#350 温泉と言っても、液状とは限らないのデス
SIDEシアン
「あべべべべべべべべべっべ、き、効くけど…‥‥」
【ほべっべえべべ、じ、痺れまずぅ…‥‥】
‥‥‥温泉都市滞在、3日目。
ちょっと今日は変わったものに巡って見たいと思い、奇想天外健康エリアとか言う場所にある温泉へ訪れて見たけれども、確かにそうかもしれない。
普通、電気風呂というのは微量の電気を湯に流しているようなものでもあるのだが‥‥‥この温泉都市の電気風呂の一つ、電気温泉3式とやらに入浴したら、まさかの湯無し。
いや違う。電気そのものが流れつつも、何故か液体と固体の中間‥‥‥もっと単純に言えばドロドロとした感じの電気が湯のようにたまっており、そこに浸かる事になったのだ。
入ってみると、電気の他にも振動が流れており、まともに会話することができない。
‥‥‥でも、きちんとマッサージ効果もあるようで、案外心地いい。
「じ、じがじじゃべりにぐいな」
「ご、混浴ですけれども、ながながおぼじろいごとになでまずわねぇ」
【ひみ~ふみふみ!】
「み”み”み”-」
娘たちも一緒に入っているが、痺れ具合が面白いのか泳ぎつつ痺れている。
なお、流石に心臓が悪い人なども考慮して電圧を落とした湯とかもあるのだが、ドMとかそういうことに対応できる人用の高圧の湯もあるそうで、実はそっちの方が人が多いらしい。
何故なんだろうか。強力だからより疲れが取れると思ったのか、それとも単純にその手の人向けなのが原因なのか‥‥‥その理由は分からない。
ついでに、昨日のうちにあっさりとミスティアの父にして元国王が正妃・側室たちと共に来て、軽く挨拶をかわす程度にしつつ、その話しの中でそっちの方に浸かったとか言う話もあったが‥‥‥国王、もしかしてその手の人疑惑アリ?いや、元からあるか‥‥‥鞭で縛られての話とか、聞いたからな。
何にしても、中々痺れる湯の後は…‥‥
「砂風呂か‥‥‥‥でもなんか、砂っぽくない様な」
「さらさらしてますわね」
【おお、なんか沈み込みますよこれ。あがってもついてません!】
じっくりと芯から楽しめるという砂風呂の方に来たが、こちらも何か変わっていた。
敷地一杯に分厚い砂がそうとなって重なっており、そこに体を差し込むと普通にすっと入る。
砂の感触は感じるのに、何故か崩れる事もなく、水の中に入り込むかのように進めるのだ。
しかも泳げるし、耳や口にも入らず、水以上の自由度はある。
面白いというか、何と言うか‥‥‥‥変わり種の湯がまだまだありそうだ。
「ああ、でも足腰疲れるから丁度良かったかもなぁ‥」
「ゆったりできますわねぇ‥‥‥腰とかにも優しいですわ」
【二人でやっても、負担変わりませんでしたからねぇ‥‥‥】
【ふみゅ?何をやって疲れたの?】
【え、ええっと、そうですね、色々と大人は大人の事情があるんですよ】
ヒルドの問いかけに対して、ハクロは慌ててそう答えるのであった…‥‥まぁ、子どもには聞かせにくいというか、何と言うか。
ハクロ、説明なんとかごまかしてね…‥‥
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SIDEワゼ
「…‥‥ふぅ、本日も丁寧に除去完了デス」
丁度その頃、今回はシアンたちと別行動しているワゼもまた、自分の好きな湯の方に浸かり、そうつぶやいていた。
毎回毎回、何かと起きていた温泉都市。
だがしかし、今回はその何かを未然に防ぐことができており、今まで以上に成果を成し遂げることができているのである。
「しかし、なかなか面倒デス。どこかでもう分かっているはずなのに、なぜこうも来るのでしょうカ?」
話が信じられないのか、それとも信じられるのは自分だけか、それとも途轍もない馬鹿なのか‥‥‥色々わざわざやって来る者たちの報告を聞くたびに、呆れの言葉しかでない。
「いっその事、そういうのを防ぐための教育の場…‥‥いえ、教師でも送れれば減らせますが、ちょうど良いのは難しいデス」
そうつぶやきつつも、将来を考えるとその手段も悪くはないと思い、自分の持てる技術でどうにかできないかと模索し始める。
「‥‥‥にしても、0.000000000000001ミリも変わりまセン。先に、製作者の方を捕まえてしまう方が早いでしょうカ」
ペタペタと自分の胸を触って測定し、ぼそっとそうつぶやくが、隠しきれないその思いは、周囲の温度をわずかに冷やす。
周辺の客や従業員たちが、思わずびくっと震えてしまうが‥‥‥‥自分自身でその部位を改造できるとしても、やはりそれは何か負けたような気がして、手が出しにくい重要な大問題でもあるのだった…‥‥
どうにもならない問題は、どこにでもある。
だからこそ、その問題を解決する方法を人は求めるだろう。
まぁ、今は考えたくないが‥‥‥次回に続く!!
…‥‥効果の有無について、ダンジョンコア責められそう。




