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#325 理にはかなっているのかもしれないのデス

SIDEシアン


「‥‥‥もう間もなくの開催か」


 オークション会場、出席者用の椅子に着席しながら、僕はそうつぶやいた。


 今、この場には他にもオークションに参加する人たちがいるようだが、個人情報をある程度守るためでもあり、違法な物も扱うのでバレると色々とヤヴァイという点から、各自で用意した仮面をつけており、ちょっとした仮面舞踏会にも見えるだろう。


 一応、扱われる商品にはモンスターなどもあり、迂闊に関わると狙われる可能性もあるので、離れた場所の宿屋にハクロたちを置いて、この場所には僕一人で来ていた。


 いや、正確にはシスターズがあちこちに潜んでおり、有事の際にすぐに動けるようにしている。


「ご主人様、奥様方の方の守りを完全にしていますので、ここではリラックスしていきましょウ」

「ああ、そうだね。…‥‥ところで、ワゼ、その仮面息苦しくない?」

「大丈夫デス。そもそもメイドゴーレムですので、息する必要性もないですし、認識障害を起こす特殊加工の最新版を盛り込んだ特別なモノなのデス」


 ワゼも共に居るのだが‥‥‥彼女の方も仮面をつけて、いや、これ仮面なのか?


 某ずばばっとする光った剣を使う、宇宙の悪人の黒い人のような、そんなやつなんだけど。


…‥‥気にしないほうがいいか。デザインにツッコミを入れすぎると、疲れるからね。



「にしても、オークションというからには大金が動くと思ったけど‥‥‥ここのは特殊なんだな。この『タラクティスコイン』でやるしかないのか」

「ええ、そのようデス。公平性のために、用意されたもののようデス」


 手に持った、このオークション用の緑と赤の縞模様で作られた、銅貨のようなモノ。


 これが、このオークションで扱えるお金のようなものらしい。





 通常のオークションの場合、大金をかけて、つり上げて、競い合って落札する。


 けれども、そのようなやり方では資金力で圧倒されやすく、大金を持っている人ほど有利になりやすい。


 違法なものを扱うこのオークションでも、それなりにそう言う不公平さに対して不満を抱く人がいたようで、そこから考えだされたのが、このオークション用通貨「タラクティスコイン」。


