#346 明るく向かってデス
SIDEシアン
【お~んせん♪お~んせん♪】
「楽しみーみー♪」
「温泉を楽しみにしているね。ヒルド、オルトリンデ」
【ふみゅっ!】
「みー!」
僕の言葉に対して、娘二人は頷きまくる。
現在、僕等は一家総出で温泉都市へ向けて、移動していた。
娘二人は初めてではあるものの、温泉についての話をハクロたちから詳しく聞き、どの様なものなのか知って興味を持っているらしい。
「流石に前のようなことはあってほしくないにょ。そこ大丈夫なにょ?」
「ええ、大丈夫デス。シスターズもしっかり全員先に向かい、害を優先して排除していますからネ」
ロールが以前にはあった苦々しい思い出でに嫌な顔をしつつも、ワゼが対策済みであると答える。
まぁ、確かに前にハクロ攫われた時があったからなぁ…‥‥それ以外にも、あの都市だと今まで何かしらあったし、できれば今回はゆっくりと浸かりたいところである。
「すぅ‥‥‥んー温泉、楽しみですわぁ‥‥‥くぴぃ」
「ミスティア、温泉都市に着いたら起こしてやるからな」
っと、馬車内に設置されたベッドの上で、寝ぼけてミスティアがそうつぶやく。
女王という立場でもある彼女も温泉へ向かいたく、今回は全力を挙げて1週間以上暇になれるほどの仕事をこなし終え、今燃え尽きているのだ。
真っ白になっているというか、灰になって寝ているというか…‥‥温泉都市に着くまで、戻っていて欲しいとは思う。
「ところでワゼ、この馬車ってポチ馬車以上の速度を出せるけど、ゆっくり進めているよね?」
「ええ、早期につくことも可能ですが、今は馬車に揺られてゆったりとした時間を過ごす方が良いかと思い、速度を落としてますが、早めたほうが良かったでしょうカ?」
「いや、別に良いかな。ミスティアも寝ているし、ちょうどいい時間に着くようにしてくれ」
「了解デス」
かたかたと、ワゼの手が加えられ、最高速度が最近音速の壁を越えることが出来たとされる馬車はゆっくりと進む。
温泉都市には早く着きたいが、その着くまでのこの待つ道のりも良いからね。何事も焦らずにゆっくりと‥‥‥
【シャゲェェェェェ!!】
【ガウガーウ!!】
「「「ぎゃああああああああああ!!」」」
「‥‥‥なんか悲鳴が聞こえてきたけど、この辺りの治安って良くなかったっけ?」
「どうも別のところで問題が起きているようデス。後でしっかり始末しておきマス」
馬車の外を見れば、今回は温泉都市に共についてきたドーラと、野生へ戻る前に僕らの元で過ごし中の子フェンリルのクロが、襲ってこようとしていた盗賊たちをお手玉のように扱っていた。
未遂のようだが‥‥‥うん、まぁ、相手が悪かっただろう。
というかクロ、お前そろそろ野生に戻れるよね?なんか既にうちの番犬というか、ペットになっているような気がしなくもないのだが‥‥‥考えない方が良いか。
少々哀れな犠牲がでつつも、僕等は温泉都市へ向けて心躍らせるのであった。
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SIDE温泉都市:特設会場
…‥‥シアンたちが温泉都市へ向けて進んでいる一方、都市の奥の方にはある会場が設けられていた。
「急げ!確実に馬鹿共を駆逐していけ!!」
「絶対に寄れないようにしつつ、安全な状態にしておくのだ!!」
「シシー!!」
「ファァァァ!!」
「セェェェ!!」
男女、シスターズ、その他諸々入り乱れて、その場はあわただしく動く。
それもそうだろう、今回は何と、3つの組織というか、仲間同士が合同で行う作戦を準備しているのだから。
その美しさから崇拝し、絶対に安全を守ろうとするHWG。
ご主人様の安全を確保しつつ、楽しんでもらうために動くシスターズ。
そして、温泉都市そのものでもあるダンジョンコアと、その愉快な仲間たち。
毎回、この温泉都市にシアンたちが来た際に、彼等にはゆっくりと過ごしてほしいが、何かとトラブルが起きていることが多かった。
ゆえに、彼らは全員で協力しあい、今回はそれぞれがしっかりと責任をもって動くことにしたのだ。
すべてはその美しき者を、その夫でもあるご主人様を、コアの恩人である者たちを、もてなすために、何事もなく過ごしてもらうために。
…‥‥今、温泉都市はかつてない以上にやる気と気合いに満ち溢れていたのであった。
かつてない以上の安全体制、厳戒態勢が敷かれている温泉都市。
今度こそは何事もなく、平穏に過ごしたいところではあるが、果たしてどうなるのだろうか?
何しろ、客としてくるのは魔王にその妻に、女王に、娘‥‥‥‥普通に書くだけなら、まだまともな構成なんだよなぁ。
次回に続く!!
‥‥‥なお、それなら最初に訪れた時からやっておけという話になりそうだが、当時はまだ態勢が整いきっていなかったという事情もあったりする。
だからこそ、今回こそは絶対に…‥‥




