#264 お前が言うのかと言われた気もするのデス
SIDEシアン
‥‥‥ボラーン王国王位選挙、王子王女たちの課題状態は‥‥‥
「‥‥‥うん、多分ミスティアに継承権戻る事はないんじゃないかな?」
「わたくしが言うのもなんですが、これはこれでひどいような‥‥‥身内ながら、頭が痛いですわね」
首都に来て二日目の夕暮時。
ワゼ及びシスターズたちが集めてきた情報を、宿屋にて僕らは見たが、どれもこれもどういえば良いのかわからなかった。
まず、第1王子マイーナ・ザ・ボラーン及び第2王子ゼルドラ・ザ・ボラーンに出されていた課題状況なのだが…‥‥
「課題内容は、『ストーカー及びその候補100人以上に対し、熱心に愛の告白で口説き倒しつつ、どうにか受け入れられるようにすること。現在の国王も側室などがいるため、正妃だけではなく他も抱え込めることを考えての課題である』だったけど‥‥‥何で増えているの?」
【人数が150人突破‥‥‥いえ、この勢いですと200人は行きそうですよ】
ストーカー相手に対しての告白&側室などにして、王位継承後のごたごたを減らす名目があったのだろうが、何故かその候補が増加中。
いや、権力目当ての家も多少はあるのかもしれないが‥‥‥ワゼいわく、むしろそういう野心溢れるようなところは少数派で、大半がヤンデレとかそういう類で埋まっているそうなのだ。
「ある意味、血で血を洗う状況になりかねない、修羅場じみているというか、何というか‥‥‥愛って怖いなぁ」
「兄様方、あれで結構モテるらしいですからね…‥‥うん、でもむしろこの人数の身内が増えるのは、ちょっと嫌ですわね」
考えてみれば、もしこの人数が彼らの側室とかになったとしたら、ミスティアの義姉か義妹になるんだよなぁ‥‥‥彼女と一緒の僕らにとってもそうなるけど、恐ろしい身内生産はやめて欲しい。
【ふみゅぅ?】
「みー?」
【あ、二人とも、これは別に聞かなくても良い話しですよ。それよりも、今日も一生懸命動いたのだし、疲れていますよね?お風呂に入って疲れを癒しましょう】
「み!」
【ふみゅっ!】
「あ、お姉ちゃんが背中流してあげるにょ!」
ちょっとここから先が色々とドロドロしそうな気配がしたので、一旦ハクロが娘たちを連れて、宿の風呂に入りに向かった。
生まれてまだそう経ってもない子供たちに、血みどろになりそうな類のは聞かせたくないからね。
「まぁ、気を取り直して‥‥‥次は、第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーンだったか?他国の間者と仲良くなっていることとかで、『友人的な他国の間者たちを、この国へ引き込めないか勧誘しつつ、政治的にどのように生かせるのかの手腕を見せつける事。ただし、場合によっては自国の間者やその他扱える手段があれば利用してよい』って課題だったよね」
「けっこうコミュニケーション能力が高い兄様方でしたしね。でも、こちらの方は特に問題は無さそうな‥‥‥」
「いえ、十分問題大ありデス」
そう言ってワゼが出してきたのは、別の書類。
こちらはこちらで、内容が結構あったようで…‥‥
「隣国、友好国、敵対国、遠方の国、その他述べあげてもキリがないほどの間者がいる事にも、ツッコミどころはありますが‥‥‥ほぼ全国コンプリートしたようデス」
「‥‥‥何でそんなに間者がいるの?」
