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#229 タイミングは良かったのデス

SIDE首都ボラーン


‥‥‥その日、ボラーン王国の首都であり、王城もある首都ボラーンはいつも通りの日常となるはずであった。


 人々でにぎわいつつ、ここ最近続々と捕縛されていく貴族の噂なども流れつつ、平穏に過ごしていく。


 そうなると思っていた中‥‥‥その日常が、ぶち壊された。



ドォォォォォォン!!


 突然響き渡る爆音に、人々は何事かと思い、その音がしたほうを振り向く。


 その場所は、首都内でも貴族たちが集まっている貴族街の端っこ。


 そこにもくもくと煙が上がっており、何か爆発事故でも起きたのかと人々は思ったが、次の瞬間それがただの事故ではないことを悟った。


 凄まじい風が吹き荒れ始め、煙が拡散していく。


 そして、晴れたその跡地にあったのは‥‥‥



――――――――――――――――――

SIDEシアン



 いつも通りの朝食の席。


 全員起床し、僕らは朝食を食べている中、食べ終えた食器を片付けているワゼに異変が起きた。



「あ、ワゼ、これも片付けて」

「了解デ‥‥ギッ!?」


 空っぽの食器を手渡しし、ワゼが受け取った瞬間、彼女が突然妙な音を立てた。


 それと同時に動きが止まり、食器が床に落ちて割れる。


【どうしたんですかワゼさん!何か変な音がしましたよ!?】

「何か壊れたのか!?」

「ギ‥‥‥い、いえ、違いマス」


 僕らの問いかけに対して、ワゼが再度動き、耳の方を手で押さえる。


「っぐ、きょ、強力な干渉波が出たようで、少々機能に支障が出たようですが、故障無しデス」

「干渉波?」

「ええ、それも首都の方に派遣していた‥‥‥ちょっとある手の者が受けたのが、こちらに伝達されたようデス」

「何か今、王女としては危機の褪せないような言葉がでましたが‥‥‥」


 ミスティアがそうつぶやく中、ワゼが再び耳を押させる。


「ちょっと待ってください、その者からの緊急通信のようデス」


 首都の方に手の者とか、そういう話は聞いていないのだが、どうも今はそういう質問をして良い空気ではなさそうだ。


 少し黙ると、数分ほどでワゼは耳から手を離した。


「‥‥‥んー‥‥‥かなりヤヴァイ事態のようデス」

 

 額に手を当てながら、ワゼがそう言葉を漏らす。


 色々とやらかしまくる彼女がそう言うとなると、その内容はどう考えても超・厄介事の予感しかしない。


 そう思っていると、ワゼはミスティアの方へ向いた。


「えー、今の緊急通信によれば…‥‥現在、ボラーン王国の王城もある首都ボラーンにて、正体不明の襲撃が発生中のようデス」

「「【‥‥‥はぁっ!?】」」


 ワゼの言葉に、僕らは思わず驚愕の声を上げた。


 首都ボラーンは前にも行ったことがある場所だが…‥‥そこが襲撃を受けているだと?


「お、王城の方はどうなっているのですか!!」


 事実を飲み込んだミスティアが、直ぐにそう問いかける。


「連絡によれば、王城付近も戦闘中のようデス。首都内の冒険者及び騎士団などが住民の避難誘導、襲撃対応に追われているようですが、いかんせん戦力不足ゆえに、事態は思わしくないようデス。介入を試みたいようですが…‥‥残念ながら、今回のその手の者は現在戦闘不能状態。連絡が遅れたのも、こちらも襲撃を受けたようで人をかばって壊れているようデス」


