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#19 豚の調理法デス:後編

本日2話目

ちょっと他者視点が多めかなぁ……主人公も不在回デス

SIDEワゼ


「…‥‥うん、あれはただのゴミ屑デス」

【そう思いたくなるのは分かりますよ。太っていてもそれなりに良い人格者とかはいるでしょうけれども、あれは完全に怠惰などに溺れた愚か者としか思えませんからね】


 フェンリル夫婦に向かって暴言を浴びせる豚男に、森の茂みからこっそりと覗き見をしていたワゼとハクロはそうつぶやいた。


「しかしながら、少々気になる事も言ってますネ。『魔王退治』って、何でしょうカ?」

【さぁ?私も聞いたことがありませんよ】


 疑問に思いながらも、今は経過観察を行うのみ。




 と、見ていたらでぶでぶ豚男はフェンリルたちの態度に激怒したようで、突進してきたが…‥‥森にはられている結界で、弾き飛ばされていた。


「おお、あそこまで肥えた人だと、綺麗にバウンドするものなんデスネ」

【なんというか、肉の塊がすごいとしか言いようがありませんよ】



 なんとなく、このまま放置でも良さそうな気がしてきたので、ワゼたちは茂みから出ずに、その様子を見続けるのであった。



――――――――――――――――――――――

SIDEフェンリル(妻)


……正直言って、ここまで愚かな人間は久しぶりに見たような気がした。


「おい!!何をしているんだ化け物どもめ!!魔王退治のために力を使い、結界を解除して我々のために働け!!」

【…‥‥呆れ果てるというか、馬鹿の極みとは、この事を指すのだろうか?】


 あ、夫が珍しく真面目な口調で語りかけた。


「な、な、このわたしが馬鹿だとぅ!!」

【いや、お前を馬鹿と言うのは馬鹿に対して失礼か。となれば、もっと良い言い方としては‥‥‥‥屑男か?】

【それよりも、見た目からしてオークモドキとかのほうがよくないかねぇ?】

【しかしだな、オークでもそれなりに知性はあって、こんな屑よりはましだぞ?】


 夫のいうことに、あたしは納得した。


 オークと言うのは、異種族のメスを利用して繁殖するモンスターでもあるが、彼らの場合は勝てないと理解したら即逃亡するという、己の実力をそれなりにわきまえているやつらでもある。


 そんなやつらに比べて、今目の前にいる屑男はあたしたちの事を化物だの色々と言って、全然逃げる様なそぶりもないし、オーク以下と言って確かに間違いないだろう。



「おい!!何をしているか!!」


 ぎゃんぎゃん騒いでいるようだが、こんな奴はもう聞く意味も価値もない。



【‥‥‥ふぅ、ここまで本当に愚かなものを見たのは久しぶりだ。その希少性の高い世に稀に見る屑男は、もう話す価値もないが、わざわざ我らが手を汚す価値もないだろう】

【要は無能すぎて存在する価値もないから、もう我々は貴様らのいう事には応じない】


 ここにいるだけでも時間の無駄だし、あたしたちは方向転換して森の方へ帰ることにした。


「待て!!この森には魔王がいるのだぞ!!倒せば確実に富と名声と」

【いい加減に黙れ、もう喋るな!!】


 流石にもう面倒になったので、あたしは自分の得意な風の力を使い、うるさい屑男の口をふさいだ。


「もがぁ!?もがもがぁぁぁ!?」


 上下から強く集中して吹く風によって、屑男の口はもう二度と開くことができないだろう。


 あたしよりも力のある者ならば、簡単に解呪できるだろうけれど……こんな屑を助けようとする者はいないはずである。



【この程度で済んだことを幸運に思うが良い。だが、もし再びこの地に訪れるか、もしくは我らのことを悪しきモンスターのように告げるのであれば…‥‥その時は、死ぬことすら許されぬ、地獄の苦しみを味合わせてやろう‥‥‥】

