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#189 自分が一番のとばっちりを受けている気がする森デス

「ああああああがあああああああああああああああああああ!!」


 咆哮をあげるとともに、女王リザの周囲に無数の氷の塊が現れ始める。


 いや、ただの塊ではない。雪だるまのようにも見えるが、手足があり、動き始める。


 ゴーレムの一種、アイスゴーレムのようなものを簡易的に作り、先導して襲わせ始めてからこちらhの手の内を見るようだが‥‥‥‥そんなもの、こちらからすれば烏合の衆。



「むしろ大群の方が、ぶっとばしやすい!!『フレイムストーム』!!」


 猛吹雪の中と言えども、魔法が使えないわけではない。


 体を軽く温める役割としての意味も持たせ、炎の竜巻を発生させ、ぶつけていく。



 本来であれば、森の中での火の魔法は色々とNGだが、この吹雪で凍結している今ならば関係ない。


 連射し、猛烈な業火の炎でアイスゴーレムたちが溶けていくが…‥‥



「ああああああああああああああああああああああああ!!」


「…‥‥溶かしても、すぐに戻るか。しかも、溶けた氷の水を利用して消火もか」


 自ら火に突撃し、消火を試みるアイスゴーレムたち。


 そして、その隙間を潜り抜けてすすんでくる者たちもいるが…‥‥そうやすやすといかないのはこちらも分かっていることだ。


「ワゼ、シスターズ!!一斉攻撃!!」

「了解デス!!」

「ツ!」

「ス!」

「ファ!!」

「シー!!」

「セセー!!」


 それぞれ武器を構え、アイスゴーレムたちを駆逐し始める。


 合体フォルムで一掃することも可能だが、フィーアがいないので対軍の奴にはなれない。


 けれども、個々での戦闘力は目を見張るものがある。




 機関銃の連射で穴だらけ、モーニングスターによって粉砕、火の魔法によって融解し、鞭でしばき倒されていく。


 大多数対数人程度の勢力とは言え、現状は拮抗状態。


 だが、あの暴走をどうにかしない限り、動かない。


「ハクロ、用意!」

【了解です!】


 ハクロの背中に乗り、雪の女王目掛けて駆け抜け始める。


 本当は、彼女にこの場から避難してほしいが‥‥‥‥それでも、共に戦う選択をしてくれた。

 

 ならば、彼女を傷つけないためにもできるだけ早く戦闘を終わらせる!!



「ごがああああああああああああああああああああ!!」


 シアンたちの接近に、雪の女王は気が付いたのか、アイスゴーレムたちを精製する傍ら、大きな氷塊をぶつけ始める。


 直撃すれば、それこそ重傷を負うだろうが…‥‥雪原ができ、浅くなってしまったが、ここは森の中。


 ならば、こういう立体起動は‥‥‥‥彼女(ハクロ)の独壇場だ。




【よっと!はっと!!ひょへっと!!当たりませんよー!!】


 糸を駆使し、伝わりつつ、飛ばし手繰り寄せ、切断し繋げ直す。


 縦横無尽に移動するハクロの軌道は読みづらく、相手の氷塊が当たらない。


 苛立ってくるだろうが、ここを戦場に選んだ雪の女王の方が悪い。



「そして砲撃開始!!『フレイムボム』!!」


 相手が氷塊ならば、こちらは火球。


 いや、そこにさらに爆発するだけの威力を加え、ぶつかり合うと同時に爆散し、氷塊を消し飛ばす。



「そんでもって、これだけじゃらちが明かないから…‥‥ワゼお手製『物体X拡散弾』発射!!」


 ポケットの中に入れた小さな塊、凶悪な物体Xの濃縮体という物をつかみ、雪の女王目掛けて投げていく。


 一つでも口に入れば、即ノックアウトは間違いないそうで、既にポチで実験済みらしい。


 魔法でかく乱させつつ、これを投入できれば無傷で取り押さえる事も可能だろう。




 とはいえ、そう都合よく当てさせてくれないところを見ると、やはり中々難しい。


「やっぱり一撃でも当てて、動きを止めないとだめか‥‥‥‥」


 

