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#316 調査済みだからこそ、対応も考えるのデス

SIDEシアン


‥‥‥フィーア経由でワゼからの調査報告を聞きつつ、馬車はアブリルサーモン法王国へ到着した。


 まだ晩餐会まで時間があり、客用の部屋が用意され、そこに案内される。


 ここで準備し、待機するわけだが…‥‥


「だからと言って、報告された内容を聞いてしまったら、なんか参加するのが嫌になるな‥‥‥」

「厄介ものがあるのも、困りものですわね」


 晩餐会用の正装に着替えつつ、僕とミスティアはそうつぶやき合う。


 いや本当に、うちのメイドたちの諜報能力の凄さはすごいのだが、この国の上層部…‥‥正確には、その一部の企みまで知ってしまうのはいかがなものか。


 まぁ、どうも僕らには知らせずとも効くような類ではないようだが‥‥‥なんでそんな事をやらかしてしまうのだろうか?


「招待客って、他の国の重鎮とか王族とかいるよね?」

「ええ、そうですわね。国王夫妻、大臣、宰相、王子・王女など、政治的に各国で関わりやすい人たちですわね」

「そう考えると、その企み(・・・・)が成功すれば、そいつらにとってはいい結果になるかもしれないが‥‥‥失敗した場合、思いっきり戦争になりかねないことに、気が付いていないのかな?」

「んー…‥‥まぁ、そういうものですわよ。政治に関わる立場上、そのリスクは良く見るもの。いかに愚かな大臣とか宰相とかそう言う類がいたとしても、それでも不利益になりかねないことに関しては、流石に手を出すような真似は致しませんわ」

「それなのにやるってことは」

「政治的能力すらないと、露見させるようなものですわね」


 さくっとあっさりまとめたが、間違っていないだろう。


 というか、この企みって思いっきり喧嘩を売るような類なのだが…‥‥まあ、その時はその時でいいか。


 乗せられたふりをして、しっかりと見極めておいたほうが良さそうだ。


 そう思いつつも、晩餐会の時間となるのであった…‥‥あ、子どもたちの方への危害予定もしっかり知ったからね。そっちはそっちで、きちんと償ってもらいますか。ワゼには今回、相手に容赦しなくていいように指示しているからね…‥‥


