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#333 到着するまでもうちょっとデス

SIDEシアン


‥‥‥船旅も終え、陸地に僕らはたどり着いた。


 というか、思った以上に航路で海上に出るモンスターの襲撃が多かったが‥‥‥どうもきちんとモンスター避けとやらを作動させたにもかかわらず、効果がいま一つしかなかったらしい。


「改善点が多いですネ…‥‥陸上とは違う条件ゆえに、万全に発揮できなかったのでしょウ」

「海の上だと、海中とかあるからなぁ‥‥‥」


 クラーケンにギガホエール、大カモメモドキなどがあったが、それ以外にも面白いのが多かった。


 イルカみたいなモンスター『シュプリン』、膨らんで海上をぷかぷかと漂うフグみたいな『バウンドフィッシュ』、クラーケンに似てはいるが臆病ですぐにその場から足をいくつも切り落として逃走する『トカゲパス』‥‥‥尻尾じゃなくて足だけど、タコ焼きにできるゆえに海上では出くわして食料にしたいモンスターなのだとか。




 色々ありつつも、ようやく陸地につき、揺れる海上から落ち着いて立てるこの大地に、安心感を覚えてしまう。


 ここからさらに馬車で先へ進み、その先にあるディングルア王国の首都へ目指すのだ。


「って、この港町自体は王国の所持している領地じゃないんだね」

「正確に言えば、王国に隣接する国々との共同港のようデス」


 海の航路は様々なモノがあるが、こういう中心となりそうな場所は共有している国が多いらしい。


 他国でしか入らない様な品々もあり、かつては各国ごとに港を所持し、独占していたこともあったそうだ。


 ただ、その独占によって困るような事件‥‥‥大嵐によって航路が使えない、モンスターの襲撃、海賊たちの略奪などもあったそうで、現在は何かがあっても補い合うようにという目的で、港町は共有状態になっているらしい。



【ふみゅ~♪にぎやかにぎやか♪】

「みみみー!面白そうなのはっけーん!」


【って、二人とも勝手に動いちゃだめですよー!!】

「それ店の商品で、勝手に触っちゃ駄目にょ―――!!」

「一応ある程度の予算はあるけど、買いきれないのはダメだからね!?」


‥‥‥どうしよう、道中大丈夫なのかが不安になり過ぎる。



「ワゼ、盗賊とかはないよね?」

「あー‥‥‥可能性はありますネ。一応、出くわさないようにシスターズを先行させて殲滅をしておきましょウ。もぎ取ってしまえば大丈夫でしょウ」

「何をもぎ取るの?」


 いや、聞かない方が良いか。というか、やめ…‥‥無くても良いか。家族を襲撃するような輩には、それで良いか。




―――――――――――――――――

SIDEディングルア王国:王城内


「ん~スイーツにしては見た目がちょっと独創的だけど、甘さとはまた違うこの味が、美味しいなぁ」

「砂糖を多めに入れたのに、甘くなかったのかしら~?」

「いやいや、これで十分ちょうど良いよ!」


 ぐっと指を立て、そう答えるモルドに対して、アルティアはほっと安堵の息を吐く。


 今回は趣向を変えて、いつものような料理とかフルコースなどというものではなく、ちょっとしたお菓子作りに変更してみたのだ。


 作ったのは小さなショートケーキであったはずだが…‥‥できたのが謎の物体Xspケーキ。


 でも、どうやら王太子の口にあったらしく、安心感を覚える。


「にしても、美味しいから別に良いけどレシピ通りに作ってなんでこうなるんだろうか?」

「それは分からないわね~。途中まではそのままのはずなのに、何故かか気が付いたらそうなっているんですもの」


 このケーキのレシピも、王城のシェフたちから万全の状態でしっかりとこれさえすればできると書かれたとおりにやったはずなのだが、気が付けばこうなっていた。


 何をどうしたらこうなるのか分からない不思議さに、二人は首をかしげる。


「なんというか、錬金術に近いものを感じるかな。でもまた別物なのかもなぁ」





‥‥‥王太子のその言葉は、的に近いものがある。


 確かに、錬金術は道具作成以外にも、物質を別の物質に変化させるというものもあり、王太子妃の物体X作成も似たような物があるのだろう。


 けれども、城内在中の王城お抱え錬金術師一同はその言葉に対して、全員首を横に振る。


 あれが錬金術なはずがない、と。


 国外の他の錬金術師にもその話が伝わり、少々サンプルが届けられて調べられても、錬金術とはやはり別物だと結論づけられる。


 しかし、ならばなぜこのような変化を起こすのかについては‥‥‥‥誰もその謎を解き明かせないのであった。



 そして、謎は謎のままで良いのだが‥‥‥彼らは気が付かない。


 その似て非なるものに対して、可能性を考えた者が、王太子妃の作った料理を少しづつ回収し、集めていたことを。


 それを利用した実験が、王族にも秘密で王城の秘密の部屋で行われていたことを。


 それが、更にヤヴァイことにつながる事も…‥‥。



「あ、しまった。木製のフォークが溶けちゃったか。というか、金属のように溶けるんだね」

「あらあら、代わりの食器を用意してもらいましょう」


 そんなことも知らずに、彼もう間もなく王太子妃の故郷の方から、彼女の妹とその夫が来るのを楽しみに待ちつつ、時間を過ごす。


 一見ほのぼのとしている光景ではあったが、「木製の食器がそんな溶け方をするわけがない!!」とその場にいる侍女やその他臣下たちがツッコミを盛大に入れたくてうずうずしているのであった…‥‥


毒殺の事などを考えると、毒に反応する銀食器が扱われることが多い。

でも、木製をこの時点で使っているという事は…‥‥いや、考えない方が良いのかもしれない。

王太子の謎の耐性に驚きを覚えつつも、次回に続く!!


‥‥‥そんなものを食って舌とか胃の心配をするけど、歯とかその部分を先に考えるべきであったか?

この王太子、先ず人間なのかとツッコミを入れたいが‥‥‥これも愛のなせる業なのだろうか。愛って怖いなぁ!!

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