#282 急がば回れというがデス
SIDEルル
【…‥‥ふむ、道中で見かけなかったな】
ボラーン王国の首都内にて、到着したルルは周囲を見渡し、そうつぶやいた。
騎士王国の、ちょっと困った堅物王子が勝手に向かい、問題を起こす前に回収しようと全速力で駆け抜けてきたのだが‥‥‥どうもどこかで追い抜かしたか、違う道で行かれてしまっていたらしい。
結果として、道中で捕獲することは叶わず、目的地に先に来てしまったのであった。
【とは言え、ここへ来る可能性は変わりないだろうし‥‥‥どこかの宿屋でも取って、そこで待ち伏せをするべきか】
先に着いてしまったことはちょっとやらかした感じもするが、考えてみると悪い事でもない。
先回りしているような物だし、問題を起こす前に回収しやすくなったと考えるべきであろう。
【となると、まずは宿‥‥‥いや、その前にこの事を伝えるべきか】
先に到着する可能性を見越してか、一応国王から預かってきた親書を彼女は懐に持っていた。
国内でごたごたを起こした際の説明にも使えるが、あらかじめ話を通しておくこともできるし、まずはコチラを優先して渡しに向かうべきだろう。
そう考え、ルルは王城の方へ向かうのであった…‥‥
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SIDEシアン
「すぅ‥すぅ‥‥」
【ふみゅぅ‥すぴぃ‥‥‥】
「みー‥くぴぃ‥‥‥」
「‥‥‥やっぱり娘たちの寝顔は可愛いな。あの暴れっぷりの代償を考えなければ問題ないけど‥‥‥」
【あふぅ…‥‥つ、疲れました…‥‥】
「公務の間に、わたくしも相手しましたが同じく疲れましたわ…‥‥」
子供用ベッドの上に、仲良く眠る娘たちを見て僕らはそうつぶやきつつ、ここに至るまでの多大な労力によって積み重なった疲労を癒すために、同じくぶっ倒れていた。
‥‥‥本日も元気いっぱいであった、ヒルドとオルトリンデ。
ロールが懸命に姉として接しつつ抑えようとしたが、好奇心旺盛元気いっぱいな二人に振り回され、僕等も共になんとかしようと動き、今こうして疲労の海に沈んでいるのである。
ついでに、ここに撃沈している僕ら以外にも被害はあると言っておこう。城内の方々、本当にすみません。
何にしても、元気いっぱいの娘たちとは言え、まだ赤子。
昼寝の時間が来れば自然と動きも鈍り、捕獲できた辺りでようやく眠りについてくれた。
ついでにロールもダウンしてベッドに寝かせ、こうして娘たちの寝顔を見れるのは癒されるが‥‥‥疲労感が半端ない。
‥‥‥っと、そうこうしているうちに、僕等にある知らせが入ってくるのであった。
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SIDE騎士王国第1王子
「‥‥‥はぁ‥‥‥今どこだ、ここは…‥‥」
そう溜息をつきながら、彼はそうつぶやいた。
騎士王国の第1王子にして、今回魔王に関して、思い込みで討伐しようと意気揚々と出て行った、レパーク第1王子。
だが、そんな彼は今…‥‥道に迷っていた。
「まさか、道中で襲われまくるとは‥‥‥」
ボラーン王国の首都、王城の方に魔王がいるらしいという情報を得たのは良い。
その魔王を倒すためにまずは馬車を乗り継いで向かおうとしていたところ、運悪く盗賊たちの襲撃を受け、辛うじて反撃して撃退に成功するも、馬車を失ってしまった。
そこで、一応馬車道があったので辿って王国へ向かおうとしたところ、今度は何やらモコモコしたモンスターの群れに遭遇し、巻き込まれ流された。
そこから何とか抜け出すと、もはや道が見当たらず、仕方がなく勘で進んでいたのだが…‥‥
「何故、海が見えるのだろうか‥‥‥」
道中、どこをどう間違えたのか、目的の首都ではなく、国内ではあれども大きくずれた位置にある、沿岸部にたどり着いてしまっていたのであった…‥‥‥
各自で色々と進行しているが、面倒事はそろそろ目を出してきそうである。
まぁ、その前にまずは娘たちを落ち着かせたいところだが‥‥
そして王子、お前辿り着けるのか?
次回に続く!!
‥‥‥屑とか馬鹿とか、そういうのはちょっとマンネリ化してきたので、少々手を加えたが‥‥‥どうしよう、面倒ごとの種のはずなのに、まずその面倒事を起こせる地にたどり着けるのかこれ?




