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#36 相手が不運なのデス

ちょっとだけ面倒ごとの予感

SIDEワゼ


 スヤスヤとシアンが眠っている中、馬車はもうそろそろ都市アルバスに到着しようとしていた。


「そろそろご主人様を起こすべきでしょうかネ」


 一応、依頼内容であったプぺオンの実採取の報告は、魔法屋であるシアンの仕事。


 メイドであるワゼや使い魔となっているハクロが報告するのではなく、本人が報告するのである。



 とは言え、ぐっすり寝ているシアンを起こすべきかどうか、ちょっとワゼが迷っていた時であった。



【‥‥‥あれ?なんか様子が変じゃないですかね?】

【ぬぅ?】


 ふと、馬車の外を見ていたハクロと、牽引していたフェンリル(夫)もといポチがそれぞれ声を上げた。


 何事かと思い、ワゼも見てみれば、なにやら進行方向で煙が上がっていた。



「…‥‥ふむ、馬車が炎上していマス。また盗賊の類‥‥‥ではなさそうデス」


 盗賊とかであれば、襲撃をかけている盗賊たちとか、戦闘音、終了して引き上げていてもある程度の血の臭いが広範囲に漂っていたりするのだ。


 だがしかし、どうもそれらとは異なるようで…‥‥



「ああ、なるほど、そういう類のデスネ」


 何事か理解し、ワゼはそうつぶやくのであった。



―――――――――――――――――――――――――

SIDE炎上馬車


「いよっはぁぁぁぁぁ!!無事かてめぇぇらあぁぁぁ!!」

「「「「うぃーっ!!」」」」



 炎上する馬車から出て、誰一人欠けていないことを彼らは確認する。


「ところで親分!!この首輪はどうするでやんすか!」

「この犯罪奴隷用の首輪だろう!!心配するな、知り合いにちょっと話せば開錠してくれるはずだ!!高くつくだろうけれども、その分を皆で稼げばいいんだ!!」

「なるほどさっすが親分!!」

「何にしても、とっとと逃げるぜぇ!!俺様たちが逃亡したのが衛兵にバレたら、確実に追手が来るだろうからなぁあ!」

「「「「いよっはぁぁぁぁぁあ!!」」」」


 親分と呼ばれる男の言葉に、全員が肯定の声をあげる。


……この彼らが乗っていた馬車は、犯罪奴隷を輸送する馬車。


 それも、それなりに殺人などの犯罪を行った者たちが乗っていたのだ。


―――――――――――――――――――――

『犯罪奴隷』

犯罪者の末路の一つ。

犯罪者である事を首輪が付けられ、身体を制限され、首輪の鍵の所有者に逆らえないようにされる効果を持つ。

ただし、その首輪は本当に犯罪を犯した者にしか効果が内容に作られており、一般人では効果がない。

強制労働などの判決が言い渡され、鉱山での採掘などをさせられるはずだったのだが‥‥‥

――――――――――――――――――――――


…‥‥実はこの馬車の炎上、彼らが引き起こした者ではない。


 この馬車に乗っていた犯罪奴隷たちを統率していた奴が御者に馬車を任せ、自身は酒を昼間から飲んでいたのだ。


 犯罪奴隷体にその様子を見せつけ、悦にふけるという事をしていたのだが‥‥ちょっと目を離した時に、酒がこぼれていた。


 そして偶然にも、馬車が少し揺れた拍子に、装飾品の一部の金具がぶつかって火花を出し、こぼれた酒に引火したのである。


 アルコール度数が高かったのか、あっという間に室内で大炎上。


 乗っていた奴隷たちを統率していた奴は、火を消さずにわが身可愛さで馬車から飛び降りて死にもの狂いで逃亡し、御者も馬を切り離してその背に乗って逃亡。


 残されたのは、炎上する馬車に乗せられた犯罪奴隷たちだけだったのだ。


 このままでは焼死だったかもしれないが…‥‥炎上を利用して、全員で体当たりして脆くなった格子をなどを破壊し、協力して馬車から出たのである。




 そして今、全員まだ首輪付きとは言え、制御する輩もおらず、まさに野放しとなったのである。



「お?親分!!向こう側から何か新しい馬車が来るようでっせ!!」

「よぅし!!逃亡のためにまずはその馬車を襲撃するぜ!!多勢に無勢、お前ら一斉にかかれぇぇぇぇ!!」

「「「「「いよっはぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


 逃走するための足を獲得すべく、後方からやってきた馬車の姿を見た彼らは強奪しようと思い、動き出す。


 武器も何もないが、集団で掛かればいいと思ったのだ。




……だがしかし、彼らは知らなかった。


 特殊な仕掛けで牽引しているのが馬に見えるが、それはフェンリルであるという事を。


 そして、その中にいるのは、彼らが到底かなうような存在たちではないことを。



 

 何もせずに、ただその場を逃亡するだけであれば、まだ何人かは逃げ延びた可能性はあった。



 けれども、その愚かな選択によって、その未来を自らの手で潰してしまったことに彼らは気が付かなかった。


 気が付いたときには…‥‥もう、遅かったのである。


「ご主人様の眠りを妨げないように、静かな戦闘を行いマス」

【一応、私だって糸とか毒で戦えますからね】

【あの、我は?】

「ポチは逃亡する輩をふっ飛ばすのデス」

【ごみ掃除のような物か…‥‥まぁ、相手はまさにそうであるし、愚か者たちに威厳を見せる機会か】


…‥‥ある意味、命が助かった事だけはまだ幸運だったに違いない。


 そう犯罪奴隷たちの親分は後に語ったが、失った物は多かったようである‥‥‥‥




 

……フェンリル、アラクネ、メイドゴーレム。

この面子で生きていたことを考えると、ある意味悪運はあった。

けれども失ったモノも大きいのだ……

次回に続く!!


一応、犯罪者とは言え尊厳を守るために一部省きました。

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