#323 世話が焼けつつもデス
SIDEシアン
【ふみゅ~ふみゅ~♪】
「みーみー!」
「二人とも、馬車の走行中に出ようとしないにょー!」
ヒルドとオルトリンデが、走行中の馬車から飛び出て遊ぼうとするのを、ロールが必死に食い止めている。
「ダメだよ、今は移動中だし、勝手に出たら危ないよ」
【そうですよ。暇なら室内でもできるゲームでもして、遊びましょうよ】
「ほら、こっちにありますわ」
【ふみゅ?ふみゅー】
「みー♪」
僕らも止めるために、様々な遊具を取り出し、気を惹くと、ようやく大人しくなった。
「‥‥‥ふぅ、移動速度は早いから、そう時間はかからないけれども、その分外に興味を持っちゃうのか」
「窓があるゆえに、景色を移り変わりの速さに、興味を持たれたようデス」
ワゼのその言葉に、僕等はうんうんと同意して頷く。
現在、僕等はある場所を目指して移動するために、馬車に乗っていた。
いや、正確に言えば馬車ではなく、ポチが牽引していた馬車でもない。
ぼしゅうううううううう!!
「‥‥‥なんかすっごい煙の音っぽいのが聞こえるけど、大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫デス。出力は30%の状態を保っていますが、航行には支障ありまセン」
‥‥‥今回、家族で出かけているのは、ちょっとした旅行と、捕らえられた子フェンリルを助けるためである。
ポチの子供でもあり、隣人のような付き合い上、そう深くかかわる事もないのだが、それでもドーラが相手をしていたり、娘たちが遊んでいた相手もであるので、助けようと思ったのだ。
というか、ポチ以上の強さであったはずが、何をどうして捕獲され、そこでオークションとやらに欠けられたのかと思えば‥‥‥どうもそういう類の専門家がいるらしく、狙われてしまったようだ。
きちんとワゼたちに頼んでその専門家は社会的に仕事できないようにしてもらったが、流石にオークションが行われる場所から無理にかっさらう事もできない。
ならばどうするかと考えた結果、直接出向き、正当に買うことにしたのだ。
予算に関しては問題なく、魔法屋として蓄えた金などもあるし、シスターズがいつの間にか蓄えていた者もある。
その上、神獣の子供という事もあり、場合によっては国レベルの問題になりかねないので、国家権力的な意味合いでミスティアも来たのだ。
‥‥‥いやまぁ、そのオークション自体が裏取引のような物で、違法性の高い所なのだが‥‥‥裏には裏の事情もあって、むやみに潰せないという理由もある。
清濁併せ呑むしかないんだよなぁ…‥‥まぁ、そこは気にしすぎてもいけない。裏社会の方で動きがあれば、ツェーンとかが動くらしいしね。
しかしながら、今さらというか、その情報源が他のシスターズらしいが‥‥‥新しい類のようで、何時生産したのかが気になる処。
今度、ワゼに改めて紹介してもらうべきか‥‥‥‥
ぼっしゅうううううううう!!
「やっぱり、なんか空気抜けるような音がするな」
「構造上、仕方がありまセン。消音装置の開発が、まだ出来上がってないので…‥‥」
…‥ポチ馬車ではなく、今回使っているのは新たに開発された新動力源を利用した馬車。
いや、外観はちょっとバスっぽいが、ガソリンとかディーゼルエンジンではない。
かと言って、蒸気エンジンという訳でもなく…‥‥
「‥‥‥ホムンクルス技術を応用した、生体エンジンってどうなんだろうか」
「と言っても、人の心臓の動きを利用した類ですけどネ」
水を巡らせてポンプモドキのような装置で送り、その流れを利用して発電し、動力として動くエンジン。
人間の心臓をモデルにした装置らしく、何をどうしてそうなったのか分からないところがあるが‥‥‥わかりやすい名称を言うのであれば、「水心臓エンジン」というらしい。
うん、ホムンクルス技術って人造人間をつくるようなイメージがあるのに、何をどうしてこうなった。
なお、あのぼしゅうっとする音は、その脈動する心臓部の収縮運動時にでる圧力で空気が押し出される音らしいが‥‥‥なんか、こう、聞いていていいものでもない。
色々と改良して欲しい点を考えつつも、このエンジン搭載バス型馬車…‥‥正式名称は「水動式馬車10号機」とやらに乗って、僕等は目的地へ向かうのであった。
「ところで、何で10号機だ?」
「試作、改良を繰り返した結果デス。尋問用に赤い水で代用したタイプもありマス」
「…‥‥それで事故を起こしたら、確実に光景が悲惨になりそうなんだけど」
ポチ馬車に変わる、新たなエンジン搭載の馬車。いや、馬車か?
何にしても、子フェンリルを助けるために動きつつ、娘たちが好奇心で飛び出さないように注意を払わなければいけない。
旅行ついでのように想えるが、これでも一応、真面目なのであった。
次回に続く!!
‥‥‥なお、ホムンクルス技術はその他にも使えるらしいが、一部どうしても使えなかった者(誤字ではない)があるらしい。悲しいというか、なぜそうなのか、それはおそらくその者の製作者が原因であろう。
何がとは言わないが、どうも失敗したというか…‥‥