‥‥‥その手の者が何者なのかは不明だが、壊れたとか言う時点でワゼが作った何かだろう。


 それが人をかばって壊れるとか言うが、そもそもそのワゼが作ったものはそう壊れやすいものでもないはず。


 それが意味するという事は‥‥‥‥



「‥‥‥つまり、首都陥落の危険性大?」

「そういう事デス。計算上、持ってあと数時間しか‥‥‥」

「そんな‥‥‥!!」


 ワゼの言葉に、絶望の顔色を浮かべるミスティア。


 彼女は王女であり、首都の方にある王城内には彼女の父親や母親でもある王族がいるだろうし、気が気ではないようだ。


 こういう時は、王族の方が脱出を試みそうなのだが…‥‥首都全体での襲撃状態であり、安否も確認できないようだ。


「ど、どうにかできないのですか!!このままでは首都が、いえ、この国そのものが!!」

「…‥‥無理デス。首都内では戦力不足ゆえに、状況の好転はあり得まセン」


 はっきりと告げられた言葉に、ミスティアはさらなる絶望の表情を浮かべる。



 現状、今のままでは確実に持たないようだし…‥‥どうしようもないというのは確かに絶望しかないだろう。


 でも、それはあくまでも‥‥


「‥‥‥ワゼ、それって『首都内では』だよね?」

「そうデス」

「じゃぁ、僕らの介入はどうかな?」

「計算上、1時間以内の介入であれば可能デス」

「シアンさん‥‥?まさか」

「そう、そのまさかだよ」


‥‥‥正直言って、動く必要性はない。


 首都が危なかろうが、ここは変わらないし、ポチたちの結界もあるし、万が一があれば引っ越せばいい。


 けれども、流石にそこまで薄情でもない。


「僕らが介入する。この国に住まう分、こういう事態の時とかは動かないとね」


 そう言い、僕は動き出す。



 今代の魔王とか中立の立場とか言うけど、そんなのはどうでもいい。


 普段は目立ちすぎずに平穏に暮らしたいし、こういう時は傍観をしたほうが良いのかもしれないが、それでこっちに被害が来ても困るしね。


 それに、今いるミスティアは我が家に元々避難しにきた客人。


 大掃除とやらが終わるまではいるようだが、その変える場所が潰されては意味もないだろう。


「ハクロ、ロールは留守番するか?僕としては二人とも家にいたほうがいいけれど…‥‥」

【いえ、私も行きますよ。首都の方にはいい店などもありましたし、シアンの側にはついていきたいですからね】

「ロールも一緒に行くにょ!リザ時代のは流石に無理だけど、十分戦闘可能だにょ!」


 僕の問いかけに対して、二人ともそう答える。


「そっか。じゃあ、一緒に向かおうか。ミスティアさんは?」

「…‥‥わたくしも行きますわ。本当はここで待っていたほうがいいかもしれないですが、今は国の一大事。王城がマヒして指示が出せなくてもダメですし、シアンさんたちが動くのであれば黙っているわけにもいかないのですわ!!」


 ぐっとこぶしを握り、そう言い切るミスティア。


 王女はここで大人しくしてもらう方がいいかもしれないが、彼女自身が決めたのであれば断る意味もない。


「よし、なら向かおうか。ワゼ、準備は?」

「ポチ馬車では、現状時間不足デス。しかし、向かう手段はありマス」

「というと」

「そうです、こういう事態が来るとは思いませんでしたが、バージョンアップのタイミングで良かったデス。ミニワゼシスターズ、全員集合デス!!」


 ワゼの号令と共に、片づけをしていたシスターズが集まり、合体していく。


 パワーアップした時期がちょうどよかったというか、いきなりの実践テストというべきか。


 何にしても、こういう時位は大暴れをしてみたいという言葉は飲み込んで、僕らは素早く戦闘準備を行う。


 さぁ、何が起きたのか詳細は道中で聞きつつ、今は首都へ向かう事だけを考えようか!



 

平穏にいきなり飛び込んできた重大事。

穏やかではないし、どう考えても危なさそうだが、こういう時位は突っこんでみる。

いつもいつも面倒ごとがやってきているが、力づくで潰してみるべし!!

次回に続く!!


‥‥‥というか、いつの間に手の者って。

ワゼ、裏で何をやっているのだろうか‥‥‥‥

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