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閑話 保護者は近くにいるのデス


【ふみゅ~♪ふみゅっ、ふみゅっ♪】

「みー♪みみみみ♪」

「元気よく歌っているにょね‥‥‥」


 てとてとと、機嫌良さそうに首都内を歩く3人の幼い少女たち。


 その様子はどことなくほっこりと穏やかな気持ちにさせ、見る人たちを癒していた。


「二人とも、わかっているにょ?今日はお使いだから、大人しくするにょ」

【ふみゅ!】

「みー!」


 長女らしい少女にそう言われて、びしっと敬礼して決めるも、どことなく不安を感じさせた。



 彼女達は、ロール、ヒルド、オルトリンデ。シアンの娘にして、それぞれ養女兼長女、次女、三女の三姉妹。


 本日は、両親であるシアンたちとはちょっと離れ、首都内でお使いに出ていた。


‥‥‥なお、ロールはまだ雪の女王リザであった時の記憶もあり、容姿以上に精神的には熟しているものの、ヒルドとオルトリンデに関しては、今年生まれたばかりの赤子。


 けれども、魔王の娘という事もあってか、成長がやや早いようで、赤子からちょっと上になった。


 まぁ、それでも好奇心旺盛な娘たちであり、ちょっと目を離せばどこへ向かうのか分からないが‥‥‥今回ばかりは、いっその事お使いとかに出してみて、成長させてみようという企画が出て、それに沿う形となったのである。


