閑話 てとてとりっとデス
SIDEシアン
…‥‥神ロキの撃退から数日。
ちょっとの間、娘たちは本能的に警戒を出だしていたようだが、直ぐに解けたようである。
それはそれで良いのだが…‥‥
【ぴゃー♪】
「にゅー♪」
【ふみゅ~♪】
「みー♪」
「って、暴れるなというか、勝手にあちこちに向かうなぁぁぁぁ!!」
【思いのほか、目を離すと速攻で逃げ出すテクニックを身につけてますよね!?】
「お姉ちゃんの言う事を聞いて大人しくするにょ――――!!」
‥‥‥警戒して大人しくしていた分、そのタガが外れたのか娘たちが暴走し始めた。
すごい勢いで蜘蛛の巣を作ってその糸の上を爆走し、羽を広げて飛び回り、いつの間にか作っていた移動手段なのかドーラの子株っぽいモノの上に乗って‥‥‥
「というか、いつの間にそんなものを栽培しているんだよエイル!!」
【ヒルドにノルン、二人でブランコ加速しないでくださいーい!!こっちだって加速したくてもできないんですよぉぉぉぉ!!】
なんというか、娘たちが元気なのは良いけど元気すぎるのも困りものである。
おてんばと言えばまだ聞こえはいいかもしれないが、実際に追いかける立場に立たされると本当に苦労させられるのだ。
というか、子ども特有のというべきか、考えつかないような事もやらかしたり‥‥‥
「スース!?」
「セー!?」
「ファ――――――――!!」
シスターズも共になんとかしようと動くのだが、いつの間にか娘たちの手によって仕掛けられたトラップで足止めを喰らってしまう。
恐るべし、我が娘たち。シスターズも相当な集団のはずなのに、それを上回る技量を見せ付けるとか、将来が本気で末恐ろしい。
そう思いつつも、逃亡を図る娘たちを僕らは必死になって追いかけるのであった…‥‥
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SIDEとある空き巣A
「‥‥‥人気は無いな」
城下街のとある一軒家で、その空き巣は品定めをして、獲物として見ていた。
衛兵たちが巡回したりするとは言え、それでも完全にすべてを掌握しているわけでもないし、短い時間とは言え、手際よく仕事をこなせばいい話しである。
「さてさて、さっそく侵入を‥‥‥」
こきこきっと手を動かし、今日も空き巣として仕事をこなそうとしていた‥‥‥その時であった。
「み~みー!!」
「ん?」
ふと、何かの声が聞こえ上を向く空き巣。
空を見れば太陽が出ているのだが、その太陽を背にして何かが落ちて‥‥‥
むぎゅぅ!!
「ぐえっぶ!?」
見事に踏みつけられ、空き巣はそのままぶっ倒れる。
「痛だだだ‥‥‥な、なんだ今のは?」
何とかすぐに立ち上がり、何者かと見ようとしたすぐ後に‥‥‥
「にゅー!!」
「はい?」
後方からまた声が聞こえ、今度は何かと思って思わず身構えるも、それは意味をなさなかった。
なにやら幼女のようなものが、何か大きな植物か何かに乗っており、そのまま轢いてきたのだから。
「ぎゃあああああああああああ!!」
…‥‥その日、一人の空き巣が跳ね飛ばされ、宙を舞った。
そして数時間後、気絶していたところを巡回していた衛兵がひっとらえ、連行されたのは言うまでもない。
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SIDEとある貴族夫人B
「おほほほほ、中々良い買い物をしたわぁ」
「そのようでございますな、奥様」
城下街の商店街の一角にて、とある貴族夫人が執事と共に買い物を楽しんでいた。
執事には大量の荷物を運ばせているが、そんなことは気にする者でもない。
この執事も執事でドMの傾向にあるらしく、貴族夫人の無茶ぶりに嬉々として従い、互に損はない関係ではあった。
「あら?」
馬車へ戻ろうとしている中で、ふとその商品に彼女は気が付く。
その店に並べられていたのは宝石の類であったが、何やら立派そうな、高級感あふれるネックレスを見つけたのである。
「いいわね、これ。店主はいるかしら?」
「はいはい、ここにいるでござんす」
店の奥に声をかけて見れば、その店を営む店主が出てきた。
「このネックレス、良いわね。いくらかしら?」
「おお、お目が高いでやんすなぁ。このネックレスはそれはそれは非常に高価な宝石でちりばめられており‥‥‥」
値段を聞かれつつ、ついでにネックレスの良い事を述べ、より購買意欲を掻き立てさせ、その他の商品も買わせようと店主が口を開き始めた‥‥‥その時であった。
【ふみゅー!!】
「「あ」」
突然、どこからか蜘蛛の体を持つ女の子が飛び出してきて、商品棚を倒した。
すると、そこに展示されていたネックレスやその他の宝石で装飾された貴金属の類は全て床に落ちると共に‥‥‥
バリーン!!