 集中攻撃を仕掛けようにも、あのアイスゴーレムとか、吹き荒れる吹雪のせいで狙いが付けにくい。


 ならば、動きを止めてしまえば良い。



「だったまずは、『バブルパレード』!!」


 大量の泡を発生させ、周囲一帯に広げていく。


 アイスゴーレムたちも、雪の女王たちも巻き添えにし、泡まみれにする。



 ぱちんぱちっと泡が割れていくが、水をただ撒くよりも攻撃を分散させつつ、割れた周囲の相手にかかるし、これならばうまくいくだろう。


「一気に痺れてしまえ!!『サンダーボルト』!!」



 どおおおおん!!っという音と共に、電撃を放ち、はじけた泡の水分で伝達し、広範囲に広がっていく。


 アイスゴーレムで有れば電撃で砕け散り、生き残っていても、他のアイスゴーレムたちの破片が当たり、壊れていく。


 そして雪の女王相手には、この電撃によって感電させ、その動きが・・・・・・・・




「ごあああああああああああああああああああ!!」

「電撃を氷壁で防ぐか!!」


 濡れているはずなのだが、瞬時に凍結させ、砕き、感電を防ぐ。


 暴走している状態とは言え、戦闘に関する理性‥‥‥いや、この場合本能的なものは強く残っているようで、うまいこと行かなかった。


「ざあああああああああああ!!」


 咆哮をあげ、こちらへ向かって無数の氷弾を飛ばしてくる。


 つららのような形状のものから、散弾のようなものまで、数多くの攻撃。


 当たらぬのであれば、当たりやすいように変えてきたのだろう。



「ちょっと不味いな、木々も砕いていくのか」

【これじゃ、糸のかけようがありませんよ!】


 ハクロの立体起動を封じるためか、木々すらもまとめて砕き、こちらの機動力を奪ってくる。


 撹乱しつつ接近という戦法は、これでは取れない。



「電撃もダメ、撹乱もダメとなると‥‥‥接近戦の方が良いか」

「ああああああああああああああああああああ!!」


 猛吹雪が吹き荒れ、視界がだんだん悪くなってくる。


 この調子だと遠距離からの狙撃も不可能になるだろうし、懐へ潜り込んでいくしかあるまい。




「とりあえず、接近して…‥‥殴ったほうが早い!『アイスガントレット』!!」


 相手が氷だろうが、こちらも氷を扱える。


 巨大な氷の拳を作りあげ、装備する。


「からの、『ロケットボム』!!」


 ハクロから飛び降り、後方で爆発を起こさせ、その爆風でシアンは自らを吹き飛ばし、一気に雪の女王へ接近した。



「ごああああああああああああああ!!」


 雪の女王の方も、シアンの接近に気が付いたのか、無数の氷弾を連射してきた。


 だが、こちらの巨大な氷の拳はそのまま盾にもなり、うんともすんとも答えない。



「飛ばせ鉄拳、いや、鉄じゃないけど細かい事はどうでもいい!!」


 ぐぐっと氷の拳を握り締め、火の魔法を後方へ噴射させる形で発動させ、さらに勢いを増す。



「ぎゃごあああああああああああああああああ!!」


 氷弾が効かないと理解したのか、あちらも迎え撃つためにか同じような氷の拳を作り上げる。



ごっっつ!!


 互いの氷の拳がぶつかり合い、周囲にその衝撃波が広がっていく。


 吹雪が吹き飛び、木々が吹っ飛び、力が拮抗する。



「ぐぎぎぎぎぎぎぎ!!」

「ごああああああああ!!」


 雪の女王の方が、氷の魔法という点では本家本元というべく上回っているのかもしれない。


 硬度も大きさも、あちらの方が上のようだが‥‥‥‥それでもこちらも砕けるようなものではない。


「いい加減に、大人しくしやがれ雪の女王!!いや、ロール!!」

「ごあっ!?」


 その言葉に、一瞬だけ反応したらしい雪の女王。


 ほんのわずかに緩んだその隙を、シアンは見逃さない。



「『アイスボム』!!」


 氷の腕を爆破し、相手もろとも巻き添えに吹っ飛ぶ。


 シアン自身もダメージを負うが、ある程度考えて指向性を持たせるようにしたのでそこまででもない。


 至近距離での突然の爆発に、雪の女王はひるみ、動きが止まる。



「今だ!!」


 残っていた物体X濃縮体をつかみ、その口へめがけてありったけの量をシアンは投げ込んだ。


 どれか一つでも入ればいいと思っていたが、思っていた以上の量が雪の女王の口の中へ入った。




「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 そのあまりの味のひどさゆえか、この世のものとは思えないほどの絶叫が響き渡り、そのまま雪の女王はその場に倒れ込む。


 それと同時に生み出されていたアイスゴーレムたちの動きが止まり、崩壊していく。



 吹雪がやみ、周囲の状況が鮮明に見えるようになっていく。


 そしてそれと同時に、至近距離でのその絶叫に耳をやられて、シアンもその場に倒れ込むのであった…‥‥



ようやく収まった、大暴走。

されどもその犠牲は、それなりに出ていたようだ。

何にしても、暴走が収まったのは良いが、彼女の人格は‥‥‥?

次回に続く!!


……物体X濃縮体:物体Xに100万倍の圧縮をかけ、口内で瞬時に溶けるように設計された凶悪な代物。

固形状の物は前にも作ったが、それをさらに改良して生み出された。いや、この場合は魔改造なのか?

実験台によるコメントによれば、命を奪いかねない禁忌レベルらしい。

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