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#288 まだ序の口だったかもしれないのデス

SIDEワゼ


「‥‥‥反応パターン確認。電流部位のR12からF7まで切り替えヲ」

「ファ!」

「血液検査結果の詳細まとめ、および切除個所の調査結果ヲ」

「ス!」


‥‥‥ボラーン王国の首都から離れ、ハルディアの森の湖の底。


 厳重に作られた特別検査室にて、ワゼたちは作業をしていた。


「麻酔再投与。弛緩剤及び物体X型無抵抗薬も同時に併用」

「シー!」


 バタバタとせわしなくシスターズたちも動き、的確に行っていく。


 ただ今、とある検体の検査を行っているのだが‥‥調べる前に、簡易的な検査である可能性が出たので、より慎重にしていた。


「ツツツ!!」

「爆砕部分の復元が出来ましたカ。では、固定液の方へ」

「ツ!」


 ある可能性を調べるために、重要な部位もあったのだが‥‥‥何者かの手によって、それは爆砕され、木っ端微塵になっていた。


 何とか復元し、ある程度できてきたとはいえ、それでもまだ難しいところだ。


「ふぅ‥‥‥作業率87%ですカ。中々思ったようにいきませんネ」


 汗をぬぐうようなしぐさをしつつ、ワゼはその検体を見てそうつぶやいた。


 全身真っ黒、口は大きく裂けており、化け物じみた大男。


 首都内に突如現れ、暴れまくり、シアンの手によって無力化されたが…‥‥万が一も考え、危険な部位は切除しつつ、どんな筋肉だるまであろうとも溶けることがない拘束も施している。



「どこのどなたがやった醜悪な行為の結果なのかまだ分かりませんが…‥‥非常に大変ですネ」


 何にしても、すぐに結果をシアンへ届けるために、ワゼたちは細かい分析を続けるのであった。



ガッシャァァァン!!

「アーーーーーー!!メスガァァァァァァ!!」

「ひぇいイ!?」


‥‥‥ゼロツーがこけて盛大に飛び散った器具を、辛うじてよけつつ…‥‥




―――――――――――――――――――――――――

SIDEハクロ



「すぅ‥‥‥すぅ‥」

【ふみゅ~?ふみゅ~ふみゅ】

【いけませんよヒルド。シアンは今、昨夜の騒動を収めるので疲れて寝ていますからね】

【ふみゅぅ?ふみゅ】


 ハクロの言葉に対して、分かったのかそっと離れるヒルド。

 

 その先には、ぐっすりと寝ているシアンの姿があった。


【あまり時間かけずに、すぐに解決したのは良かったですが‥‥‥結局、何だったのでしょうか?】


 昨晩、首都内に突如襲撃をかけた謎の大男。


 容貌的に怪物と言っていいのだが、暴れに暴れまくられたせいで今、首都内では復旧工事が行われていた。


 とはいえ、被害は建物倒壊程度であり、命が失われた報告はない。


 どうもあの怪物男が出た時点で、裏ギルドに所属していたツェーンが素早く伝達を施し、裏ギルド総動員で素早く住民の避難などを促していたらしい。


 ゆえに、昨夜は建物以外の被害はそうなかったのだが…‥‥



【ぬぅ……やはりというか、検査結果が気になるな】

「みー!」

【あのぅ、ルル姉さん。オルトリンデが思いっきり落書きしているんですけど、気が付いてないのでしょうか?】

【へ?‥‥‥おおおぅ!?いつのまにやったぁぁぁっぁあ!?】

「みー!み!」


 いたずら成功という笑みを浮かべ逃げるオルトリンデを、ルルは全速力で追いかける。


‥‥‥昨晩のその例の化け物男。ワゼの調査いわく、とある可能性(・・・・・・)が出ており、ルルにとっても無関係な話しではないという事で、その内容を聞いて彼女も気になっているようだが‥‥‥



【‥もしそうだとしたら、怖い話ですよね、シアン】

「すぅ…‥‥」


 夜中に対応して疲れて寝ているシアンに対して、そう語りかけるハクロ。


 ついでに言うのであれば、ミスティアに至ってはコチラはコチラで色々と仕事ができてしまったので、こっちが寝たいというようなものだが…‥‥それはそちらで片づけてもらうしかない。



 そうこうしているうちに、ふとその時が来た。


「‥‥‥おや、ご主人様はまだ寝てましたカ」


 扉が開き、検査を行っていたワゼが戻って来た。


【ワゼさん、結果は出たのでしょうか?】

「ハイ。一応、生きている相手なのでそれなりに注意をいたしましたが…‥‥可能性的中いたしまシタ」

【‥‥‥そうですか】


 あまり聞きたくないというか、胸糞悪く思えるような話だが‥‥‥とにもかくにも、その結果を聞くべきだろう。


 そう思い、寝ているシアンをハクロは起こし始めるのであった。





――――――――――――――――――――――――

SIDEシアン


‥‥‥昨晩の、巨大謎怪物大男騒動。


 無力化し、検査をした結果をワゼは持ってきた。


 その結果についてのある可能性を、調べる前にワゼは言っていたが‥‥‥どうやら当たってしまったらしい。




「‥‥‥調査結果ですが、あの大男、元人間であることが判明いたしまシタ」

「そうか‥‥‥」

【そして、その人間の詳細は?】

「提供してくれた試供品や、その他裏で色々と調査し、手に入れたものなどから調べて見たところ‥‥‥遺伝子レベルで、99.999999%以上の確率で、ルルさんが追っていた騎士王国の第1王子レパークと判明。異形化していましたが、ほぼ本人であることは間違いないでしょウ」