「…‥‥宝石って、ガラスのように砕けたかしら?」
「ほうほう、奥様、これらすべて偽物でございますな」
「な、な、な!?」
まさかのすべての宝石が偽物のガラス玉だったらしく、綺麗に割れてその証拠を露呈させた。
‥‥‥その日、一つの偽物の貴金属を売る店の店主が捕らえられ、次の日からは新しく良心的な、正真正銘の本物の宝石を扱う宝石商が建ったのは言うまでもなかった。
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SIDEとある家主C
「いい加減に出ていっておくれよ!!家賃が払えないなら退去だ!!」
「無理だ!!この通り、あと3カ月は占拠してやる!!」
城下街のとある賃貸住宅にて、家主がそう声を張り上げるもふてぶてしくその住人は退去の意思がないことを声にあげる。
滞納されて3カ月ほど経過するのだが、そろそろ強制的に執行して退去させたいのだが、いかんせん無駄にこの住民は力があるようで、そううまくはいかない様子。
だからこそ、話し合いでどうにかしたいのだが、全然応じる気がなさそうである。
「だったら払えるように働けよ!!冒険者ギルドとかで依頼とか受けてしまえ!!」
「稼げねぇよ!!というか、出て行ったらすぐに差し押さえする気だろ!!」
怒声が飛び交い、言い合いするも状況は動かない。
どうしたものかと、家主が頭を抱えそうになっていた‥‥‥その時である。
【ぴゃーい!!】
「ん?」
何か声が聞こえたので、振り返ってみれば何やら謎の集団がこちらへ向かってきていた。
城下街にあるお知らせ版とかで情報をそれなりに集めていた家主は、それらが何者なのかすぐに理解した。
「ありゃ、王配の方の娘たちではないか?」
それなりに噂になったりしているし、姿も隠しているわけでもないので、それなり知ってはいた。
だが、何故ここへと思っている間にも、そのまま直進し、横を通りすぎ、家に激突して‥‥‥
「ぎょああああああああああ!?」
その勢いで、滞納していた住人がふっ飛ばされ、外に出てきた。
どうやら娘の方はそのまま通り過ぎてしまったようだが、相手が出てきてくれたのであれば都合がいい。
しかもより運のいいことに、勢い良すぎたのか気絶しており、むやみに暴れられる危険性もない。
「ふ、ふふふふはははは!!これはこれは、ようやく解決できる!!ありがとう、王配の娘さん!!」
お礼を述べつつも、気絶しているその隙に衛兵たちを呼び寄せ、強制連行してもらうのであった…‥‥
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SIDEシアン
…‥‥娘たちが各々好き勝手に逃走する中で、何やら色々起きたようである。
人をはね飛ばしたりしていたようではあるが、結果的に良いことが多かったようだ。
何をしでかすのかはわからなかったが、これはまだ良い方なのかもしれないが…‥‥
【ふみゅ~♪】
【ぴゃーい♪】
「み~♪」
「にゅ~♪」
「ぜぇ‥‥‥ぜぇ‥‥‥よ、ようやく全員、捕まえたな」
【つ、疲れました…‥‥】
根性で娘たちを全員捕獲し、ハクロが自身の蜘蛛の背中に巻きつけ、僕等はようやく休憩にはいれた。
娘たち、本当に暴れすぎ…‥‥空を駆け抜けるわ、どうやってか地中を掘り進むわ、大穴で綱渡りをし始めるわで、非常に心臓に悪い事も多かった。
散々動き回ってスッキリし、眠くなったのか娘たちは寝息を立てはじめる。
その隙に、疲労で滅茶苦茶ぐったりしている僕らは、なんとか王城へ帰還し、娘たち用の部屋に運ぶ…‥‥おおぅ、足腰が非常に疲れた。
【こ、今度ワゼさんに、どうにか抑えてもらうための教育を、娘たちに施してもらった方が良さそうですね‥】
「同意するよ。でも、教育意味あるかなぁ‥‥?」
「これ、わたくしの時が物凄く怖いのですが」
お腹をさすりながら、そうミスティアがつぶやいたが‥‥‥こちらはこちらで、産まれた時にどうなるのか未知数だからなぁ。
順調に育ってはいるそうだけど、出産後にどうなるのかが分からないのが不安である。
何にしても、可愛らしい娘たちの寝顔に癒されつつ、体力回復の方に専念するのであった…‥‥
爆進していた娘たち。
全員なんとかとらえて落ち着かせたが、非常に疲れた。
なんでこうも元気なのか…‥‥我が娘たちながら、末恐ろしいものである…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥ミスティアやワゼたちが頑張っても、細かい部分は見落とすことがあるからね。こういう時に犠牲になってくれればいいのだ。




