#298 世の中、使えるモノは使うべきなのデス
SIDE 05&10&11
…‥‥小国のアンデッドたちは、その中心地である首都に近づくにつれ、数が増えていた。
鮮度も徐々に良くなっており、最初の方にいた腐敗臭が物凄いアンデッドたちに比べて‥‥‥
「ファ‥‥‥死後、3日ほど?」
「そのようデース。しかも、色々変えているとはいえ」
「パターン的には、いくつかの組み合わせでやっている感じがするイ」
フンフたちは全て撃退しまくっていたのだが、討伐していくうちに、その相手のアンデッドの組み合わせ‥‥‥正確に言えば、その構造に共通点を見出していく。
「フロンからの情報だと、全部作られた者…‥‥人造物らしいファ」
「わざわざ死体を増やすとは、趣味悪いデース」
裏ギルドに所属するゆえに、その手の事もあるツェーンでさえも、死体増殖がさせられているらしいこの状況には嫌悪感を持つ。
地道に進んでいくが、その度にどんどん進撃してくるアンデット達には、うんざりしてきているのもあるのだ。
「イー・・・・ターゲットの悪魔の所在地まで、地道に進むけど‥‥‥この分だと、イー‥‥‥まだかかるね」
はぁっと溜息を吐くエィルフ。
彼女の場合、他国のシスターとして普段働いている分、死体がうごめく状況は職業的に受け入れがたい。
というか、徹底的に浄化しまくりたいとも思えるのであった。
「何にしても、このまま進んでも殲滅しまくってキリないデース。ご主人様からの魔力の転送もあるとは言え、それでも辟易してきマース」
何にしても、目的に悪魔捕縛・抹殺・消滅などをやるためにも、まだ進むしかない。
けれども、この先にもまだアンデッドが出てくると流石に気が重くなってくる。
「出来ればアンデッドでも、グールやゾンビ以外‥‥‥スケルトンキングやマッドウォーカー、リッチなどが出て欲しいところデース」
同じようなアンデッド系統が多すぎるのも、飽きが来ている原因でもあった。
そうこうするうちに、ようやく小国の中心地付近‥‥‥旧奴隷市場があった跡地へ、彼女達はたどり着いた。
「‥‥‥調査記録では、ここで発生したらしいデース」
「とはいえ、周囲は埋め尽くさんばかりのアンデッド‥‥‥製造されたバージョンではなく、割とまともな方な、元奴隷な方々が多いファ」
数多くのアンデッドたちは、分析する限り、首都の方から製造されてきたらしい者たちが多い。
だが、小国グラントの時に起きたとされる、アンデッド発生現場であるこの奴隷市場跡地は、現地生産というべきか、まだまともに奴隷から死体にされた者たちが多かった。
「腐り具合は‥‥‥うん、時間経過しているだけあって、すごいことになってイ‥‥‥ん?」
っと、襲撃してくるアンデッドたちを反撃して蹂躙している中で、ふとエィルフが何かに気が付いた。
「ファ?どうしたのファ?」
「…‥‥あっちの方、おかしい感じがする、イー‥‥‥」
襲ってくるゾンビやグールに対して、拳でふっ飛ばしながら、彼女はその方向を見る。
そこにあるのは、市場に連ねていたテントの跡地。
その中でも、まだボロボロ具合がさほどではない、綺麗な状態の場所に、彼女は目を向けていた。
アンデッドたちをふっ飛ばしながら、その場所にエィルフは近付き、確認してみる。
ぺろっとテントをめくり‥…その感覚の正体が分かった。
「イ?これは‥‥‥ネックレス?」
元は、奴隷とかにつけるための装飾品の店だったのだろう。
そこに並べられていたのは、まだ手入れすれば使えるような物ばかり。
だが、その中の一つ‥‥‥綺麗な宝石をはめ込んだ、腕輪に彼女は興味を持った。
「‥‥‥こちらエィルフ。ちょっと妙な品を見つけたイー」
『ほぅ?』
遠距離通信を取って、王城の方にいるワゼたちへ向け、彼女は報告を始める。
タダの腕輪ならばいいのだが‥‥‥シスターズに入る彼女もまた、同様に高感度なセンサーなどが搭載され、こういうのに限ってただものではないことを理解させられていた。
元奴隷市場のこの地に売られていたとはいえ、そういうところにこそイレギュラーなものが混じることが多く、掘り出し物も多く‥‥‥どうやら、その掘り出し物を見つけてしまったらしい。
『‥‥こちらフロン。演算結果が出たでござるが‥‥‥どうやら、そのテントが他よりも綺麗な事にも関係しているようでござるよ』
‥‥‥何気なく見つけた、宝石のついた腕輪。
どうやら、この状況に対しての都合のいい、対抗手段となり得る可能性を秘めていたようであった…‥‥
都合がいいように思えるが、罠ではなかろうか?
警戒しつつも、利用できそうなら利用すべし。
‥‥‥まぁ、どの程度できるのかはわからないが‥次回に続く!!
‥‥‥似たような敵にあたってばかりだと、飽きが来るのは分かるな。




