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#215 悪い事も考えられそうデス

SIDEボラーン王国城内


 月夜の明かりが照らす中、ボラーン王国の王城の庭にて、山が積み重なっていた。


「‥‥‥フー」


 積み重ねたそれらに対して呆れた目を向け、フィーアは溜息を吐いた。


 

 とある騒動以来、第2王女ミスティアの護衛を命じられ、この王城内で彼女と共に過ごして結構経ち、ある程度潰してきたのだが‥‥‥ここ最近、また増えた不審者たち。


 今日も懲りずにまた出て来たので、わざわざ処分しに来たのだが、何というか非常に面倒。


「ぐぅぅ……ま、まさか我々が‥‥‥」

「自害しようにも、毒すら引っこ抜くとは‥‥‥」

「と言うかあいつの場合、目の裏の毒だったからえげつないことに‥‥‥」


 ビクンビクンと痙攣し、うめき声をあげる不審者……いや、正確に言えば、この城内にいる王族を害そうとしてやって来た刺客たちは、目の前の小さなメイドにやられた現実から目をそむけたくなりつつ、受け入れさせられる。




 この刺客たち、軽く調べて見たところ裏ギルド系統には所属していない、何処かの貴族の私兵とか、雇われた野生のごろつきのようであった。


「フー」


 やれやれと言うようなしぐさを取り、箒を持ちだし、とりあえずは処分場へ運び始める。


 正確に言えば、城の地下の方にある拷問室であり、既に顔なじみとなった拷問担当者たちに渡しに向かう。





……忘れそうにもなるが、王族というのは非常に面倒な立場。


 この国の王族は王子5名王女2名というだけに、次期王になる座の争いはある。


 いや、王子王女たち共に誰もがむしろ王にはなりたくはなく、押し付け合っているのだが‥‥‥厄介なのは、彼らにつく取りまきの貴族たちなのだ。


 誰が王になろうが関係なく、甘い汁を吸えればいいと考える魑魅魍魎。


 そう言った輩たちが、自分の推す王子・王女たちが王になれるように、邪魔な者たちへ向けて刺客を放ったり、情報工作などを行い、王子王女なんかよりもかなり王位継承権争いに力を入れるのだ。


 そしてそのせいで、今晩のような刺客たちがやってくるのだが、それらをまとめてフィーアは潰していた。


 第2王女の護衛とは言え、一応、城内で過ごし、話したりするうちに情も移り、守る対象にはそれとなく入れ、わざわざ対応しているのである。



 とはいえ、こうもやって来られるのは勘弁してほしい。


 ワゼによって作られたメイドゴーレムとは言え、彼女の劣化版でもあるせいか睡眠も欲しいし、いちいち潰す手間も面倒なのだ。


 証拠などをそろえ、派遣してきた大本たちを叩いたりするのだが、いかんせん魑魅魍魎共はそのあたりをしっかりとしているようで、中々潰すのに時間がかかってしまう。


 これも面倒な貴族社会だと思いつつ、とりあえず拷問担当者たちのところまでフィーアはやって来た。



「フー、フー」

「お?フィーアちゃん、また来たのか」

「フ」

「うわぁ、また大量にか」

「今日もすごいというか、面倒な人が多そうだね」

「フー」


 拷問担当者たちにとっては、仕事を貰えるのは良いが、こうも多いのは疲れるようで、互に苦笑いを浮かべる。


「フー」

「ああ、そうだな。これでまた増えたというか……うーむ」

「最近減っていたのに、また増えたよね」

「フ」


 うんうんと、彼らの話に頷きつつ、引き渡し始めるフィーア。


 暴れられても困るので、刺客たちに一人一人丁寧にスタンガン状態に変形させた腕で気絶させつつ、担当者たちと話し合う。


「フー?」

「ん?ああ、2日もあれば自白は容易いかもな」

「最速20秒の記録を抜きたいが‥…まだまだ難しいなぁ」


 刺客たちの様子を見てそう告げる担当者たち。


 今回の奴らでいろいろ情報を吐かせたとしても、解決につなげるにはまだ一歩足りないようで、やきもきした気持ちではあるようだ。


「それにしても、最近減っていたのに増えたとは…‥‥一時期は在庫でもなかったのだろうか?」

「あるいは、増やすだけの何かがあったかもね。まぁ、王族が何をやるのかは分からないが、多分それ関係の事だろうしね」

「フー……」


 その話しに、フィーアは心当たりがあるが、そう口に出すようなものでもない。


 

