#380 不思議とは割と身近に多すぎるのデス
SIDEシアン
「ふぅ、今日も色々とあったなぁ…‥‥明後日まで、滞在するっけ?」
【そのようですよ。有休をとって、往復を考えるとそこが限界らしいですしね】
「姉様は姉様で、一応子供を連れているからね‥‥‥離れすぎると、色々と寂しくもなりますわね」
夜、ぐっすりと眠る娘たちを横目に、僕らはもうちょっとだけ起きてそう話していた。
夫婦の時間というべきか、昼間に色々とやる娘たちの相手をして疲れていても、欠かせない時間というべきか‥‥‥こう、ゆったりとした時が貴重なのだ。
なお、義姉たちは王城の客用の寝室の方にいるので、ココには僕等しかいない。
「まぁ、喜びを共有できるのも良かったし、問題ないか」
【ふふふ、でも姉さんももしかしたら、結婚できる可能性を知るとそれはそれで面白そうですよね】
ハルディアの森で、ワゼの発明品によるハクロの義姉に相性のいい人を探す装置で灯台下暗しと判明したし、交際まで発展するのかどうかは疑問だが、良縁にはなってほしいとは思う。
「あれ?でもそれでもし子供までできたら、今度はハクロが叔母さんと呼ばれるような…‥‥」
【…‥‥うーん、どうなんでしょう、それ】
「そう言われると、複雑な気分になりそうですわよね」
まぁ、僕の方も叔父さんとか呼ばれる可能性もあるし、笑いごとでもないだろう。いやまぁ、まだ若いのにそんなことを言われるのもどうかと。
「何にしても、将来にならないと分からないからね…‥‥」
気にしたら負けなやつであろう。
何にしても、そろそろ眠気もやって来るので、起きて話すのも限界である。
明かりを消し、互いの手を繋げ、温かさを僕たちは確認し合う。
子供たちがいる手前、やる事もないが…‥‥まぁ、今はまだ、これで良いだろう。
「というか、娘たちが夜泣きしないな…‥‥」
【昼間、すっごい遊んで疲れていたようですしねぇ‥‥‥】
「ドーラさんが、張り切り過ぎて撃沈してましたものね」
僕らが森の方に行っている間、ドーラが面倒見ていたようだが、その分非常に負担をかけてしまったのか、帰った時にはしおれていた。
ついでにロールの方も姉として妹たちを一生懸命見ていて疲れたのか、こちらも撃沈していた。
‥‥‥なんかごめん。親なのに任せてゴメン。
二人とも気にしなかったらしいが‥‥‥ドーラの方からは、魔界の魔王の修行よりも確実に疲れるらしい。うちの子たち、魔界の魔王との修行よりもすさまじってどういう事なんだろうか。
色々とツッコミどころがあるような気もしなくはないが、ここ最近は特に騒動があるわけでもない。
できれば平穏が長く続いてほしいのだが…‥‥うん、まぁ、また何処かで騒動がある可能性も考えるとちょっと嫌だなぁと思うのであった‥‥‥‥
「それは、女王でもあるわたくしとしても同じ意見ですわよ‥‥‥」
「騒動は国にとっても面倒な類だからねぇ‥‥‥」
【二人とも、今室内暗いですけれども、なんか遠い目をしているのが良く分かりますよ】
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SIDEワゼ
『ツー!』
『フーフー!』
『シーシーシ!!』
『確認取れたのデース!』
‥‥‥‥シアンたちが眠りについた丁度その頃。
真夜中のハルディアの森、地下室内にて、ワゼは各地からシスターズの報告を受けていた。
フロンによって正確な位置座標を検索させ、各地で確認できたデータを照合し、確認を取ったのだが…‥どうも結果としてはそれぞれ思わしくなかったようだ。
「…‥‥製作者、一体何をやらかしたのでしょうカ?」
ワゼを作った、製作者。
行方不明であり、手掛かりをつかみ損ね、こうして新しく作った装置を用いて探ってみれば複数の反応があるという謎多き人物。
色々と文句の多い相手とは言え、ワゼを生み出すほどの技術などもある事から捕獲なども試みたかったりするのだが‥‥‥どうも、相手がただの人間ではないことだけは確認できた。
『スース!!スー!!』
「ええ、培養液を確認。内部腐敗ですカ」
『セーセー!!』
「こちらは別の義体モドキで、稼働停止状態…‥‥破損が酷く、データなしですカ」
データの分析を進め、どうにか製作者は一人だけらしいという確認はとれたのに、何故か見つかった複数の反応。
その反応の数々を探らせてみたところ、色々と妙な実験場というべきものが見つかったのである。
大量の培養液入り水槽に漂う肉の塊、襲撃にあったのか大破損している研究所、預言者の義体のようなものがありつつ、それらすべてが内部からはじけ飛んだような残骸。
それらすべてから製作者の反応がありつつ、どれもこれも一つとしてまともに機能していないのだ。
「とんだマッドサイエンティストの可能性もありましたが…‥‥狂気じみるにしては、足りないような気がしますネ」
周囲に被害を及ば差ないような閉鎖的な場所ばかりであり、材料らしきものを見つけても、それらは合成されたものが多く、無駄に使用していない。
「何を目的としていたのか、そもそもそれらに反応があるのも‥‥‥っと、今度はアハトですカ」
思考を巡らせようとした中、別の報告が届いた。
それは、騎士王国の方に派遣しているシスターズ、アハト。
騎士道精神を学ばせつつ、得られた剣術などのデータを活かそうと思っていたが、今回は副騎士団長のデュラハンのララと共にある調査を行っていたらしい。
その調査先にも反応があり、ついでに探るように指示したのだが‥‥‥
『‥‥‥エー‥エー、こちらアハト‥‥‥緊急‥‥‥報告‥‥‥』
「‥‥‥何がありましたカ?」
『鉱山内部に、謎の研究所を確認‥‥副騎士団長と共に‥‥調査中、襲撃がエー…‥‥』
ざざざっとノイズが入り、何やら様子がおかしい。
『襲撃者不明…‥‥データ無し。副騎士団長と共に迎撃…‥‥失敗。副騎士団長は重症、こちらは今、ほぼ‥‥‥ガビッ!!』
「アハト?どうしましたか、アハト!!」
通信が途切れ、呼びかけるも応答がない。
どうやら動力源も停止し、完全に機能が停止したらしい。
「全シスターズへ緊急連絡!!アハトより通信途絶、何者かの襲撃が有り!!全機、至急救援及び襲撃者の撃退を要請!!」
素早く指示を出し、全部のシスターズを彼女の元へ向かわせる。
とはいえ、良い連絡はないだろう。
何しろアハトはシスターズの中でも騎士王国へ入らせる分、戦闘面は他のシスターズよりも強めにしており、彼女と共に居たらしい副騎士団長の強さも確認済み。
それなのに、その二人がそろっていながらも迎撃に失敗するとは信じられないのだ。
だが、起きてしまったのであればそれは事実であり、何やらヤバイ案件が発生したことを指すだろう。
「ああもう、本当に何をしでかしたのでしょうか製作者ハ!!」
普段は冷静沈着なワゼだが、流石にこの件に関しては色々と言いたいこともでき、思わずダァンと机を叩き、粉砕してしまう。
メイドゴーレムの彼女だが、今回ばかりはご主人様であるシアンから離れ、自身も急行するために急いで出かける用意をするのであった…‥‥
穏やかな日々はかけがえのないもの。
ゆったりと過ごしつつ、しっかりと心に染みつかせなければいけないだろう。
なぜならば、何時平穏が乱されてもおかしくはないので…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥なーんか、珍しくシリアスの予感。




