#267 知らないうちに滅されていくのデス
SIDEシアン
‥‥‥まさかのヒルドの婚約相手が決まりつつも、今回僕らは1週間ほど首都に滞在していた。
各王子・王女たちの動向を探りつつ、次期王になる可能性を見ていたのだが、どうやらミスティアの王位継承権が復活する可能性はほとんどないようだ。
というのも、達成できそうでいて完全に達成し切れないというか、被害が出てしまうというか‥無茶苦茶な状態になっているのである。
「一応、明日で最終的に決めるようデス。その時の状態を元に国民投票を行い、結果が出されますが‥‥‥んー、流石の私でも予想しにくいデス。誰がどれだけ課題を達成できたのかというよりも、どちらかといえばだれが被害を一番少なく出来たのか、という趣旨になりそうなんですよネ」
「まぁ、被害はあるからなぁ」
【ある意味、喜劇というか悲劇というか‥‥‥】
「兄様姉様方、本当に何をどうしたらここまでやらかせるのですの?」
ストーカーおよび側室などの候補100人越えが結果として300人越えに。
他国の間者たちが結束し、一大機密探り情報国家が樹立しそうな事態に。
歌唱力が何とかまともな方面へ向かい、100人中30人ぐらいが気絶する程度に。
謎の物体生成力が高まり、なんか新しくスライムなどの生物が誕生していく事態に。
‥‥‥なんか、こうして並べるだけでも、色々と酷い事が良く分かる。
「この感じだと、多分第5王子辺りが有力かなぁ‥‥?課題状態としては、多分一番できていると思うからね」
「姉様の方も、ある意味達成はできてますわね。上達でもないですが、強化されたという点では間違っていないですもの」
【いや、どれもひどいですよ】
ハクロが珍しくツッコミを入れるが、僕等もだいぶこの結果には戸惑わされた。
一応、全員の課題達成と国民に認められれば、ミスティアに王位継承権が復活してしまうが‥‥‥この様子だと、復活する様子は無さそうだ。
いや、まず認めるのだろうかこの惨状…‥‥巷の噂では、むしろどの程度やらかせるのかという賭け事が流行って人気は出ているらしいけどね。
【ふみゅぅ?】
「みー?」
「あ、ヒルドとオルトリンデには関係ないよ。って、ちょっと待って。何その手に持っているやつ?」
【ふみゅ~♪】
「みー♪」
【なんか街中を歩いていて、ここ数日の元気の良さに人気が出たらしく、お菓子を貰うようになったんですよね。まぁ、食べ過ぎは良くないので、制限はさせてますが】
‥‥‥ハロウィンみたいな状態なのかな?まぁ、うん、気にしないでおこう。娘たちの人気が出るのは父親という立場としては色々と複雑だが、害されないなら良いか。
何にしても、それなりに長く滞在したからには、結果を見届けたい。
果たして明日、誰が投票で課題を成し遂げたとみなされ、王になってしまうのか‥‥‥‥少なくともこの様子だとミスティアは無さそうだし、ちょっと賭け事に関しても参加してみた方が面白いかもね。
「あ、そう言えば城の方から連絡が来たのですわ」
「というと?」
「明日の投票結果で次の王が決まるので、その祝いのパーティを開催することにしたそうですわ。で、せっかくなら参加をしますかというものですわよ」
「ん?それって僕らが出て良い類なの?こういうのってその新しい王と縁を作ろうと、他国からの客とかがいそうなんだけど」
「参加制限はなく、誰でも出入りは可能そうですわ。まぁ、一応武器などの没収はされるらしいですわね」
‥‥‥一応武器の没収となるのは、重要な人とかが参加するための安全上の措置らしい。
魔法とかもあるこの世界で、武器の没収だけで安全上の不安はあるのだが、一応それなりの手段もあるらしく、いざという時の対応も可能だそうだ。
「あと、万が一にでもシアンには不快に思うような輩が出てしまった場合、好きに動いても良いそうですわね」
「むしろ、そう言う不快になるような輩が出る前提な様な…‥‥いや、間違ってないのか。そう言えば、ヒルドの婚約相手の王子が親とか兄弟が迷惑をかける可能性があるとかなんとか言っていたなぁ…‥‥あの正々堂々真っ直ぐな信念を持っていた王子だけど、その肉親がまともでもないってのは、なんかおかしな話だよなぁ」
【あれ?そう言えば前に預言者の方が来た時に、シアンの両親の話などで似たようなこと言ってませんでしたっけ?】
‥‥‥言われてみれば、あの預言者の話で、前世の両親や兄の話が出たが‥‥‥考えてみれば、僕も同じような状況だったか?
