#317 わかっているからこそ、傍観したい気持ちがあるのデス
SIDEシアン
‥‥‥アブリルサーモン法王国の晩餐会。
ただの晩餐会という訳でもなく、情報戦が交わされる場でもあり、ある企みが行われる場。
その企みを知りつつも、決定的なところが出るまでは、普通に過ごすことをシアンとミスティアは決めていた。
一応、フィーアは光学迷彩技術だとか、そういうもので身を潜ませ、万が一に備えて正装の上に魔力の衣を非常に薄く張っておく。
「‥‥‥思った以上に人が多いね」
「他国からの客人の方が、割合が多いそうですからね」
入場してみると、思った以上に人の数が多く見える。
この国内からの参加者と、僕等のように他国から招かれた者たちがおり、それなりに人込みであふれているようにも思える。
そして案の定というか…‥‥
「ふぉふぉふぉ。おお、貴殿も招かれていたか」
「ああ、そちらこそな。なかなかの盛況だな」
「それだけこの国が栄え‥‥‥」
「あはははは、つまらなくもなく、面白い者たちが多いねぇ」
「そうですねぇ、こちらとしてはついでに貿易に関しての話も」
「いいねぇ、でもこっち有利にしたいねぇ」
‥‥‥ちらほらと聞こえてくる、他国の者同士の話し合い。
普通に友人のように話す者たちもいれば、情報戦、貿易協定、腹の探り合いと、繰り広げられている。
それに、向けられる目の中には、当然僕らの方へ向けてくるものもあった。
「おお、これはこれは、ボラーン王国のミスティア女王陛下。貴女様も招かれていましたカ」
「ええ、そうですわ。そちらも同じようですわね」
っと、そんな中で、ミスティアの方に老獪そうな爺さんが話しかけてきた。
彼女いわく、この爺さんは別の小国の宰相で、それなりに手腕を振るう人らしい。
「ほぅ、そちらの方は?」
「ああ、紹介いたしますわ。私の王配である、シアンですわ」
「‥‥‥初めまして、彼女の夫でもあるシアンです」
「ほうほうほう、ミスティア女王陛下の王配属ですか」
その言葉が聞こえたのか、会場内でこちらを見る目のいくつかが、さらに僕の方へ手中する。
「そう言えば、女王陛下は元々魔王の元へ嫁がれたと聞きますが‥‥‥この方が魔王で良いのでしょうか?」
「まぁ、そうですわね。とは言え、彼は中立の魔王であり、戦時などには早々関わる気はありませんわ」
その質問にミスティアがさっと答え、その後も数個ほど僕に関するような質問がある。
それも無理はないだろう。魔王がいるというのは、それだけ関心が集められることらしいのだ。
まぁ、自分でも中立の立場なので特にいう事もないし、探り合いだとしたら、彼女の方が適任である。
口に自信がないという訳でもないが…‥‥それでも、大人しくしていたほうがいいと僕は判断した。
何にしても、適当に時間が過ぎていくと、どうやら今回の晩餐会のメインが出て来たらしい。
『それでは、もう間もなく、今回の主役たちが入場いたします。会場内のお客様方は、少々中央から離れていただけるように、お願いいたします』
マイクのような道具で会場内にそう通達され、出席者たちはその指示に従い、会場の中央から離れる。
ある程度空白が出来たところで‥‥‥ガコンっと、音が鳴り、中央部に穴が開いた。
そしてそこから、何かがせり上がってくる。
『‥‥‥では、皆様、今宵の開催理由である主役たちを、拍手で出迎えましょう!』
そう通達され、拍手をしていく中で、そのせり上がって来た者が姿を現した。
身長はやや高めの男女のペア…‥‥今回の表向きの晩餐会を開催した、この国の王子とその婚約者らしい。
身分は第1王子であり、次期王太子でもあり、未来の国王と王妃たちでもあるのだ。
彼らがせり上がってきた物体から降りると、再びそれは戻り、また別の者をもってくる。
今回の主役に連なる王族・貴族たちらしく、全員にこにこと笑っている。
「‥‥‥ミスティア、アレが今回の開催理由の人達で良いよね?」
「そのはずですわね。正確には、先日王太子がきちんと決まり、その決定事項を各国へ周知してもらうために、改めて紹介することになっているらしいですわ」
この晩餐会の場は、新しい王太子の紹介の場。
決まったとはいえ、他国から見てどう思うのかの評価を密かに集め、きちんとこれで良いのかを判断するために、晩餐会が開かれたようなもの。
‥‥‥けれども、ワゼの調査で僕らは知っている。
この晩餐会の裏で、別の企みが行われようとしていることを。
あそこでにこやかに笑う者たち以外の者であり、愚かとしか言いようのない者が起こすであろうバカげたことを。
まぁ、それはもう間もなくだと思うが…‥‥直前までの報告だと、裏切る人が多いらしいし、無事にそれってできるのかな?茶番劇っぽいし、できれば傍観していたいなぁ‥‥‥
さぁ、茶番劇の開幕である。
でも、事前情報だとそれがまともに動くのかが不安である。
いや、まともに動かないほうがいいともいえるが‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥PCの調子がおかしいな。なんか動作が鈍い。




