#269 既に許可はあるのデス
SIDEシアン
‥‥‥選挙戦、まさかの大どんでん返しというべきか‥‥‥いや、元々望んでいなかったことでもあるので、とばっちりを盛大に喰らってしまったというべきか。
何しろ、ボラーン王国の王位継承権を持つ者たちがそろって放棄をせざるを得ない状態になってしまったのだから、第2王女であったミスティアが残っていたので選ばれたのである。
第3,4王子は新国家樹立の王、第5王子は歌唱力強化10年以上の修行の旅、第1王女は婚約者の役職向上ゆえの他国行き、第1、2王子たちは行方不明だからな。
「というか、第5王子の件を取り下げればいような気がするのだが」
「ありとあらゆる音楽家たちに、嘆かれて押されまくった結果らしいですわ‥‥‥はぁ」
僕のつぶやきに対して、ミスティアは不快溜息を吐いた。
あの騒動から2日後、本日は彼女の即位式となる。
選挙でのそれぞれの様子から、王位継承権は復活しないと思っていたが…‥‥まさか、不測の事態が立て続けに起こって彼女が王位を手に入れる羽目になってしまうとは、運命の神とやらがいたらぶん殴ってやりたい。
「そのついでに、僕らも巻き込まれるけど…‥‥それって大丈夫なのかな?」
【シアン、今代の魔王でもありますからね。一国の女王の側に、魔王が付くのはどうなのでしょうか?】
「ああ、それは問題ないようデス」
っと、僕等の疑問に対して、即位式に向けて準備をしていたワゼがそばに現れ、解答してくれた。
「そもそも、各王子・王女たちの課題遂行中に、それなりの犠牲が出ましタ。国民たちは笑いごとのように過ごせていましたが、それでも限度はありマス。なので、元からそう悪い話しもないミスティア様の即位には反対する者はおりまセン。むしろ、一部では号泣されてますネ」
「その一部って?」
「味見係とかデス」
納得というか、何と言うか。むしろそこまで喜ばれるのか…‥‥
「あと、ご主人様の立場としては、ミスティア様が即位されて女王になったところで、魔王という立場は変わりまセン。肩書に王配…‥‥女王の夫としての立場が付くだけであって、政治に関わる必要性はないのデス」
一般的に王配には特例などを除き、権力はさほどない。
というのも、国王もしくは女王と婚姻し、権力を握ろうと考えた者の例は過去にあり、善政を敷く者もそれなりにはいたが、いかんせん人は欲に弱い者がそれなりにおり、いろいろやらかすことが多かったがゆえに、現在はどこの国でも王配には権力はそれほどないそうだ。
で、このボラーン王国でも例外なく、女王の夫がいたとしても国王となるわけではなく、あくまでの「女王の夫」であり、「権力者」へと変わる事は無いのだとか。
だがしかし、今回その女王の夫の座にいるのは魔王。
そこを考えると、色々と言われそうなものなのだが…‥‥特に心配もないらしい。
「というのも、ご主人様に関しては、あの怪物騒動の件で噂になりましたからネ。今代の魔王は悪でもないし、善でもない、中立の立場なのもあり、文句を言うような内容が無いのデス」
悪感情も特に持たれてないのならば、それはそれで良いだろう。
だがしかし、あえて問題を上げるならば、2つほどあるようだ。
まず、子どもに関しての話。
ヒルドとオルトリンデはハクロとの子供であり、ロールは養子。ミスティアとの血のつながりはなく、立場的には王女とは呼びにくいものであり、認めていたとしても王位継承権はないそうだ。
で、そうなるとミスティアとの間に子を成せば、当然その子に王位継承権が生じ…‥‥
「まだ早いですが、権力バランス上政略結婚なども考えなければいけない場合もありマス。王家と血のつながりを得たい家があれば、無理やりバランスを調整して、ちょっとばかり子供が増える事態が考えられマス」
「なんか権力のためだけに生まれるってのも嫌な話しだな…‥‥子どもは親の道具でもないし、バランスが必要はとはいえできれば自由にしたいな」
まぁ、それはまだ先の話でもあるので置いておくとして、面倒なのは今すぐに来そうな、2つ目の問題である。
退位・即位が行われるのは良いとして、その会場の場には新しい女王と縁を結びたい相手は多くいるはず。
で、国王には正妃とか側日とかもあるように、女王にもそれなりに囲う権利があるようで‥‥‥その即位式などの合間に、自身が女王の寵愛を受けようと手を出そうとする輩が出る可能性もあるのだ。
「わたくしとしては、そう言う輩はご遠慮したいですわ。すでに申し込みも来ているのですが‥‥‥わたくしは魔王に嫁ぐと決めた身であり、他の殿方はいりません。むしろ、魔王以上の方がいるのでしょうか?」
「それを言われるとどういえばいいのかな…‥‥いやまぁ、貰った身としては家族でもあるし、権力狙いの馬鹿がいれば当然排除するけどね」
【シアン以上の人って‥‥‥そもそもいるのでしょうか?】
何にしても、警戒すべきなのはその即位式の場。
新たな王と縁を結びたいと思う者はいるだろうし、当然愚かな真似をするような馬鹿も出るだろう。
「あ、ついでにですが例の王子‥‥‥トパーズという人物も出るようデス」
「言われてみれば、あれも王子だったか」
国同士の付き合いなどを考えると、王子が出てきてもおかしくは…‥‥
「ですが、本来の出席予定であったカルパッチョ商国の国王が、娼館で死亡したようデス」
「へえ、国王ってことはあの王子の父親か…‥‥ん?え、死亡?」
「ハイ。自然死に見せかけてのようですが毒殺のようデス」
‥‥‥おかしくないどころか、なんかきな臭い話が出て来たな。
「でも、あの王子がやったとは流石に思えないか…‥‥」
あの第3王子、猪突猛進真正面から来るようなやつだったし、そんな人を殺すような輩にも見えない。
いや、となると…‥‥
「‥‥‥まさかとは思うが、あの王子が言っていた警戒対象がやらかしたとか?」
「その可能性は大いにあるようデス。証拠を現在収集中ですが、間違いなくカルパッチョの第1,2王子たちが絡んでいマス。情報では、謹慎中のようですが、脱走してますし‥‥‥現時点で十分有罪デス」
‥‥‥どこぞやの王族は押し付け合うほどのなのに、こういうところだと血生臭い話しになるのか。
何にしても、詳細を探ったほうが良さそうだ。
いや、その王子二名もなんとなく嫌な予感しかしないし…‥‥即位式に現れたら、素早く捕縛できるようにしたほうがいいかもな。
色々と考えられる可能性なども含め、ワゼに警戒を行うように僕は命じておくのであった…‥‥
嫌な予感がするのであれば、準備をしたほうがいいだろう。
面倒ごとを予感しつつも、防ぐのも良いが‥‥‥この際、活かせる方向も考えるべきか?
色々と考えるが、とりあえず即位式へ向けて次回に続く!!
‥‥‥さてさて、どうなる事やら。仮に出てきたところで、やらかすのが目に見えているし‥‥‥いっその事、やらかすだけやらかしてもらって、良い見せしめにでもすべきかな。
「というか、もうすでに女王になるムードだけど‥‥‥今からでもどうにかできないかな?」
「やれるだけの事は尽くしてみましょウ」
「出来るだけお願いしますわ。いや本当に、本気の本気で・・・・」