まともではなさそうな肉親たちに囲まれて…‥‥ああ、なんか今、ちょっとだけ親近感がわいたかも。
娘に対しての恋慕は親という立場上複雑だが、そのあたりを考えると案外境遇は似ているのか‥‥‥
その事実に気が付きつつも、そのパーティとやらに僕らも参加して見る事にしたのであった。
「あ、でも一応何かやるのであれば、その場での被害は最小限にとなってますわね」
「‥‥‥つまり、後から盛大にやっても良いのか。いや、そう言うってことはそんな相手がいるってことだよなぁ」
ある意味、この国の国王も度胸がすごいなぁ‥‥‥夜な夜な王妃や側室たちにしばかれるという話もあるが‥‥‥まぁ、知る必要もないか。いや、知りたくもないか。
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SIDEカルパッチョ商国の国王
「‥‥‥ふぅむ、いよいよ決まるのか」
首都内のとある高級娼館の中にて、カルパッチョ商国の国王、ターボメタ・ザ・カルパッチョはそうつぶやいていた。
この国の王が代替わりをすれば、当然国としては新しい王との面識を作っておきたい。
ゆえに、この選挙の話を聞いた際に、結果が出るまで滞在し、新たな王が出来たら会おうと考え、ここへ
来たのである。
なお、宿屋ではなく、国王は娼館に寝泊まりしているのだが、これは彼の異常性欲が原因である。
一応、旅費としては国庫から支払われたりもするのだが、ココの宿泊料金だけは彼自身の財産から出していたりもするので、特に咎められはしなかった。
「何にしても、新しい王ができればその分貿易なども見直すが…‥‥果たしてどうなる事やら」
本心では、できれば王子たち全員を連れて来て、きちんと新しい王へ面識を作りたかった。
だがしかし、先日の使節団での外交で第1,2王子達がやらかしたようで、今回来れたのは第3王子のみ。
王位継承権を考えると下の方で、商国の王にするにはまだ弱いと思うのだが‥‥‥
「まぁ、それはそれか。誰が王になろうとも隠居して、女遊びを存分に楽しみたいからな」
国王という立場上、重みがあるのは分かるが、ターボメタ自身は王の器にはふさわしくないという理解ぐらいはしていた。
ギリギリ愚王寸前だが…‥‥それでも、一応良識は辛うじてあったらしい。
まぁ、美女を見かければすぐにでも手を出したくなる悪癖はあるが。
「とりあえず、今晩は20人ほどで…‥‥おーい、直ぐによこしてくれー」
「はいはーい」
娼館の者を呼び、注文をするターボメタ。
明日がどうなろうが、今は自身の性欲を押させるためにここで発散することに集中するのみだ。
…‥‥だがしかし、彼が明日の朝を迎えることは無かった。
彼は知らなかったのだ。すでに、第1,2王子たちが別々に国から抜け出し、両方ともこの国の首都内に潜伏していたことに。
彼の行動を息子だからこそ熟知していて、この場所に来ることが予想されていたことに。
そして、この王がいなければ代理として参加することができると考え、偶然出会った二人が協力し、彼を亡き者にしようとしていた動きに。
流石に、怪しい動きがあったとしても、そのすべてを見る事はできない。
ゆえに起きた悲劇は、自然に処理され、気にも留められなかった。
‥‥‥それが、彼ら自身への滅亡に導くことは、誰も気が付かないのであった。
いよいよ定まる、次期国王の座へ向けての選挙戦。
果たしてだれがどのように評価され、次期国王になるのだろうか。
その一方で、良からぬ企みがあるようで…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥そして読者の皆さま方はお気づきだろうか。ポチ、今回出番なし。平穏が長い。
で、今回の分をやった後に、その反動というかつけを出したいけれども、どの程度やるべきだろうか。
うーん、悩むというか、無理にやらなくてもいいような気もするが、相手がポチだからなぁ‥‥‥ゼロツーも巻き込もうかなぁ。後ついでにドーラも。
【シャゲェ!?(とばっちりなんだけど!?)】