‥‥‥その可能性。そう、あの大男の正体が、元人間であるという事を。


 人型のモンスターなどは色々あるとは言え、あのような怪物男のような容貌は余り無い。


 簡易的にワゼが検査をして、元人間である可能性が高いとされていたが…‥‥その可能性が当たってしまった。



 しかも、ただの人間ならまだしも、騎士王国の王子がなっていたのであれば国際問題にもなりかねないだろう。


「異形化原因を調べてみましたが‥‥‥ほぼ手と一体化しかけていた剣が原因であることは間違いないでしょウ。何者かの手によって爆砕されてましたが、欠片などからも復元し、影響力などを調べわかりまシタ」

「爆砕相手は?」

「不明デス」


 あの目玉〇やじ大量の剣。


 何かの影響を与えていたようで、調べたかった場所らしいのだが、あの戦闘後に何故か爆発した。


 何者かが証拠隠滅を図ったゆえの爆発のようだが、その何者かは不明。辿ろうにもワゼのセンサーにも引っかからず、現状調査中である。


 まぁ、爆砕によってばらばらになっていたが、一片も余すことなく回収して復元できたようだけどね。爆砕した人、無駄な徒労だっただろう。



「そしてその剣についてなのですが、コチラはコチラである事が判明いたしまシタ」

「というと?」

「ご主人様の魔力への抵抗力などを調べ、分析した結果…‥‥盗難された聖剣の変質体と確認。ただし、一部性質が反転しており、魔王特攻力が大幅減少し、その分が通常攻撃へ回されていたようデス」


 

 だからこそ、魔法攻撃を砕いたりしたり、黒い斬撃を放てていたようだ。


「‥‥‥何をどうやって、あの地味剣が目玉特売セールぎっしり詰め剣になったのかはわかるか?」

「原因物質不明。ですが、温泉都市での一件…‥‥悪意濃縮暴走剣の時と同じ数値を出していることから、何者かによって同様の手口を加えられ、聖剣を変化させたと推測できマス」


 温泉都市の騒動‥‥‥ダンジョンコアが都合よくやろうとして、それでもうまいこと行かないので、悪意を濃縮した物体が出来上がり、馬鹿王子に影響を与えたという騒動であったが‥‥‥それと似たような物らしい。




 何はどうあれ、正体も原因も色々分かったが‥‥‥それと同時に問題も出て来た。


 まず、王子の容態である。


【‥‥‥レパーク殿下は元に戻せるのだろうか?】

「変化原因は変質した聖剣によるものと判明。一体化していたので切除手術を行い、なんとか影響そのものを斬り落としましたが‥‥‥肉体組織のあらゆる点が人間とかけ離れており、正真正銘の化け物細胞と化していマス。ここから人間の状態へ戻すには、再形成手術を繰り返すしかありまセン。ですが、再生能力などもわずかながらにあるようで、形成し直しても再び戻る可能性ありデス」


 要は、手術を行って形だけでも戻したところで、肉体の細胞そのものがその異形を覚えており、時間が経てば元に戻ってしまうらしい。


「現状、悪意ある物質などに汚染されている状態ですので、再形成よりもその汚染物質を完全除去できるだけの強い聖魔法などを浴びれば戻る可能性がありますが…‥‥残念ながら、私にはその手の装備はありまセン」

「んー‥‥‥僕の場合だと、光魔法ならまだしも、そっち系はなぁ‥‥‥」


 結構前に、都市アルバスを襲撃してきた怪物相手に、特大の光魔法を浴びせたことはあったが‥光と聖では少々違うところもある。


 あまりそういうのを考えたこともないし、具体性などもいま一つなので、使えるのかもよく分からないのだ。


「とはいえ、使い手がいないわけではないようデス。預言者の方に問い合わせてみれば、おそらく見つかるカト」

「ああ、ならそうしたほうがいいかもな」


 あれはあれで、神聖国とか言うのにいるから、そう言った類の使い手などは熟知しているかもしれない。


 一応、王子を元に戻せる手立ては得られたが…‥‥



「今後、同じような事例が増える可能性は?」

「ありますネ。人為的な部分が多いようですし、何者かが仕掛けたのは間違いないでショウ」


 そう、まだこの件は終わったわけではない。


 今回の事件、何者かの手があったという事が大問題なのだ。



「ツェーン及び裏ギルドでも大捜索してますが‥‥‥いかんせん、相手の方が隠密性などに長けているようで、現状手がかりはありまセン。そもそも、聖剣盗難犯と同一人物の場合、その盗難までの手口も不明であり、捕縛には難しいでしょウ」

「そうか‥‥‥」


 つまり、今後も出てくる可能性を考えると非常に面倒である。



 何かと面倒なことが多い今回の事件、今回で終幕とはいかなかったことに、非常に今後の面倒ごとの予感をさせられ、重い空気となるのであった…‥‥








王子を元に戻せる手段はあるかもしれないが、今後の同様の手口を防ぐためにはまだ色々と足りないらしい。

面倒毎を増やしてほしくないのだが‥‥‥犯人見つけたら徹底的に潰したい。

とりあえず、次回に続く!!


‥‥‥魔王が聖属性の魔法を使うのはなぁ。イメージ的な意味で、ちょっと浮かびにくかったりもする。

まぁ、過去に思いっきり特大の光魔法を撃ってますが。同様の方法を取って‥王子が蒸発したらシャレにならないからなぁ…‥‥

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