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#169 ド直球ドストライクなのデス

SIDEシアン


【ああ。私は話を分かりにくくするのも苦手だから、単刀直入に問う。‥‥‥ララが感じていたらしいが、お前がもしかして、今代の魔王というやつか?】

「‥‥‥っ!」


 ルルからのド直球な其の質問に対して、僕は茶を吹き出しかけつつ、何とかこらえた。


 魔王……それは、前にも僕に向けられたことがある言葉。


 神聖国のトップである預言者と名乗る人物が、僕に向けて投げかけた言葉でもある。

 

 

 その問いかけに対して、どう答えたものかとしばし考え…‥‥ごまかしようのない事だと諦め、僕は回答した。


「‥‥その返答としては、多分正解と言って返したほうが良いのかもしれない」

【多分?】

「いやまぁ、指摘されただけでまだ確定事項ではないようだけど…‥‥」


 こうい時の説明は苦手なので、ワゼに説明を代わってもらった。



 以前、神聖国の預言者と話す機会があった。


 そして、その話し合いの場にて魔王じゃないかと言う言葉をかけられた。


……確定ではないというのは、まだ魔王らしい部分が目覚めていないとか言う話らしい。



【‥‥‥なるほどなぁ。でもな、言ってなんやけど‥‥‥えっと、団長の妹のつがいさん】

「あ、シアンです」

【そうそう、シアンさんとやら、多分、それはもうすぐになっていると思うんやけど】

「‥‥‥え?」


 その言葉に、僕はあっけにとられた。


 いや、そもそもの話として…‥‥


「あの、ララさんでしたっけ?ルルさんの話を聞くと僕の事が魔王かもしれないという疑問は、貴女が感じたとかさっき言ってましたけど…‥‥何をどうやってそんなことを感じているんですか?それに、もうすぐとは‥‥?」

【ふむ、うちとしてはかなり昔の話なんやけどな…‥‥】


―――――――――――――――

SIDEララ


……今から数百年ほど昔、とある魔王が存在していた。


 その魔王は善中悪のどれかと言えば、悪だったようで、当時物凄い猛威を振るっていたのだ。


 幹部たちを従え、あちこちで破壊喝を行い、暴れに暴れまわっていたのである。




 当然、そのような横暴を許さない人たちはおり、何度も立ち向かおうとしたのだが相手の力が圧倒的過ぎて勝負にならなかったらしい。


 そんな中で、当時すでにデュラハンとなっていたララ……名前はまだ持ってなかった時だったそうだが、興味がわいたらしい。


 正義感とかではなく、純粋に強者との戦闘を求めたのである。




……結果としては、どちらかと言えば相打ちに近い形だった。


 両者ともにズタボロになり、ひとまずは勝負はお預けという事で、その場を互いに去った。


 その後、その魔王の方は別の誰かに討たれたという噂が流れたが、その敗因の大きな要因は、おそらくララとの戦闘時の傷が癒えていなかったが故の敗北である予想できた。



 それほどの傷があった戦いゆえに、当然ララ側にも代償はあった。



―――――――――――――――

SIDEシアン


【‥‥‥ひどい傷になったのはこちらも同じでな、ある程度は癒えたんやけど、致命的な部分が壊れてしもうたのか、今では実力は当時の3分の1も出せないんや。でもな、その代わりに得たものがあったんや】


 当時の実力の3分の1もないのに、それで昨日の試合なのかとツッコミを入れたいような気もしたが、今は別の事だ。


「その得たものとは?」

【なんとなくなんやけど、魔王に関して、もしくはそれに準ずるものを感じるようになったことやで】


 要は、魔王の関係者の類とか、その持っていた物とか、あるいは過去の別の魔王の残滓とか、そういったものを感じ取れるようになったらしい。


【何十年も各地を巡って、ついでに残っていた残党も潰しつつ、感覚の正体をそうと断定したんや。まぁ、この感覚を得た原因としては、やはりその当時の魔王との戦闘やろうなぁ。前は無かったんやし、これはこれで便利やったしな】

【便利って、それのどこがなのでしょうか?】

【魔王の関係者というのは、大抵とんでもない実力者が多いから、見つけて挑みやすかったんや。魔王がいなくなれば隠居していたりするんやけど、頼み込んで武者修行もした日々はなかなか良かったんやで】


