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#306 上を行くには、経験がものをいうのデス

SIDE 05(フンフ)10(ツェーン)11(エィルフ)


ガァァァン!!

ギィィィィン!!


 強烈な金属音が辺りに響き渡り、火花が飛び散る。


 周囲には衝撃波が飛び交い、放電、火炎、まきびしが降り注ぐ。




 ついに見つけた、今回のターゲット、悪魔グズゥエルゼ。


 見事に地表へ引きずり出したのは良いのだが、そこから先は激戦となった。


 何しろ、相手は逃げることに長けていながらも、それなりに強力な大悪魔。


 逃げるだけではなく、きちんと攻撃もできており、中々一手が決まらない。


 かと言って、シスターズとて負けているわけではない。



「ファファファファ!!100連鞭ファ!!」

「うおおおおっとっと!?ちょっと待てその鞭、なんか色々とおかしいのだが!?」

「---背後、取ったデース!」

「ひよっふぇい!?危ないな!!」

「大丈夫イ、ちょっと脳漿はじけ飛ぶだけイ」

「げっ!?一番穏やかそうで、一番グロそうな手段かよ!?」


 全力稼働で戦闘しつつ、今回のこの状況を想定して様々な策を練っている。


 遠距離からの魔力転送技術を完全に確立し、王城の方からシアンの膨大な魔力を流され、魔力で出来た銃弾などの攻撃手段の威力などを増加。


 また、敵の動きなどを素早く察知し、次にどのような手で来るのかを把握するために‥‥‥


『右斜め45度、逃走経路はBプラン』

「わかったファ!」

「ぐっ、先読みされているのか!」


 そもそも悪魔の動きを想定するために作られたフロンの処理回路と直結し、相手の動きがどう出るのか先読みし、逃走までの経路を叩き潰す。


 無数に出る経路に対して先回りで対処できる手段を素早く計算し、いかにして動き回れるのが鍵なのだが‥‥‥


『むぅ、すぐに出ては消え、また出る‥‥‥すごい量でござるな』


 フロンの演算能力をもってしても、悪魔グズゥエルゼの逃走手段の発想力は、想定以上。


 10の逃走手段を100の計略で潰しても、次は1000、いや、1000000以上と逃げる手段をより多く出していく。


 あの悪魔ゼリアスの言っていた、グズゥエルゼの闘争力の高さに関するものは、まさに人知を超えた、人外すらも凌駕するほどのものであろう。


 というよりも、こちらの逃走防止手段さえも利用しようとして、またどこからかワゼたちの通信体系の部分の情報を得ているのか、策を講じている間に、ハッキングらしい行為もされていた。



『ちょっと不味いでござるな‥‥‥これ以上の計算速度向上はきついでござるよ』


 いくら計算能力に長けていても、当然限界はある。


 そんなフロンの言葉に、相手の逃走能力の高さに一同は感嘆すらも覚える。




 何にしても、ここから逃がすわけにもいかないのだが、そろそろ手詰まりになってしまう。


「どうするファ?ここで合体するファ?」

「いや、それはダメデース。3対1の状況でこれで、合体して3体以上の力を得ても、一人になっているので逃走手段を増加させるデース」

「イー‥‥‥」


『…‥‥ならば、作戦を変更しましょウ。魔力転送回路を連結し、次の手段に移るのデス!』

「「「了解!」」」



 通信越しに聞こえてきたワゼの指示に、フロンたちは従う。


 さっと互に集まり、あらかじめ打ち合わせをしておいた陣形で悪魔に対峙する。


「ん?」


 その動きに、何を仕掛けてくるのかわからず、身構えるグズゥエルゼ。


 この膠着した状況の中で、持久戦に持ち込めれば勝機はあったが…‥‥そうは問屋が卸さない。



「「「連想回路直結!作動!!」」」


 ヴォン!!っと猛烈な音を立てると同時に、シスターズの体が光りはじめる。


「目くらまし‥?いや、ちがう!!」


 その行動が何なのか、直ぐに理解したグズゥエルゼ。


 素早く魔法を展開し、攻撃に備えて防御を取ったが…‥‥



『そんなもの、意味ないね!!』

ドォォン!!

「がっ!?」



 輝ける彼女達の前から影が現れ、それが拳を振るい、防御を砕いて拳を振るい、直撃する。



「き、貴様は…‥‥まさか!?」

『おっと、僕だけじゃないよ。今回の件に関して、万が一に備えて残してもらった‥‥‥』

『こちらもいるんだよな』

「いっ!?」


 背後からの声に対して、素早くかわそうとするグズゥエルゼ。


 だがしかし、その動きもむなしく…‥‥


ゴウッツ!!

「ぎゃあああああああああ!?」


 強力な炎によって、灰すらも残さず、足が消滅させられる。




「な、何故貴様らが…‥‥ここに」

『ああ、正確にいうと僕らは本物じゃないよ』

『そうそう。お前の分身の真似事、いや、それとは異なる魔力の塊で出来た‥‥‥偽物さ』


 かろうじて何とか向き直り、改めて彼らを見るグズゥエルゼ。


 そう、それはこの場にはいないはずで、来ようにも距離があってそうすぐには来れないはずの者たち。


『魔力の衣で操作方法も良く分かっていたけど‥‥‥案外、これはこれで面白いな』

『分身とも違うが、結構やりやすいな』


 そこにいたのは、彼の敵でもあるこの世界の魔王と、悪魔。



『まぁ、本人ではないが、本人が動かしているから問題ないね!』

『魔力で固めた分身の俺達‥‥‥本物でもないが、本物と変わりない動きをご覧あれ』


 シアンとゼリアスをかたどった、魔力の塊。


 けれども、偽物というのではなく、本物が思った通りに動かしている、魔力で出来た人形。


 魔力の転送ができる技術を生かしてこその、遠隔操作と攻撃を兼ね備えた、とっておきの手段であった‥‥‥‥

 



転送できるのが魔力であったからこそ、出来た荒業。

魔力で出来た衣を操っていたからこその、とっておきの手段。

本人たちではないとはいえ、それでも本人たちが動かしているのには変わりない‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥さぁ、追い詰めるのであれば、徹底的に追い詰めて、逃げられなくいたしましょウ。

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