!!」


 言葉にならない悲鳴と共に、地面にめり込む怪物。


 遠心力で破壊力も増しているが、これで終わりではない。


 再び飛び上がり、また着地して叩きつけ、繰り返す。


 回す中で持ち方もくるくるッと回して変えており、真正面から地面に激突させる以外にも、真横、背中、頭のみなど、180度まんべんなく地面に跡を残していく。


 それでもまだまだ体力もあるようで、怪物は反撃しようと機械のアームのようなものや、何かしらの薬品の液体などをぶちまけるが、そんなものすべて衣で防ぎつつ、逆に返ってしまうように攻撃を工夫して自爆させていく。


 見る見る間にサイボーグ的な容姿から、ただの叩きつけられるだけのぼろ雑巾へと変わっていき、抵抗も少なくなっていった。



…‥‥そしてトドメにいったん手を放し、思いっきり空中へ怪物を投げ捨てる。


 すると、まだ辛うじて余力があったのか、怪物の腕が変形し、巨大な砲へ姿を変える。


 最後に残していたギミックか、あるいは最後の抵抗としての一撃か。


 集約されるエネルギー量を見る限り、おそらくは最大出力であり、避けたとしても周辺の国々へ壊滅的なダメージは免れない。


 でも、まず避けるという手段も考えていなかったし、相手の最大の攻撃であれば、こちらも最大の攻撃で返すべきだ。


 衣を集約させ、前にワゼが使った同じような砲をイメージし、相手とまったく同じような攻撃を用意する。


「発射!!」

「-----!!」


 ほぼ同時に攻撃を放ち、相手のエネルギーとこちらの魔力の塊が激突しあう。


 反動で相手はより宙へ、こちらはより地面へ動いてしまうが、それでも狙いをずらすことはしない。



 互いの砲撃がぶつかり合い、制したのは…‥‥こちらの方だ。


 一瞬だけ均衡したように見えたが、まだ余っていた魔力を回した瞬間に一気に爆散させ、飲み込んでいく。


「---------!?」


 その光景に相手は声にもならない咆哮をあげるも、宙では自由に動ききれず、かわそうにも不可能なレベルで魔力が全てを飲み込んでいく。




 そしてすべてが宙へ華麗に飛び去って行った後には、相手の消し炭一つも残らず、この世から消滅したのを目視で確認したのであった…‥‥





「ふぅ…‥‥げほっ」


 何とか相手を消し飛ばしたとはいえ、こちらも無傷という訳ではない。


 衣を使っていても、やはり骨などがいくらか折れているようで、ちょっと血反吐が出てしまった。


 体の肉も、ちょっと抉れた部分があるし…‥‥ハクロたちに余計な心配を抱かせる気しかしない。


‥‥‥まぁ、うん。今回結構ヤバかったかも。魔力も滅茶苦茶使いまくったし、久しぶりに大暴れしすぎたかもしれん。


 「どう言い訳しようかな…‥‥」


 周囲一帯が大暴れした影響でふっ飛ばされており、山も何もかも消し飛ばし、やらかした感が凄まじい。


 ここ、ボラーン王国じゃなくて騎士王国内だし…‥‥どう説明するべきだろうか。


 相手の詳細を知っていそうなワゼは壊れているし、デュラハンのララらしき人物もなんか今、すっごい重傷だし、説明できそうなシスターズの面々も誰も彼も壊れている。


 頭が痛くなりそうな外交問題になりかねないと思いつつ、この場からいったん逃れる目的もありつつ、なんとか全員運ぶためにもう一苦労する羽目になるのであった‥‥‥‥ああ、ドーラとかクロとか連れてくればよかった。まだ魔力があっても、全員を自力で運んで帰還するのは非常に辛い‥‥‥ごえっふ。

何時も無傷に近いことが多かったが、今回は無事では済まなかった。

ワゼを追い詰めただけあって、骨も折れるわ血も吐くわ肉も一部抉れるわ‥‥‥大怪我ものである。

そして後、この地でやらかしたことに関しても、あとでミスティアの説教とかがありそうなのが怖いところ…‥‥

次回に続く!!



被害状況、周囲一帯壊滅的。…‥‥暴れすぎました。やらかした感じもあるけど、全力でやらないと不味い感じしかないと、当事者たちは証言している模様。

なお、当初は戦闘シーンをもうちょっと簡略する気ではあったが、効果音だけだと全然わかりにくいのでなんかこうなった。剣とかだったらキンキンカンカンとかでもうちょっと楽だったかなぁ…‥‥いや、それはそれで分からんか。

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