 とは言え、いつまでも放浪しているわけにもいかないし、そのうちに武者修行を一時的に切り上げ、騎士団へ入団して今に至るらしい。




 とにもかくにも、僕に関してどうして魔王なのかと聞いた原因は、これでよくわかった。


「って、それだと確定で魔王とは言えないような‥‥‥」

【いや、言えるんや。準ずるものとは違う感じがするし、どちらかと言えば数百年前のあの魔王に近い感覚‥‥‥むしろ、実力だけならばそれ以上のものを感じるんや】


 僕の言葉に対して、真剣なまなざしでそう答えるララ。



【あの魔王は悪だったがゆえに、警戒すべきものやったけれど……こうして相まみえて良く分かったわ。あんたはその悪とは違う。とは言え、善とも言い難いような感じや】

「悪ではないとは思うけど‥‥‥善でもないのか」

【まぁ、単純に言えば中立な立場なんやろうな。これでも人を見る目ぐらいはあるし、相手がどのような者なのか、ようわかるんや】


 悪ではないけど、善でもないと言う言葉には苦笑しかない。


 まぁ、大体僕の場合は今の生活を荒らすような相手には力を振るうけど、それ以外は当事者同士でやってほしいと放置するからな…‥‥間違ってもないな。



【まぁ、白チビこほん、妹のようなハクロがつがい相手として選んだのであれば、文句はない。副団長から聞いたときは、不安もあったが…‥‥悪で無いのであれば一安心というべきだろうか】

【そうやね。まぁ、その辺も大体予想していたんやけどな。とは言え、ひとつ懸念事項も出たんやけど‥‥‥】

【何かあるのでしょうか?】

【ん、あると言えばある事や。魔王関係の発表は大抵の場合、神聖国の預言者とやらが出すんやけど、それは大概国の上層部にしか知らされへんようなトップシークレットというべき情報や。基本的に漏れ出る事もないし、うちらもこの件に関しては偶然知ったけども手に出す気もない。けどな、これだけは覚えておいたほうがええで】


 ずずいっと顔を僕らに近づけるララ。


【基本的に、魔王なんてものはどの国でも出来るだけ不干渉を貫き通すことが多いんや。今はもうだいぶ忘れ去られているけれども、それでも手を迂闊に出すような真似はせえへん。何故かわかるかいな?】

「‥‥‥手を出して、滅んだところがあるからか?」

【そういうことや。その記録もだいぶ薄れているとはいえ、他の国々の暗黙の了解のようなところが多いんやで。まぁ、魔王の中には良い者もおって、付き合い方次第で物凄い栄えた国もあったんやけど、その逆に滅びた国もある。ゆえに、相手からの接触があった、もしくは本当に偶然接点を得たときぐらいにしか、魔王にどう対応するかわからんのや】


 本当に、人為的なものも特になく、偶然で遭遇し、関係を築けるのであればいい。


 だがしかし、滅びた国の話もあるというのに、世の中には自分だけは大丈夫と考えるような輩もいるのだ。


【そしてそんな輩の中には、思いっきりやらかす者たちもいるんや。だからこそ、身の回りの安全には注意したほうがええで。歴代の魔王の中には、そのやらかす奴のせいで家族を失い、善・中立から悪へと移し、世界を終焉に向かわせようとした奴もいるぐらいやしな】


 その忠告は、当り前のようだけど、本当に真剣に考えるべきことのようで有った。


……いやまぁ、わからなくもないが、なんでそんなことをやらかす人がいるのかが理解できないなぁ。





 何にしても、話はここで切り上げる事になった。


 というのも、ヴェールヌイ騎士王国へ旅立つ時間が近く、準備をする必要があるらしい。


 魔王に関しての情報もある程度収集できたので、僕らとしては今回の親善試合・首都観光は、中々実りあるようなものであると想えたのであった…‥‥。


「‥‥‥でも、善・中立から悪にか……ワゼ、一応身の回りの安全とかって僕ら十分できるよね?」

「ええ、現状は大丈夫でしょウ。ですが、油断しないほうが良いと思われマス」


……ちょっと、今回の忠告にも考えさせられることもあるし、何か安全対策でも取っておいたほうが良さそうだな。



気になる忠告を受けつつも、いつもの日常へ戻るシアンたち。

とは言え、安全対策も真面目に考えるべきかと思い、ちょっと検討することに。

護身術とか、安全対策グッズとか、やってみる価値はありそうかな?

次回に続く!!


……さらっと発言されているけど、3分の1も出せない状態でミニワゼシスターズの合体に勝利を収めているってなんかすごいな。それでも鍛えて居る分なんとか戻ってきているんだろうけれども‥この話を聞いて、ワゼも色々とやらかしそうな予感がする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 善、中立ばかり寄ってくるならともかく悪ばっか寄ってきたらうざい上に身内にチョッカイだされたら滅びろってのもわかるな(笑)
2020/07/29 14:36 退会済み
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