「‥‥‥シアン、なんかすごい悪い顔ですわよ」

「え、本当?」


――――――――――――――――――――――――――

SIDEボラーン王国:王城内



「…‥‥警備の目はどうだ?」

「今のところは、気が付かれずに潜入できているかと」


…‥‥ボラーン王国、王城内。


 現在、その城内のとある一角にて、集まっている者たちがいた。


 人には見られぬように細心の注意を払い、闇夜に紛れて行動できるように黒づくめの衣装で統一し、素早く動いていく。


「では、散開しろ。城内は広いが、各自が手分けをすればターゲットたちは見つかるはずだ」

「ああ、そうだな」


 その言葉が出されると、彼らはさっと蜘蛛の子を散らすようにその場を離れる。


 彼らは、とある任務を受け、この国へ潜入し、ここまでたどり着いた者たち。


 そして今、ようやくその最終段階へと入り、後はここで成しとげれば、帰国するだけという楽な仕事のはずであった。









【ふみゅ~♪ふみゅ~♪】


 てとてとっと、鼻歌を歌いながら歩く、小さなアルケニーの少女。


 成長しているが、未だに幼く、その愛らしさに城内に努めている者たちはほっこりと癒され、飴を上げるなど、孫感覚で相手をしていたりもした。



「‥‥‥アレが、ターゲットの一人か‥‥‥モンスターとは言え‥‥‥」


 そしてその陰から、狙う者もいたが…‥‥


「‥‥‥どうしよう、可愛すぎる」


…‥‥目的のためにここまで来たはずであったが、人選ミス。どうやらその可愛さに、当てられてしまったようであった。


「いやいやいや、可愛いからって任務を放棄す理由にはなるまい」


 慌てて首を振って、気合いを入れるようにそうつぶやく。


 ここで攫う事が出来なければ任務失敗であり、場合によってはここは魔王がいるとされる場所であり、狙っているあの娘は魔王の娘であり、最悪の状況を想像できてしまう。


 ならばこそ、今しかないと思い、一歩踏み出したところで…‥‥



かぱっ

「‥‥‥はい?」


 足の感覚が無いなと思い、下を見れば、そこには大きな穴が開いていた。


 そしてそのまま、その人物は綺麗に吸い込まれるように落ちていき、姿を消すのであった…‥‥




「みーみーみー!」


 ばさばさと翼をはばたかせる少女は今、姉と共に遊んでいた。


「ちょっと待つにょーーー!!それ、危ない奴だにょ!!触っちゃだめなやつにょーーーー!!」

「みー♪」

「いやだから、遊ぶ目的で使うのはダメなにょーーーーー!!」


「‥‥‥なんだありゃ?」


 ターゲットを二人見つけ、物陰から見る人物はそうつぶやく。


 情報通り、羽の生えた娘と、その姉らしい人物がいるのは分かるのだが、何やらただの鬼ごっこなどに比べると、姉の必死さが伝わってくる。


 あの羽の生えた少女が持っている瓶に、何かその理由があるのかと首を傾げた‥‥‥その時であった。


「ああもう!!いう事聞かないとまたこれでぺんぺんしちゃうにょ!!」

「みっ!?」


 なにやら巨大なハリセンのような物を手に取った途端、羽の少女がびくっと動きを止める。


 そしてつるっと手を滑らせたのか、その瓶が離れていき、慣性の法則でその勢いのまま放物線を描きつつ落下して…‥‥



「え?」

ガッシャァァァァン!!

「うおっ!?なんだこのドロドロした液た…‥‥うごえええええええええええええええええええ!?」


「うわっ!?なんか誰か犠牲になったようだにょ!?」

「みー!?」


…‥‥この人物にも、実はトラップが用意されていた。


 だがしかし、それが発動する前に、犠牲となったようであった…‥‥






【んー‥‥シアンがいないと、やっぱり不安ですよね‥‥‥】


‥‥‥アラクネの女性が、そうつぶやく中、その近くの物陰で人物が潜んでいた。


「‥‥‥ふむ、もしかすると一番約得な感じがするな」


 警戒する様子もないし、何か物事を考えて油断している様子。


 ならばこそ、一番楽に仕事ができるだろうとその人物が思う中、何かドアをノックする音が聞こえ、様子見をまだ決めておくことにした。



「奥様、御茶ノ時間デス」

【ゼロツー?あれ、ワゼさんは?】

「今、チョット厄介事ノ対処ヲシテオリ、手ガ離セナイヨウデス」

【なるほど。なんか珍しいですね】


 入って来たのは、メイドのようで、そこまで警戒することもなかったかと、物陰に潜む人物が油断した‥‥‥その時であった。



コケッ

「ア」

【あ】


 何もないのに、何故かそのメイドがこけ、素早くそのアラクネは彼女の体を支える。


 持っていたものまでは流石に手が回らなかったようで、それらはすべて放物線を描き‥‥‥



カチッ


【‥‥‥あの、なんか今、妙なスイッチを押した音が聞こえましたが】

「‥‥‥ア、大丈夫デス。アノスイッチハ確カ、緊急時用脱出スイッチ‥‥‥」


ドドドドドドドドドド!!


「‥‥‥アノヨウニ、ベッドガ大空ヘ向カイマス」

【なんでそんな物が仕掛けられているんですか?】


 何やら疑問の声が聞こえた気もしなくはないが、その潜んでいた人物にとっては最悪であった。


 ベッドの中に潜み、ばっと飛び出す予定があった。


 だが今、聞こえた言葉からして…‥‥


「これ、着陸考えられてないだろぉぉぉぉぉ!!」


 ジェット噴射が収まり、落下するベッドの中でそう叫ぶ。


 だが、そう叫んでも助ける者はだれ一人としていないのであった‥‥‥‥




「…‥‥計算通り、全員見事に捕まったようでござる」

「ゼロツーのドジも計算できるとは‥‥‥中々性能が向上しましたネ」

‥‥‥何かを仕掛ける前に、自滅されたような気がしなくもない。

シアンたちの方でも色々とありそうだが、この様子だと警戒しすぎる事もないだろう。

ただ、今回の件で一番大変なのは、液体を被った人の回収方法であろう‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥就活大変。でもその合間にやってしまうのはどうすればいいのだろうか。

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