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#372 どこにもちゃっかりしているのはあるのデス

SIDEシアン


‥‥‥新しい王子・王女が産まれたことに関して、ボラーン王国内は慶事として祝う人々が多い。


 それだけミスティアが女王として民に慕われているのもあるだろうし、祝い事ゆえに早々諸外国から無茶苦茶な出来事がやってくることはない。


 そもそも、ワゼがシスターズを動員させてそう言う動きなども見張っているだろうし、やってこないように僕自身も動いている。


 と言っても、別に大したことではない。にょろんっと魔力の衣を動かして周囲の警戒をしているぐらいである。



「まぁ、この程度でも来ないやつは来ないだろうけれども‥‥‥ラクス、レイア、大人しいなぁ」

「なんか、本当に普通の赤ちゃんで良かったですわねぇ」

【羨ましいような、そうでないような‥‥‥いえ、シアンとの子供ですから良いのですが、こうも落ち着けるのは楽ですよ】


 ハクロのその言葉に、僕等はうんうんと頷く。


 ヒルド、オルトリンデ、ノルン、エイル‥‥‥‥娘4人、誕生してからしばらくはあたふたとすることが多かったのに、このラクスとレイアの場合は本当に人間の赤子というだけだって、落ち着けることが多い。


 いや、夜泣きとかもあるが‥‥‥それでも対応しているし、シスターズがすぐに動いたりするし、本当に楽と言えば楽なのだ。


「お姉ちゃんとしては、本当にできた弟・妹な感じがするにょ」

【ふみゅ?そうかなー?】

「みー?そうなのー?」

【ぴゃーい?】

「にゅー?」

「…‥‥うん、訂正。全員同じだにょ」


 じっと見られた目に耐えきれなかったのか、即座に言い直したロール。


 考えて見れば、ヒルド、オルトリンデはもうすでに少しなら喋れているし‥‥‥成長の速さに慣れたせいで、普通の赤子の成長の速さを僕らは想定していなかったかもしれない。


「ああ、これが普通なんだよなぁ…‥‥何だろう、すごい感動するような」

「わたくしは元々普通の方でしたが‥‥‥何でしょう、いつの間にか染まっていたことに気が付かされる、この感動と悲しみは…‥‥」


‥‥‥ミスティア、遠い目をしてそんなこと言わないで。ちょっと責任感じているんだから。





 何にしても、我が子たちの誕生に皆喜んでいる。


 ついでに、あと数日ほどで、騎士王国からはハクロの義姉、大陸からミスティアの姉が来るようだし、中々祝いに来るバリュエーションも多い。


「にしても、こういう時にドーラがいないのは、なんでだろうか?」

「うーん、ちょっと痕跡がないのが不思議ですネ」


 子フェンリルたちの面倒も見ており、娘たちの面倒も見るほど子煩悩満載のドーラ。


 そんなドーラがここ数日ほど姿を見かけないことが、気になっている。


 ワゼの調査でも、どうも何処かで足跡が途切れているらしいし…‥本当にどこへ向かったのやら。


「書置きがあったけど」

【シャゲシャゲとしかなくて、分かりませんでしたよね…‥‥】


 普段、あのジェスチャーとかで理解しているせいで、文字の問題に気が付かなかったなぁ…‥‥ただ今フロンたちが翻訳作業をしているが、それでも仕切れるのかが疑問である。


 まぁ、あのドーラの事だし、そう変なことになっていることもあるまい。


 そのうちひょっこりと、祝いのための品を持って出てくる可能性もあるだろうし、そこまで心配することはないだろう。


 そう考えると、不安も大して無いような気がするのであった…‥‥


「でも、シスターズの追跡も調査も逃れるのはどういうことなのでしょうカ?」

「それはすごい不安になるような…‥‥何だろう、その逃走手腕。いや、手無かったけど」





――――――――――――――――――――――――――

SIDEドーラ


【シャゲシャゲシャゲェェェ!!】


…‥‥シアンたちがちょっと不安に思っている丁度その頃。