「これ、我々も関係ないとは言えないのデス」
‥‥‥いわく、魔王が出ているとか、国同士の争いで被害がほとんどない時とか、首都での怪物騒動とか、この国は少々目立つことが多すぎたようで、その事を探る国が、先月辺りから増加してきたらしい。
裏ギルドの方でもツェーンがおり、裏ギルド自体がそういう情報網を得る事も多い事から依頼が来たりして、握りつぶしても送り込んできたりなど、色々あるようで、少々情報戦の部分で混戦しているようなことが多いのだとか。
「あー‥‥‥確かに、僕等もちょっとは関わっているのか」
なんというか、元凶の一人みたいな扱われ方だが、何も言えない。
「むしろ、全国からきている方がすごいですが、それらとも仲良くなっている兄様方も凄そうですわね」
「確かに‥‥‥いや、でも言語とかで通じない国とかあるんじゃ?」
「ああ、一応ありますが、マスターしているようデス。というのも、間者というのは他国へ紛れ込む分、その国の方言やなまりなども違和感なくする必要性もあり、そう言うのが得意な者たちから学んだそうデス」
各国からの精通した情報が流れ、学習できてしまったという事なのか…‥‥良いのかその学習方法。
「ちょっと取り入れたい方法ですね…‥‥その分野の専門家を呼び寄せ‥‥‥いえ、新たに特化したシスターズを生産して‥」
「今以上に増えるの?」
「国としての脅威が増加するのはどうなのですの?」
何にしても、全国間者コンプリートをしてしまった現状、王子たちは課題通り政治的に活かさなければいけないはずだが‥‥‥
「が、ここで問題が起きたようデス。むしろ、コミュニケーション能力の高さゆえに慕われ、新しく情報戦専門スパイ国家を樹立したい人が多くなり、第3,4王子たちを国王とかにしたい動きが出たようデス」
「つまり?」
「放置しておけば、争いから抜け出せても、新しい国の王にされてしまうという事になりマス」
「…‥‥うん、まぁ、それはそれでいいですわね」
王位継承権押し付け争いからもし逃れられたとしても、その新国家の王にされたら結局王になるので意味はないだろう。
というか、本当に何をやっているのだろうかこの国の王子たちは‥‥‥いやまぁ、ミスティアが身内にいる時点で、僕の方にとっても義兄みたいな人たちってことだから…‥‥それはそれで、なんか嫌だなぁ。
「まぁ、こちらはもうどうしようもないというか、既に国名決めなどが行われているようなので放置しましょウ。続くは、第5王子の話デス」
考えていてもキリがないというか、頭が痛くなりそうな話なのでワゼが切り替えた。
確か、第5王子ザリック・ザ・ボラーンの課題は‥‥‥
「『孤児院やその他福祉施設への訪問を増やしつつ、音痴を改善すること』だったよね?一番普通というか、一番成しとげられそうな課題のような気がするんだけど」
音痴程度ならば、どうにかできそうな…‥‥
「あああー‥‥‥多分、それはそれで被害が出たのですわね?」
「ええ、その通りデス」
「どういうこと?というか、どれだけ酷いの?」
「そうですわね…‥‥ある人がザリック兄様の歌唱力を評価した言葉を戴くのであれば、『その歌声は、天を落とし、大地を割り、海を干からびさせ…‥‥』いえ、これは確か、まだ甘い評価でしたわね」
「いや、それはそれで天変地異だよね?」
何その評価で甘いって?もっと厳しい評価とか、まともな評価だとジ〇イアン並みなの?
