#216 知らぬところで笑うのデス
SIDEシアン
いつも通りに魔法屋として活動を行いつつ、依頼も終え、僕らは帰路についていた。
「にしても、この衣とか役に立つなぁ‥‥‥」
【痒いところに手が届きますよね】
この魔力で出来た衣、魔法屋としての仕事中に結構役立つ。
屋根の上とかに上る際には飛翔できるし、何か重いものがあれば腕を作って軽々と持ち上げられる。
普通の魔法でも同様の事は出来たりもするが、それらよりも手間がかからず、まさに背中をかける孫の手のごとく、便利になっていたのだ。
とはいえ、便利さを傍受する一方で、既に先日の温泉都市での話が、どうも都市アルバス内でも伝わってきていた。
「魔王が出現したとか、馬鹿を徹底的に潰したとか…‥‥情報の正確性はあるけど、そこまで噂になっていたのか……」
「まぁ、集団気絶などもありましたからネ。地形の修復はできましたが、流石に人の口を防ぎきるのは難しかったようデス」
僕のつぶやきに対し、そう答えるワゼ。
一応、大暴れした内容そのものは悪いように伝わっておらず、むしろ元凶の馬鹿王子とやらの方への批判が集中しているようで、その王子の国‥‥‥メグライアン王国だったか、なんとか王国だったかは忘れたけど、王族への非難も同時に出てしまったようだ。
まぁ、魔王の大事な人を狙って馬鹿をやらかし、大災害を引き起こしかねているし、噂だと魔王がさらに乗り込んで来る可能性があるとか言われていて、王子に対してもはや擁護する声もないそうだ。
というか、まだ処刑とかもされてないのか…‥‥ワゼに処分を任せたとはいえ、一応生きて帰国できたようだけど‥‥‥この様子だと、渦中はすごいことになっていそうだ。
【でもシアン、結局魔王に関しての言及などは無いようですよ?】
「そこまでは興味をひかなかったか、もしくは情報操作だろうな」
魔王……いや、この場合今代の魔王が僕らしいけれど、そこまでの詳細は触れられていなかった。
大半が気絶していたというのもあるだろうし、無意識に広げていた威圧とかで記憶が飛んだ人もいたようだし、仕方がない事は仕方が無いのだが‥‥‥‥その魔王出現が今、他の国々でも話題になっているそうだ。
なんでも以前に、預言者のいる神聖国が魔王出現を預言したそうだが、当時の他の国々はやや半信半疑。
だがしかし、今回どこぞやの愚王子の件で認識され始め、調査されたそうだ。
その結果、色々とバレているようで、むしろ騒ぎにならないようにという動きもあるらしく……
「ついでに私の方でも、そのあたりの情報統制を取るようにしていマス。ご主人様の平穏な暮らしを邪魔されぬように、情報に規制をかけたり、工作もしているのデス」
「なるほど」
ワゼの方でもいろいろやっているそうで、どうも協力してくれる組織とかを得て、そこまで話が詳細にならないようにしているようだ。
まぁ、その代わりに例の愚王子に関しては、たっぷりとひどすぎる面を強調した噂を流れるようにしたようで、むしろそっちの方の話題が大きくなったようである。
……別に気にしなくても良いか。物理的な制裁はやったし、社会的な制裁がどう続こうが、それは相手の自業自得だからね。
ただ、魔王出現の話によって今、王城にいる第2王女のミスティアの方は大変らしい。
何しろ、以前の戦争の際でのつながりもあるせいで、国内外でどうも魔王と連絡を取れる立場という事が判明し、そのつながりに関して色々したい人たちが嘆願書などを送ってきているらしい。
何かこう、色々と押し付けてすまないような気もするが…‥‥
「どうにかできたらいいなとは思うけどね」
【そのあたりは私も同意見ですね。彼女には色々と世話になってますし……まぁ、この国の王女ですから、そうたやすくはできませんよね】
僕らはそう話しつつ、ちょっと心労をかけていそうな王女に対して胃薬でも送るべきかと考え始める。
……その傍らで、ワゼが一瞬怪しく瞳を光らせたような気もしたが‥‥んー、なんか背筋が一瞬ブルっと寒気を感じて震えさせられたのは気のせいだろうか?いや、気のせいだと思いたい。
こういう話に限って、絶対に何か企んできていそうな予感もするのだが‥‥‥考えたくないなぁ。
―――――コチラワゼ。ゴ主人様方ノ思考確認。都合一致。
―――――了解。コチラフィーア、ソノ連絡受ケ、行動開始シマス。
―――――ナオ、要求ノ執務関係機能増設モ可能。他シスターズノバージョンアップ計画始動シマス。
……なんか乗っ取られた次回予告。まぁ、次回に続く!!
……さらっとまだあの愚王子存命中。そろそろ処分されるだろうけれど、その前に何者かによって行方不明にされそうな気がするな。