「フ」

「ああ、何にしても潰すことは潰すし、結果を待ってくれ」

「まぁ、時間がかかるのは仕方がないんだよね。最近はどうも興奮するような変態も混じっていたりするし、色々と大変なんだよなぁ」

「フー……」


 遠い目をして言う担当者に、同情の目を向けるフィーア。



 何にしても、この刺客たちが再び日の目を見るのにはそう時間はかからなそうだが、第2第3の者たちがやってくるのは目に見えている。







 担当者たちと別れ、ミスティアの部屋に戻ると彼女は寝ており、スヤスヤと寝息を立てていた。



……刺客の者たちが増えた原因。それはおそらくだが、彼女が原因なのだろう。


 魔王の話が広まりつつある中、その魔王と接点があるのは彼女であり、一番重要な役目を背負わされているのは間違いない。


 ただ、その分面白くないとか、良からぬことを考える輩たちがいるようで、刺客たちを仕向けてきているのだろう。



「‥‥‥フ」


 護衛対象とは言え、こういう王城内ではセキュリティも完璧とはいいがたいし、彼女ばかり狙われるのはあまりよくない。


 一度何処かへ場所を移しつつ、ついでに最近仕事が忙しそうなので、ゆっくり過ごさせたいともフィーアは思った。


「フー…‥‥」


 考えつつも、良い答えは中々出ず、空を見上げ溜息を吐く。


 

「フーフ、フー……」


 ああでもない、こうでもない、この案は‥‥‥ダメかとつぶやくフィーア。


 自分一人では限界もあるし、魔王がいるからこそ連絡を取りたいような相手が強硬手段に出る可能性もあるし、やることが多すぎる。


 いっその事、何処かに引っ込んで落ち着くまでいられるような場所があればいいのに……と考える中、ふと閃いた。


「‥‥フ!」


 あそこならば、多分大丈夫であろう。


 だがしかし、許可とか準備とかも色々あるし、仕事を休ませたくともまだ残っているし、放置すればその分大変なのはわかっている。


 それらをどうにかする方法を考えつつ、ひとまずは実行に移すべきかとフィーアは思うのであった。





「フー……」


……それに、王族内でまだ、ミスティアには婚約者もいないし、そう言ったことで言い寄ってくるような馬鹿も予想ができる。


 けれども、あそこであればそうそうできないだろうし…‥‥あわよくば、正妻は無理でもどうにかなりそうな方法もあるし、ちょっとばかり悪巧みも考える。


 何はともあれ、明日の朝には早急にこの案をミスティア以外の王族に話しつつ、了承を得てもらおうと予定に書き加えるのであった。




ビシーン!!バシーン!!

「ぎゃあああああああああ!!」


「フ?…‥‥フー」


 何処からか拷問室以外の場所での鞭と叫びが聞こえたが‥‥‥‥まぁ、気にしないでおこう。


 最近増えた国王への王妃及び側室たちの折檻だろうし、深夜に行われるとはいえ、寝ている者たちは深い眠りに落ちており、そう目を覚ますことはないだろう。


 まぁ、気にしたら負けというべきか…‥人の不思議な生態には、まだ謎が多そうであった‥‥‥‥




今回出番なしのシアンたち。

されども次回は出番があれども、何やらフィーアが企んでいる模様。

身内からの面倒ごとが来るのか…‥‥

次回に続く!!


……護衛を担当しているフィーア。メンテナンスを受け、初期に比べるとずいぶんと感情豊かになってきたような気がする。

そして人脈作りも着々と行っているようで、シスターズの中じゃ結構出番が多い。

ツヴァイ、ドライも同期なのだが‥‥‥個性面では結構強くなってきたかもね。まぁ、城内では頼れるメイド兼小さな世話したくなるような少女として受け入れられているらしい。孫娘感覚な人が多いようだ。

合体フォルム時の姿に関してもファンはいるようで、できればそっちに組み立て直してほしい派閥と、今のままが良い派閥と、より幼くしてほしい派閥の争いがあるようだが……まぁ、それはまた別の機会に。

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