表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/459

#198 雪将軍デス

SIDE???


……どの国でも厳しい、この雪が降り積もる時期。


 こういう時だからこそ、珍しいモンスターは出現する。


 雪饅頭兎、アイスゴーレム、ブリザーバード、スノウマン……その他諸々、この季節限定なものが多く、冒険者たちは狩りに向かう。


 魔法屋は討伐を行うわけではないが、それでも兼業をしている者や、援護射撃のみで応戦する者など、意外にも戦闘を行う者もいるのだ。



……まぁ、何にしても、その大半は金稼ぎのためという本音が多かったりもする。


 




 そんな中で、今回出現したのは「雪将軍」と呼ばれるモンスター。


 多くの動く雪だるまを配下に従え、各地に出現し、暴れまわる。


 数の暴力もあり、その勢いは驚異的ゆえに、直ぐに討伐依頼が出るのだ。


 強さもそこそこあり、実力者でないと倒しづらいモンスターであるのだが…‥‥このモンスター、幸か不幸か、取れるものが案外多く、どれもが貴重な品々になる。



 その頭の兜のようなバケツは、加工すれば強靭な盾や鎧などの防具へ。


 鼻代わりに生えている巨大なニンジンのような野菜は、滋養強壮・栄養満点・色々増強な料理へ。


 体内にある魔石……ではなく、圧縮されてできた骨格のような氷は、夏場でも溶けない氷として装飾品へ。


 目のようになっているが、絶命した後は延々と燃える黒い鉱石は、この季節だからこそ需要が高い至高のお手軽暖房器具へ。



 その体からは様々な用途に使える素材が採れるがゆえに、雪将軍は出現し、討伐依頼が出ると一斉に誰もが受注し、討伐を目指す。


 生半可な実力では返り討ちに遭い、帰らぬ人になる可能性が高いとはいえ、ハイリスクハイリターンゆえに、挑む者は後を絶たないのだ。






 そして今、そのハイリスクに挑む者たちがいた。




【ヒュバアァァァァアァ!!】


「息を吸い込み始めたぞ!!」

「不味い、氷結弾が飛んでくるぞ!!」

「急いで距離を取るか、防御をしろぉぉぉぉぉ!!」


 一体の雪将軍と多くの雪だるまの配下がいる戦場にて、その冒険者パーティは彼らに戦闘を挑んでいた。


 


 実は彼ら、本当は別の依頼があったがゆえにそちらへ向かおうとしていたのだが、その道中で雪将軍を発見、いや、雪将軍に見つかってしまい、戦闘を余儀なくされたのである。


 幸いなことに、彼らは実力はそれなりにあったのだが、それでも数の暴力や雪将軍の実力には及びきらず、次第に追い詰められていた。


「くっ、これ以上は不味い!!」

「だが、周囲を雪だるま共に囲まれているぞ!!」

「突破するには、力が足りねぇ!!」


 これ以上の戦闘は不利であると判断したが、離脱ができない。


 雪将軍の配下、大勢の雪だるまたちに囲まれ、一体一体はたいしたものではないのだが、この量では対応しきれない。



【ビュバァァァア!!】

「不味いぞ!!またあいつから氷結弾が!!」

「流石にこれじゃ、防ぎきれない!!」


 もうだめか…‥‥と思っていた、その時であった。




ゴウッ!!ゴウッ!ゴウッ!!

「「「!?」」」


 突然、何かが頭上を通り抜け、勢いよく雪将軍の体へ突き刺さる。


ジュワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

【ビッギアアアアアアアア!!】


 それは強力な、炎で出来た大きな槍。


 火に耐性があるはずの雪将軍の体を突き刺し、ものすごい勢いで溶かしていく。


「な、なんだありゃ!?」

「火の槍……ファイヤーランスあたりか?」

「だが、あいつには火の耐性があるはずだが‥‥‥いや、だからか!?」


 本来であれば火に耐性がある雪将軍。


 だからこそ、火の魔法は効きにくいのだが、今回はそれが逆手になったらしい。


 貫くはずの火の槍は、その耐性によって貫通し切らず、結果として体内に深くえぐり込み、高温で攻撃することになったのだ。



「だが、今のは誰が‥‥‥」


 飛んできた方向を見て、彼らは固まった。


 先ほどまで、周囲を囲んでいた雪だるまたち。


 その雪だるまたちが宙を舞い、吹っ飛び、砕け、切り裂かれ、溶けていく。



【そりゃそりゃそりゃぁぁ!!私だって、戦えますからね!!】

「意外とやるじゃん、ハクロ!!でも僕だって負けてないよ!」

「こちらの方が、殲滅には向いてますけどネ」


 