「んー‥‥‥ご主人様にわかりやすく例えるのであれば‥‥‥ちょっと前に使ったあれの音版破壊力デス」
「あれって?」
「『魔電砲』デス」
「ああ、あのハデライスとか言うアンデッドを消し飛ばした、超強力な奴‥‥‥いやいやいや!?あれの音バージョンってどう考えても不味いやつでしょ!?」
以前、首都であった怪物騒動の元凶ハデライス。
奴を消滅させた超強力兵器…‥‥それがその兵器あり、その威力のすさまじさゆえに、首都に大きな穴が開いた。
あれの音バージョンの歌唱力と聞くと、それこそシャレにならない。
‥‥‥でも、何でだろう。ジ〇イアンとかに比べると、まだマシなのかもしれないと思ってしまう。
「歌唱力自体は現在、歌の教師を招いて矯正中のようですが、現在23人が病院送りデス。一応、少しづつ矯正されているようデスので、おそらくこちらが先に課題を成されると思われマス」
「成せるのかそれ?」
まぁ、これ以上は気にしたら負けであろう。
病院送りになった方々には、同情をするが…‥‥あとで、シスターズたちに匿名でお見舞い品でも送ってあげるべきだろうか。
そして報告の最後というか、今回の選挙戦のラスボスというべき存在の話になった。
「‥‥‥で、第1王女アルティア・ザ・ボラーンに課された『壊滅的な料理の腕前を、向上させること。もしくは今以上に低下させない事』ってのは?」
「…‥‥」
その問いかけに対して、ワゼはそっと目を背けた。
その顔は、何とも言えない表情というか、流石のワゼでもどうにもできなさそうな、諦めのもの。
渡された報告書を読み、予想通りというか、それ以上の結果を僕らは見てしまった。
「謎の物体Xの改良、亜種、別物‥‥‥Y、Z以外にも色々創り出したのか」
「もはやこれ、呪いの類といっても良いのですが…‥‥ワゼさん、アルティア姉様に呪いとかはないのでしょうか?」
「残念ながら、本当にありまセン。念には念をおして、その手の専門家の話も聞きましたが、むしろこれは才能のようデス」
「でもこの現場写真とか、すごい凄惨な状態なんだけど…‥‥」
‥‥‥何というか、まずこれ一国の王女ができるものなのだろうか?
「断る‥‥‥事もできなかったのか」
「料理以外の面では、結構慕われる姉様ですからね。今後の事などを考えたり、もしくはその純粋に思う気持ちなどに押し切られてしまうのでしょう」
「その結果が、この大惨事デス」
死者が出ないのはまだ良いが、死よりもひどいような気がする。
うん、物体Xよりパワーアップしている点では、ある意味料理の腕前が上達しているのだが…‥‥違った方向へ突き進んでいるなぁ。
「なお、この未知の物質たちによって、新たにスライム系統のモンスターが誕生、逃亡したという報告もありマス」
「なんかもう、生命創造の域に達してないか?」
何処から突っ込めばいいのか…‥‥何というか、被害の大きさやシャレにならない事態に、もはや何も言えない。
‥‥‥ひとまずは、大体の経過を知ることはできたが、むしろ不安要素しか増えなかった。
「うん、全員課題達成って奇跡でも起きないと無理でしょ。というか、奇跡すらも逃亡するなこれ」
「‥‥‥まぁ、この課題面さえなければ、皆大丈夫なはずなのですが‥‥‥」
この中でミスティアが唯一まともになっていてすごい良かったと、この瞬間僕らは思うのであった。
「‥‥‥ん?」
報告書をしまい、ワゼが他のシスターズに引き続きの監視の命令を出そうとしたところで、ふと彼女は何かに気が付いたように振り返った。
「どうした、ワゼ」
「どうやら、ココへお客さんが来たようデス」
「客?宿屋だから、それは普通なような気もするけど」
「いえ、どうやら‥‥‥こちらに、面会を求めているようデス」
‥‥‥面会?
「ちょっと確認してまいりマス」
そう言い、ワゼは退出した。
面会と言われても、この首都内で早々顔を合わせに来るような人はいないだろうし‥‥‥何か目的でもあるのだろうか?
首を傾げつつも、その面会内容の知らせが来るまで、僕らは待つのであった‥‥‥‥
面会とは何なのか?
そんな用事とかも聞いてないし、首をかしげるシアンたち。
一体どういう目的で誰が来たのか、次回に続く!!
‥‥‥さてさて、いよいよ接触か。
ついでにここで軽く知らせるならば、今月ちょっと忙しいゆえに、投稿が遅れる事もあるかも。予約投稿とかもあるけど、それまでに間に合わなかったりします。
まぁ、もともと不定期投稿だからなぁ…‥‥新作とかも考えているのに、忙しい時期って大変である。