 その世界とは異なる世界…‥‥知り合いの悪魔ゼリアスの故郷ともいえる、魔界と呼ばれるような場所に、ドーラはいた。


 悪魔、魔人、その他魑魅魍魎渦巻く、本格実力主義なその世界に、ドーラは何故いたのかと言えば…‥‥



【シャゲシャゲシャゲシャゲ!!!】

「よっ、はっ、っと!中々腕を上げているのぅ!!」


 今、ドーラの目の前にいるのは、この世界の王…‥‥シアンとは異なり、この魔界の王という意味での魔王ベル。


 見た目はあどけない少女でありながらも、その実力はすさまじく、ドーラと戦闘していた。


【シャゲシャゲェ!!】

「この程度では足りない、か…‥‥いや、これ以上強さを求めてどうするのじゃ?どう考えても必要以上な気がするのじゃけど」

【シャゲェ!!】

「ううむ、子を守るためには、絶対的な強さは必要。ゆえに、ここで慢心せずにもっと向上したい、か‥‥‥その心意気、中々じゃ」


 ぐっと葉っぱを握りこぶしのように丸め、力説するドーラの言葉に、深く頷き納得する魔王ベル。


「ならば良し!!魔王に挑み、敗れつつもより上を目指すために師事を頼んだその意気をさらに高めよ!!‥‥‥あと、戦っている間は仕事からサボれるしのぅ」

【シャゲシャーゲェ!!】


 ぼそっと魔王の本音がつぶやかれつつ、気にせずにドーラは彼女に師事し、自身を高めていく。


 ドーラがこの地へ来たのは、新しく生まれたシアンの子供たちのため。


 もともと他人のような、その花壇・畑の管理人として雇われた身でもあるのだが、子供たちと増えらう事によって、母性本能というべき様なものを目覚めさせていた。


 かつては、とある魔王の配下でもあり、恐怖に陥れていた巨大植物でもあった身。


 けれども、今の身で知った、子どもの大切さ。


 ゆえに、守り抜くためには力が必要と考え、更にそれが魔王の子供であるならば、更に対応できるように自身を高める必要があると思い、ここへ来たのだ。


 単純に、実力を高めるには自分よりもさらに上の者へ師事してもらう方が早いと考えたがゆえに、この地を選んだのだ!!



‥‥‥なお、魔界へ訪れることができたのは、実は偶然。


 ワゼがちょっと現在行方不明の09から送信され続けているデータから異界への転送方法を見つけ、それをこっそりと盗み見て自らここへ来れたのである。


 魔界を選べたのも、悪魔ゼリアスの方からちょっと私用で聞き出し、己を鍛え上げるためにふさわしいと思えたというのもある。



 何にしても、今はまだまだ修行中。


 実力をどんどん高めつつ、シアンとは異なる魔王ベルの元で師事を受け、更にどんどん強くなっていく。


【シャゲェェェェェ!!】


 この成長を考えると、そこまで長くは滞在できないだろう。


 だからこそ、一戦一戦、一分一秒も全てを無駄なく吸収し、自身を研ぎ澄ませていく。



‥‥‥もしシアンが見れば、いや、彼以外が見ても、ドーラはどこへ向かっているんだとツッコミを入れられそうだがここは魔界であり、知り合いたちはいない。


 ゆえに、ツッコミ不在の状況で、どんどんドーラは自身を高めまくってしまうのであった…‥‥



【シャァァァゲーーーーーーーーーーー!!】

「鍛えている側が言うのも何じゃが、お主鍛え過ぎじゃないかな?まぁ、気になるし、今度3秒間だけの降臨しか許されんかったが‥‥‥こっそり長期滞在してみたいのぅ、その世界」


 魔王が何か不遜な事を考えているようであったが、やらかされてもぶっとばせるようにと内心そう思いながらドーラは鍛えていくのであった…‥‥

我が子たちに囲まれつつ、ちょっと不安を感じる。

でもそう気にしなくても良いような気がするが‥‥‥何だろうなこの予感。

そう言う予感に限って、当たるからなぁ‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥ドーラ、本気でどこへ向かうのか。

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