 声がするが‥‥‥彼らがその雪だるまたちをふっ飛ばし、先ほどの火の槍を投げ飛ばしてきた者たちであると、冒険者たちは悟る。


 そこにいたのは、雪上のような白さと誰もが目を引かれるような美女と、その背中に乗って魔法を乱射して薙ぎ払いまくる青年。


 なぜかメイド服でありながらも腕に謎の武器を搭載して雪だるま共を粉砕していく女性に、それに似ているようで小さなメイドたちが各々異なる武器を持って、雪だるまたちを切断・粉砕・爆砕・泡詰めにして良く。


 どういう集団なのかツッコミどころが多いが、助かったのは事実。


「っと、見ているだけにはいかねぇ!!」

「今の隙に、こちらも攻め返すぞ!!」

「こういう時にこそ反撃の時!!‥‥‥しかし、彼らは何処かで見たことがあるような‥‥?」



 こういう時に逃げる事もできるが、それは今やるべきことではない。


 むしろ、この攻撃によって雪将軍一味の統制が崩れている今こそ、反撃の時。


 冒険者たちも力を合わせ、猛反撃へと移しだし、ものの数分で雪将軍は頭をふっ飛ばされ、見事に討伐が成されるのであった…‥‥





――――――――――――――

SIDEシアン


「‥‥‥っと、これで完了か」

【なんか、思った以上に楽でしたね】


 雪将軍の首が飛び、大地へ転がっていく様を見て僕らはそうつぶやいた。


……大路絵の雪だるまたちと、それに囲まれている冒険者たちらしい人を見つけ、戦闘に参加したのは良いのだが‥‥‥なんか、想像していたよりもあっけなかった。


 考えて見れば、先日も似たようなことがあったからだろうか?雪の女王のスノーゴーレム軍団の方が、圧倒的に強かったからね。




 何にしても、討伐は成功したようだが、ここでちょっとばかり話をする必要性が出て来た。


 僕らは冒険者ではないとはいえ、一応雪将軍討伐の依頼を受けていたからね…‥‥共同で倒したとはいえ、あの討伐したやつの素材とかを話さないとね。




 そう思い、戦闘終了してクタクタになっている冒険者たちの元へ、僕らは近付いた。


「すいませーん、ちょっといいですかー」

「あ、ああ、こちらはもう話せるぞ」


 僕らの呼びかけに対して、リーダーらしい冒険者の人がそう答えた。










「…‥‥まずは、礼を言わせてほしい。こちらは冒険者パーティ『ドゥドゥ』、わたしはそのリーダーであり前衛に立つ剣士のゴリムーチョだ」


 威風堂々、ややきつそうな鎧ながらも修練を積んでいるのが分かるような容姿のゴリムーチョさん。


 名前にもう少しいのが無いのかいと言いたいが、実力は本物のようである。


「で、他には我がメンバーの‥‥‥」


「ああああああああああああ!!思い出しましたぁぁぁ!!」


 っと、他のメンバーを紹介されようとしているなかで、一人が叫んだ。


「どうした?」

「いえ、この方たち何処かで見たことがあるなーっと思ってましたが‥‥‥会ったことがあるんですよ!!」


 何やらフードを深くかぶった人がそう叫ぶが、僕らにこんな知り合いっていたっけ?



 そうこうしているうちに、その人がフードを脱ぎ、その素顔をさらした。


「お久しぶりです皆さん!!事情があって今は冒険者パーティに入ってますが、わたくしめはモルタル商会所属、派遣商人代表のディックでございます!!」


「ディック……」

【‥‥‥あ!!】


 その名乗りで僕らは気が付いた。


 言われてみれば、前に会ったことのある人物である。



「もしかして、あの馬車のディックさん!!」

「はい、そうでございます!!」


 この世界に来て、森から出て、盗賊たちに襲われていた馬車を助けた際に知り合った人。


 結構前の事なのでほぼ忘れていたが、まさかの再会に僕らは驚くのであった。


「‥‥‥しかし、なにやら少々増えていませんか?」

「あー‥‥‥色々あってね。というか、デイックさんこそ商人なはずなのに……」


 取りあえず、互いに情報交換へと僕らは移るのであった。

まさかのパーティに、まさかの人物。

でも、商人だった人がなぜ冒険者を?

その疑問を残しつつ、次回に続く!!


……#6~7あたりに出ていた人。多分忘れている人が多いだろうけど、きちんと出すのです。半年ぶりぐらいかなぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