「も、もがびぃぃぅいぃ!!」


 少し殺気を込めて話してやると、そのとたんに豚男は泣き叫び、そのまま気絶した。


 周囲にいた他の取りまきの神官たちらしい者たちは、怯えて後ずさっている。


 なんというか、物凄く情けないおっさんであったが…‥‥まぁ、これで十分大きな心の傷ができたはずである。




 何にせよ、これ以上あのような者を目にしたくはないので、あたしたちは森の住みかへ帰るのであった‥‥‥


 あ、どうせなら子供たちも連れて来て、あれがよくない大馬鹿すぎる人間の例だと教える教材にできたかもしれない。


 そう考えると、教材と言う価値ならば、あったのかもしれないな…‥‥まぁ、良いか。



―――――――――――――――――――

SIDE口が開かなくなったぶ神官マブージュル



……マブージュルが意識を取り戻した時、そこは何処かの宿の中であった。


 どうやら彼の取りまきであった他の神官たちが運んでくれたらしいが、どうも何かが変だ。


「もがっ、もがががかっつ!!」


 口を開いて尋ねようとすれば、上下からものすごい圧力がかかり、マブージュルは話せなかった。


 その様子を見て、その他の神官たちはマブージュルに対して、ある処分を決定した。



「‥‥‥なぁ、マブージュル。我々は独断で魔王を悪と決めつけ、勝手に乗り込もうとしたが、フェンリルによって撃退されてしまったことは分かるか?」

「もがっ、もがががっつもががあ!!」


 取りまきであった、一人の神官の問いかけに対して、撃退されたその時の記憶があるのか、マブージュルは怒りの声を出せないがもがもがと憤怒の意志を伝える。


「なるほど、きちんと覚えているようだな」

「もががーっつ!!もがー!!‥‥‥もが?」


 その言い方は何だと言っているかのようにもがもがとマブージュルは動くが、神官たちは冷めた目になっていることに気が付き、マブージュルは嫌な予感を覚えた。



「ああ、お前は我々がいつものように持ち上げる反応をしないことに気が付いたのか?まぁ、そうだ。実は我々はお前のためだけに集められた、仮の取りまき神官」


 なにやらニヤニヤとしながら、別の神官が口を開いて説明をし始める。


「お前のように、神官としての義務を果たさず、怠惰にふけり、魂が穢れた者に対して派遣され、穢れを無くすどころか‥‥‥より濃い穢れに昇格させるために、動いてきた。それがどういう意味なのか……わかるな?」


 どす黒い笑み浮かべ、別の神官がした説明に、マブージュルは嫌な汗をドバドバとかき始める。


 これ以上この場にいて、その説明を最後まで聞いてしまったらどうなるのか、本能的に悟ったのだ。



「もがぁぁぁ!!」


 これ以上いるのは絶対不味いと思い、離れようと動くマブージュル。


 だが、気が付けばいつの間にか手足が拘束されており、身動きが取れなくなっていた。


「もがががっつ、もがぁぁぁあっつ!!」

「まぁまぁ、そう暴れるな。遅かれ早かれこうなる運命は決まっていて、お前はいずれこうなることになっていたんだ。まぁ、ちょっと時期が早まったがな」

「そうそう、その衣服に古代語で書かれている意味を知らないで、自分だけ何か特別だと勘違いしていた様は笑えたが…‥‥まぁ、あながち間違っていなかっただろうな。ただし、良い意味ではないが」

「書かれていたのは‥‥‥『豚肉予備軍』。その体形ゆえにそうなったが、今からはもう違う」



「そう、神獣を罵倒し、予言者様の言葉も中途半端に聞きかじり、己の都合のいいように解釈し、欲望のままにうごいたお前は‥‥‥もう、予備軍でもない」

「調理される側になった、哀れな一匹の豚だ」

「さぁて、これ以上暴れられても困るし、ぐっすり寝てもらおうか。ああ、安心しろ。お前がいなくなったところで、別の方が新たな神官になるからな」

「今回はお前が特に良いと目を付けられて、丁寧に育て上げられたし…‥‥出荷ということで‥‥‥」

「もがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 マブージュルは泣き叫び、必死になって逃れようとした。


 だがしかし、神官たちが彼の口は閉じていたので鼻に何か怪しい薬をぶち込み、そこから意識を失った。


 そして、闇夜に紛れて神官たちはマブージュルを適当な箱に押し込み、えっさほいさっと運びながら、彼らの国へ帰還するのであった‥‥‥‥



―――――――――――――――――――――――

SIDE騎士団長と魔導士



「…‥‥なぁ、魔導士長。今さ、明かに我々は隣国の闇を見たような気がするのだが、どうしようか?」

「…‥‥そうだな、騎士団長。我々は何も見なかったことにすればいいのではないだろうか?」

「そうするか……」


 マブージュルが眠らされ、運ばれていく様子を見て、隠れて覗っていた騎士団長と魔導士長は互に見なかったことにした。


 隣国の神聖国ゲルマニアの濃過ぎる闇を垣間見て、マブージュルの末路を考えたくなかったのである。




「そう言えば、昼間のあいつらが森でドタバタ騒ぎを起こしたが、神獣フェンリルに対しての行為の影響が、こちらに及ぶとも限らないし、国王陛下に報告しておくべきだろうか」

「いや、あれはもう切り捨てているだろうし、隣国に対して文句を言えないだろう。となれば、我々だけでどうにかした方が良いのではないだろうか?」

「それに、そういえば魔王がでたとかどうとか言っていたが…‥‥我々が調査した時に、あのフェンリル殿は何もないと返答したはずなのだが…‥‥」

「そう言えばそうだな。神聖国の予言は当たると聞くし…‥‥もしかすると、騎士団長、お前たちが調査した時にはすでにその魔王と呼ばれる存在が去っていたかもしれないし、別の不味い可能性としては‥‥‥フェンリルそのものが既に配下にいて、嘘をつくように命じられているかもすれない」


「…‥‥それって、色々と不味くないか」

「ああ、そうだな」



 事態が何やら不味そうな方向へ向かおうとしていることに、彼らは強烈な不安を覚えた。


 とりあえず、明日辺りにでも向かってみて、あの馬鹿豚神官のせいでフェンリルの機嫌が悪くなっている可能性があるので、何かで機嫌を取って、調査をさせてもらおうかという意見で一致するのであった。


ああ、豚肉はどうやら時期を早めて出荷されるようだ。

もう少し成長させてしまおうかと思ったが、今回の件で一気に育ってしまったようだ。

何にせよ、愚か者だけが喰われるのは…‥‥あれ?別に悪くもないな。

次回に続く!!


……取りまきたち、案外しっかりしていた。

いやまぁ、そりゃそうか。下手すればわが身になる可能性があるし、しっかりと愚か者は愚か者として育てた方が良いもんね。

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