#203 思いつきもデス
(2019/1/1)
あけましておめでとうございマス。
今年もこの物語をどうか、お願いいたしマス
SIDEシアン
雪も深々と降る中、僕らは今、ある場所を目指していた。
「まぁ、正直この時期は依頼も少ないし、こうやって出かけてもいいよね」
【むしろ、この時期だからこそ温泉に入りたいですよ】
「楽しみ♪楽しみ♪」
ポチ馬車に乗り、ガタガタと進む僕らが目指しているのは、前にも行ったことがある温泉都市オルセデス。
この寒い季節の中で、ふとこたつ以外の温まる方法として思い出し、向かう事にしたのだ。
とはいえ、半年ほど前だったか、騒動が起きたが‥‥‥まぁ、復興しているはずである。
【でもシアンがやらかして、余計にやばい事になっていそうですけれどね】
「確かにね」
ハクロの言葉に、僕はそう答える。
温泉都市は温泉があふれ出ていたが、実はその源はダンジョンコア。
あの温泉都市そのものが温泉ダンジョンとでもいうべき様な存在であり、一時期はそのコアが謎の疲弊によって温泉が枯渇したことも有る。
その際に僕らが居合わせ、ならば魔力で治せるとか言う話で流したのは良いが‥‥‥いかんせん、少々流し過ぎた結果、温泉がより一層溢れかえる結果になってしまった。
あれから結構経つが、噂によるとその温泉の量は増え続け、現在もなお発展しているらしいが‥‥‥どうなったのだろうか?
「んー、でも楽しみなのは変わらないにょ!雪の女王の記憶だと温泉は恵まれなかったし、絶対に閾値と思っていたことでもあるにょ!」
「そうなのか?」
【でしたら、この機会にしっかりと楽しみましょう】
「うん!」
以前とは違って、養女を得ているので親子水入らずの旅行となる。
いや、あの時はまだ、後の方でハクロの告白を受けたとはいえ家族仲はそう深いものでもなかったし……今回は改めて家族仲を深めるいい機会になりそうだ。
「それにしても……」
馬車が進む中、ふと僕は横の席を見た。
「ドーラまで来るとは思わなかったけど、その席で良いの?」
【シャゲ】
問題ないと言うようにドーラが頷き、馬車の横の席に置いたバケツの中でドーラがそう答えた。
このバケツ、雪将軍の頭にあったやつで、お出かけ用の鉢代わりにしたらしい。
元々ドーラは根っこを抜いて地上を歩行できるが、こういう鉢のような中にいたほうが安心するそうなのだ。
【というか、ドーラも入れる温泉ってあるのでしょうか?】
「ああ、それは問題ないデス」
ハクロの疑問に、走行中のポチをしばきつつ御者席にいたワゼが馬車内に入って来た。
「というと?」
「あらかじめ調べておきましたが、前の件でどうも温泉がより活性化した‥‥‥というよりも、ダンジョンコアが活発になったようで、都市内に普通にモンスターが湧き始めたそうデス。ですが、本来であれば凶暴なはずの種がなぜか穏やかであり、温泉に普通に入りびたるという現象が起きているようデス」
温泉都市オルセデスは温泉ダンジョン。
これまでは温泉が噴き出るだけであったが‥‥‥モンスターもわくようになったのか。
何にしても特に害はなく、むしろモンスターが自ら温泉の素晴らしさを伝えるために動いているようで、これはこれで目玉になっているらしい。
「何かが間違っているような気がしなくもないけど…‥‥なんか面白そうかも」
「そのおかげで、モンスター用の温泉も増えたようデス」
だからこそ、ドーラも入浴可能な温泉はあるそうだ。
「まぁ、元々植物ですので、植物用の療養の湯はあるようデス」
「ああ、そう言うのもあるのか」
何にしても楽しみな一家そろっての温泉旅行。
この雪降る時期だからこそ依頼も少なく、魔法屋としての活動も制限されるのであれば、いっその事家族での時間を増やしたほうが良い。
そう思いながら、僕らは温泉に思いを寄せつつ、どう巡ろうかと楽しみにするのであった。
「なお、こちらが最新版のようデス」
「温泉の種類が‥‥‥千種越え!?」
【どれをどう巡れば良いんですか!?】
「うわぁ、すごい数なにょ!」
【シャゲ】
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SIDE???
……シアンたちが温泉都市へ向けてすすんでいる頃、同じように向かう者たちがいた。
ただし、彼らは別に旅行に来たと言う訳ではない。
「おい、本当にその温泉都市にある薬湯で大丈夫だよな?」
「多分な。どんなにぐちゃぐちゃになった部位でも時間をかけて治せるような薬湯があるそうだ」
馬車の護衛をしている騎士たちがそう話しつつ、馬車内で寝込んでいる相手を見てはぁっと溜息を吐く。
「全く、本当は使節団として向かうはずが、どうしてこうなったのやら」
「まさか道中で、雪将軍に出くわし、馬鹿が堂々と挑みに行ったからなぁ‥‥‥」
雪将軍、それはこの雪の季節だからこそ出るモンスター。
だがしかし、被害はあるとは言え、流石に馬車で寝込んでいるやつの惨状までは、流石に引き起こすことはしない。
けれども、どうもその寝込んでいるやつはそれ以上の事をしでかし、相当手痛い目にあわされたようだ。
「ま、温泉都市で湯治ついでに浸かれそうなら良いか」
「ああ、それもそうだな。流石にあんな状態でこれ以上の醜態をさらす気力もないだろうしな」
「うちの国の王子だけど」
「流石にあれは無いわー。今度人事異動を願いたいなぁ」
そう愚痴を互いに話しつつ、馬車は進み、温泉都市へ向けて駆けていく。
護衛達もまさかあの馬鹿はそうやらかさないだろうと思っていたが‥‥‥‥温泉での回復力を舐めていたと知るのは、もうすぐの事であった。
久しぶりに訪れる温泉都市。
その湯の多さに驚愕しつつも、家族仲良く楽しむ。
だがしかし、嵐は案外そこにあった‥‥‥
次回に続く!!
……早々に何かをやらかす未来しか見えない。
なんにしても、今後もどうぞよろしくお願いしマス(2019/1/1)。
あ、もうそろそろシアンたちに実子を考えているけど、名前候補が多くてどうしようかと厳選中。決まったら多分近いうちに出せるかも。