【ふみゅ~♪ふみゅ~♪】

「そうそう、ちゃんと糸をこうやってお姉ちゃんに巻き付けて、離れないようにするにょ。こうすれば、迷子にはならないにょ」

「みーみー♪」

「うんうん、その翼をそっと曲げて、触れさせて確認させるのは良いにょ。これはこれで、迷子防止になるにょ」


 あらかじめ決めていた、この迷子にならない防止策。


 それを守っていることに、ロールは満足していたが…‥‥前を向いて歩き直した際に、二人がちょっと悪めの笑みを浮かべていたことには気が付かなかった。










【ふみゅふみゅふみゅふみゅ~♪】

「みみみみ、みー!!」


 とててってててって!っと、軽快に駆け抜けるヒルドとオルトリンデ。


 ロールの隙が出来た時に、素早く彼女達は身代わりを置いて逃げた。


 糸の方には、特性の人形を。羽の方には、それっぽい別の鳥を。


 あらかじめ隠し持っていたそれらを利用して、逃げたのである。



【ふみゅ~~~~♪】

「みー!」


 ちょっと成長したところで、やはり幼い二人。


 何度も見た首都内でも、やはりいつも人が行き交うので珍しいものがいつもあり、どこもかしこも探索し、探求心を満たしたくなるのだ。



【ふみゅふみゅ~♪!】

「み!」


 糸を出して立体起動に入り、翼をはばたかせて空中へ舞う。


 幼いながらもアグレッシブなその動きは、某ケンタウロスの彼女が見れば「白チビの再来」というであろう。







【ふみゅ~♪ふみゅ~♪】

「み~み~♪」


 互に好きなように動き、欲求の赴くままに突き進み、ご機嫌に探索を楽しんでいる‥‥‥その時であった。


がしっ

【ふみゅっ!?】

「みっ!?」


【‥‥‥シャゲェ】


 何かに捕まれ、振り向いた彼女達が見たのは…‥‥見覚えのある長い蔓。


 そしてその先にいたのは、森に普段いるはずのドーラであった。


【ふみゅみゅつ!?ふみゅっつ!?】

「みみっつ、みー!?」


 何故、普段はここにいないはずのドーラがいるのか、理解できずに驚愕する二人。


【シャゲシャゲ、シャゲ】


 そんな彼女達に、身振り手振りでわかりやすくドーラは説明しつつ、ぴんっと葉っぱを手のようにして、指さした先には…‥‥


「ファ!」

「ツー!」

「シー!」


【「ふみーーーーーーーーっ!?」】


 思いっきり、シスターズが潜んでおり、出て来たのであった。




 そう、実は彼女達が暴走して勝手にであることが当初から予想されており、密かにシスターズが付いていたのである。


 しかも今回は、この首都の地下の方にドーラも何やら用事があったらしく、ちょっと時間が空いたので参加していたのである。


 まさかの逃亡失敗に、ヒルドたちは驚愕していたが、もう一つ大事なことを忘れていた。



ピキピキピキッツ‥‥‥

【み、ふみゅ~…‥‥】

「み、みー…‥‥」


 突然、比喩でもなく、寒気を感じ、彼女達は背後を見た。


 周囲の気温が一気に下がり、吐く息が白く変化し、一部道路が凍結する中で…‥‥彼女が立っていた。


「大人しく、お姉ちゃんに従っていると思えば…‥‥やっぱり、逃げ出す算段を企んでいたにょね?」


 笑いながら、それでいて笑っていない目を向けるのは、先ほど置いて逃げることが出来たはずのロール。


 どさっと彼女の手元から落とされたのは、氷漬けになった身代わり人形と鳥。


「一応、シスターズの皆がすぐに知らせてくれたから、大事が起きる前にかけつけれたけど‥‥‥二人とも、勝手に出歩く危険も理解していないにょ?」

【ふ、ふみゅ、ふみゅ‥‥‥】

「み、み、み‥‥‥」


 ガタガタと震え、姉妹仲良くギュッと抱き合い、怯える二人。


「一度痛い目を見てもらうのもいいかもしれないけど、それは流石に悲しいし、できないにょ。でも、そんな周囲の想いを理解せずに、突っ張る二人には…‥‥」


 そう言いながら、ロールは氷を生み出し、形を変化させていく。



ぶぉん!!ばっしぃぃぃぃん!!

「これでお尻ぺんぺんするにょ!!」


 できたのは、巨大な氷で出来たハリセンであり、固体で硬いはずの氷なのに、何故か紙のようなしなやかさを併せ持ちつつ、地面に叩きつけるとそれはそれは痛そうな音が鳴り響く。


「さぁ!覚悟するにょぉぉぉぉぉ!!」

【ふみゅうううううううううううう!!】

「みーーーーーーーーーーーーーー!!」


 迫りくるハリセンの脅威に、全速力で逃亡を試みるヒルドとオルトリンデ。


 だがしかし、人生経験及び自身の力の使い方に関しては圧倒的にロールが上であり、必死の逃走むなしく、数分で彼女達は捕えられた。



すっぱぁぁぁぁぁぁん!!

【ふみゅうぅぅぅう!!】

びっしぃぃぃぃぃぃん!!

「みーーーーーーーー!!」


‥‥‥近年、躾で暴力を振るうのは、児童虐待だというところもあるだろう。


 だがしかし、ここはそういう事も関係ないし、悪い事はしっかりと悪い事でらうと覚え込ませなければならない。


 それに、全てが安全という訳でもないし、彼女達は魔王の娘でもあり、利用しようと考える悪い輩もそれなりにはいるだろう。


 その後、お使いを終え、帰宅した際には、真っ先に彼女達は母親であるハクロの元へ向かい、全力で泣いて反省し、泣き疲れて眠るのであった‥‥‥‥



【‥‥なんでしょう、なんかトラウマを思い出しましたよ】

「え?そうなのか?」

【前に一度、本気でヤバイ毒花の蜜を食べたことがあって、姉さんに死ぬほど怒られまくった記憶が‥‥‥うううっ、頭が】


…‥‥この親子、そろって問題を起こすのか。いや、僕が言える立場でもないのかもしれない。


 何にしても、ロールも一応手加減しつつ、氷で冷やしているし、反省したなら良いのかもなぁ。


「ところで、おとうしゃん、他の皆がいるのは分かっていたけど、ドーラは結局、ここに何しに来たにょ?」

「何でも、冬季限定だった地下の友の会とやらが、思ったよりも人気が出て、この首都の大穴の方にも手を広げたらしい。で、ついでにバンドとかを結成する仲間とかできたようで、その祝いのために来たらしいな」

「ドーラの友人関係、ワゼの手の広げよう並みに謎が多いにょ‥‥‥」

「まぁ、あっちはあっちで不思議植物だからな…‥‥」


【二人とも、遠い目をしていないで、寝付かれたヒルドとオルトリンデをベッドへ移しましょうよ】

「ああ、それもそうか」

「お姉ちゃんとしても、本当はハリセンを振りたくはなかったにょ‥‥‥でも、これでしっかりと次はおとなしくしてほしいにょ」


…‥‥何にしても、これでちょっとはおとなしくなって欲しいなぁと、その場にいた全員が、思うのであった。

 

 何しろ、彼女達の行動力はとんでもないのだから。


 その大変さを理解しているからこそ、自制を早めに覚えて欲しいのである‥‥‥‥

‥‥‥なお、ハリセンでの尻たたきだが、ヒルドの場合はアルケニーなので、蜘蛛部分の方である。

何にしても、これで大人しくなってくれると思いたい。

何しろ、その行動力はものすごくあふれるのだから‥‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥戦闘真面目が多かったせいで、閑話を入れてしまった。ちょっとアホっぽいけど、もうちょっとギャグテイストを入れるべきだったかも。

まぁ、ちょっとずつ成長していると見せたかったのもあるけどね。悪だくみが成長したらだめだけど・・・・・

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