 ようはカジノなどでかけるようなコインに似た類だが、所持できる量は一人300枚と決まっているのである。


 それだと今度は人数が多いほど有利になるのではないかと言いたいが、この会場に参加できるのは2人一組のペアだけであり、二人で計600枚のコインで掛け合うそうな。


 同組織所属とかでごまかそうとも無理で、そのあたりは徹底しているそうである。


「何にしても、どれに賭けるかで、結構変わるな」


 ポチの子供、子フェンリルまで温存すればいい話しだが、ちょっと面倒なことにその順番はシスターズの調査によれば一番最後に出てくるらしい。


 その最後に賭けて温存する例もあるせいで、ルールとしてちょっとは何処かで使用しないといけないそうだ。


「出来そうな類とかを見ると‥‥‥まぁ、何処かで適当に落札に加わればいいか」

「気になる品もありますので、そのあたりで決めましょウ」


 そしていよいよ、オークション開始の合図が鳴り響き、商品が出され始める。


 できれば、最後の子フェンリルの分までできる限り温存したいが…‥‥そのほかの商品も見てみるか。





――――――――――――――――――――

SIDEハクロ


【ふ~みゅ~♪ふ~みゅみゅ~♪】

「みーみー♪みみみみ♪み~♪」

【ふふふ、ちょっとうまくなってきた感じですね】

【ふみゅ!】

「みー!」


 シアンがいない間、ちょっと暇なので歌うヒルドとオルトリンデをハクロが褒めると、二人とも嬉しいのかぎゅっと抱き着いてくる。


 一応、オークションの間危険な雰囲気も少しはあるので、ここで大人しくするように言っており、今回ばかりは真面目に聞くのか、ここでゆっくりと過ごせている。


「でも気になりますわね‥‥‥無事に神獣の子を落札できるのかしら?」

【んー、ワゼさんが付いてますし、大丈夫だとは思いますよ。そもそも、シアンもそこまで大金をかけるようなことをしないですからね】

「まぁ、それもそうですわね」


 ちょっと不安そうなミスティアの言葉に、ハクロはそう答える。


 こういうオークションの場で正々堂々と落札する気のようだが、シアンが他の品々に対して金を多くかける姿がちょっと想像しにくいのだ。


【そもそも、王城暮らしになってもお金を使うことが余り無いですしね。シアン、自分で稼いだお金を貯蓄しつつ、私たちへのプレゼントに使っていますからね】

「王配ようのお小遣い予算とかもあるのですが‥‥‥あれ、ほとんど手を付けていないですものね。元々魔法屋として稼げているので、いらないのかもしれないですが‥‥‥ちょっとそのあたりは、使ってもらわないと困る事もありますしね」

【え?あるんですか?】

「ええ。ある程度決める分は、それなりに消費してもらわないといけません。シアンの人柄上、予算がなくても普通に自腹でできますが、国の体裁として、夫の王配に何もしていない様なことを噂されてしまうと、色々と面倒な事も多いのですわ」

【あー‥‥‥よく聞く、人間の面倒な体裁ですか】

「そういうものですわね」


‥‥‥ハクロの場合、元々アラクネなので、人間のそういう都合にはちょっと理解しがたい事もある。


 けれども、家族として過ごして、そういう部分を学ぶと、人の生活の面倒な点を理解してしまうのだ。


「だからこそ、ある程度の予算の消費などもしてほしいのですよね」

【んー、シアンに予算を使わせるには‥‥‥何がいいですかね?】

「お父様の例を見ますと…‥‥」


 国を治める立場とは言え、国王などにもそれなりに予算が割かれる。


 前国王であるミスティアの父も、それなりに決められた予算を消費しており、その内訳をシスターズを介して見てみれば‥‥‥



「‥‥‥装飾品ですわね。シアンと同じというべきかしら」

【ちがうのは、この人自身が稼いだ金でもない点‥‥‥でも、参考にならなさすぎですよね】

「お父様、ああ見えてヘタレなところが多かったですのも…‥‥あ」


 っと、前国王の批判を少ししている中で、ふとミスティアはある部分を見つけてしまった。


【どうしましたか?】

「‥‥‥意外にも、お父様ここでリードをしていたのかしら?でも、お母様方に色々されていた点を考えると、もしかして…‥‥」

【?】


 ミスティアが顔を赤くしてそうつぶやいたのを聞き、ハクロは首を傾げその内訳をのぞき込む。


【…‥‥え?】


 そしてその内容を見て、少しかかったが理解して、ハクロも赤くなった。


【‥‥‥ま、まぁ、その手も確かにありますよね。というか、そうでないと王子王女を多く出来ませんでしたものね】

「これ、お母様方が利用してリードしていた可能性もなきにしもあらずですが‥‥‥でも、ある意味世継ぎとか、そういう面では必要な使い方をしているのかしら‥‥‥」


【ふみゅぅ?】

「みー?」

【あ、二人ともこれは見てはいけません!!割と大人な事情のやつですよ!!】

「え、ええ!!そうなので、見てはいけないのですわ!!」


 興味を持ったらしい娘たちに対して、まだ早いと慌てて遠ざけて見せないようにする二人。


 何にしても、これはこれで使えない事もないのだが…‥‥こういう消費の仕方はものすごく疑問に思えてしまう。


「‥‥‥でも、使わせる手段としてはいけますが…‥‥ちょっと一人だときついですわね。という訳でハクロさんも巻き添えにしましょう」

【さらっと巻き添えに!?】


…‥‥逃れるすべもなく、ハクロはミスティアに無理やりその件に関して協力させられる羽目になってしまうのであった。






前半後半、どっちの意味でのサブタイトルだったのやら。

使用されていたそれは何なのか、それは読者の方々の想像でお任せいたします。

何にしても、神獣を無事に落札できるのか‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥なお、巻き添えにしようがしまいが、どっちにしてもまた行う事でもあり、各個撃破されるか、同時撃破されるか、何にしても二人とも逃れようのない運命でもあった。

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