#141 面倒な対応デス
SIDEシアン
…‥‥以前、訪れてきたファイスという人物。
翼もあり、性別不明であり、うさんくさく、謎が多い相手。
そんな相手から届いた手紙は、数日後に都市アルバスの指定された喫茶店で話をしたいというものであったが‥‥‥‥
「どうかんがえても、面倒な予感しかしないな」
【そうですよね、あのような人はちょっと油断ができませんもんね‥‥‥かぷり】
僕の手をとって甘噛みしながら、ハクロはそう返答する。
「私的にも、油断できない相手デス。情報も集まりにくいですし、何者なのかまで推測しにくいですからネ」
ワゼの情報網でも、かかりにくい相手らしい。
それほどの相手となると、ここは迂闊に話し合いに出ないほうが良いのか…‥‥いや、むしろこの機会にこそ調べる隙はあるのか。
「…‥‥そう考えると、応じたほうが良いな。でも、万が一があったら怖いし……ミニワゼシスターズも共に来てもらう方が良いかな」
「了解デス。全員、臨機応変に対応可能にしておきましょウ」
万が一の不味い事態になった時に備え、戦力はあったほうが良い。
まぁ、オーバーキルな火力でもあるが…‥‥油断できない相手であれば問題はない。
むしろ、これで足りない何て可能性もあるし、全力を出さずに死んだらそれはそれで後悔するからね。
「っと、後にある問題としては…‥‥」
とりあえずの対応策が出来たのは良いとして、まだ残る問題…‥‥ハクロへ僕は顔を向けた。
「ハクロ、まだ収まらないの?」
【はむ、全然収まっていません】
カプカプと甘噛みし、吸いながらハクロは答えた。
ハクロの捕食本能、人に見られたらあらぬ誤解を受けそうだし、人前に出るのであればどうにかしたいところだが…‥‥現状、良い解決策はない。
いったん離れてみたが、どういう訳かいつも以上に勘が鋭いのか、それとも身体が勝手に動くのか、すぐに僕の場所を見つけ出し、甘噛みを仕掛けてくるのだ。
指定された期日までに本能が無事に収まってほしいところだが…‥‥この様子だと、まだまだ続きそうである。
【じゅるる‥‥‥‥この調子だと、1週間以上になりそうですよ……】
吸いながら、ハクロはそうつぶやいた。
「うーん、できればこういう怪しい相手の元へ、ハクロとともに行くと危険性もあるから、なんとか収めておきたいんだけど…‥‥ワゼ、やっぱりどうにかできない?」
「…‥‥データ収集も思わしくありませんので、いくつかの不確定な提案しかできませんが、よろしいでしょうカ?」
「ああ、不確定でもいいから頼む」
なんとか収められそうな方法があるならば、試してみたほうが良い。
そう思い、ワゼの発案をいくつか聞くことにした。
「まず、挙げられる案としては、1日好き勝手に完全にハクロさんの自由にさせて、思いっきりご主人様が食べられることデス。本能のままに満たせば早く収まる可能性がありますが…‥‥現状維持のようなものですから、根本的な解決にはなりまセン」
「確かに、今とあんまり変わらないもんね」
現状のままでもいつかは収まるが、何も解決しない。
「次に考えるのであれば、断食もとい断ご主人様食ですカネ。柱などに縛り上げ、痺れ薬で動けないようにしつつ、収まるまで絶たせることデス」
依存症の治療方法のようなものであり、効果もありそうだが…‥‥
【でも、本能のままに動いて無理そうですよ。というか、痺れ薬で動けなくなるとか、ちょっと物騒です……ああ、なんか電撃のトラウマに近いような…‥‥】
「ええ、寝ていてもご主人様のところへ向かえてますし、意味はないデス」
寝ながらにして僕の元へ向かえるので、ちょっとやそっとの拘束では無駄としか言えないようだ。
というか、ハクロのトラウマを掘り起こしただけのような気がする。
「最後にもう一つありますが…‥‥個人的に、これはどうかと思えるような、微妙な案デス」
最後の案を出した時、ちょっとワゼは珍しいような表情を見せた。
なんというか、あまり考えていないというか、微妙というか、一発成功すればいいような……投げやりっぽい感じの表情である。
「というと?」
「捕食本能は、いわばアラクネの欲求不満が原因という説もありマス。成熟したての頃の時期なのでどちらかと言えば性的な面でのことも考えられますし、ある程度解決方法としてはこれが正しいのかもしれまセン」
「…‥‥あ、なんかわかったかも」
そこまで言われて、ワゼが何を言おうとしているのか、僕は理解した。
「ご主人様は理解したようですネ」
【え?どういうことでしょうか?】
僕が何かを察したことを理解したのかつぶやくワゼに対して、内容を読み取れないハクロは首をかしげる。
「いや、でもまだ清い感じで……」
【?】
「…‥‥ご主人様がそうおっしゃるのでしたら、この案は無かったことにしても良いでしょウ。ですが、こんなことを言うのもなんですが…‥‥それでしたら、こちらで押しマス」
そう言うと、ワゼは何かを企んでいるようなそぶりで、そのまま退室したのであった。
【一体、何をする気なのでしょうか…‥‥?】
「何をする気なのかはさておき、ちょっと身内の方で警戒したほうが良いかも…‥‥こういう時のワゼって、絶対に何かやらかすよね」
ハクロのように失敗などをするようであればともかく、ワゼに限って言えばそれはあり得ない。
確実に成功するような仕掛けを施しつつ、こちらに悟られないように誘導し、動いてくる可能性がある。
…‥‥まぁ、大体の予想が付くが…‥‥望んでいないことでもないし、将来的にあるかもしれないことだからまだいい。
でも、絶対にそれ以上の事をやらかす気満々なようにしか、僕は思えなかったのであった‥‥‥‥
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SIDEドーラ
【シャシャーゲッゲ、ゲッゲッゲゲー♪】
庭にて、ドーラは気分良く歌を歌いながら畑作業と花壇の整備を同時並行して行っていた。
前まではどちらか片方に集中しかできなかったが、ここ最近になってようやく蔦や葉っぱ、根っこなどを工夫して使用することによって作業量を増やすことが可能になり、よりよい土壌にしつつ、植物の生育をさらに向上させることが出来るようになってきたのである。
花壇の花も、少しづつ増やしていき、畑の方も作物の種類を増やし、更に品種改良にも手を付け始めていた。
【シャシャ~ゲー♪シャシャ~ゲー♪シャシャンガーシャゲット♪】
いつものシャシャ口調にちょっとだけ新しい言葉が混ざりつつも、作業をこなしていくドーラ。
そんな時に、ふと影が差した。
【シャゲ?】
「作業中、失礼しますねドーラ」
その影の主を見れば、ワゼがそこに立っていた。
「実は少々話がありまして…‥‥以前から計画していたことを、今晩実行しようと思いますが、どうでしょうカ?」
【シャゲ、シャゲ!】
ワゼのその言葉に対して、準備はできていると返答するドーラ。
互に協力しつつ、その計画を成功させるためにいったん作業を中断し、ワゼと共に家の裏に向かう。
そこにはいつしか作られていた隠し扉があり、くぐると地下へ続く階段があり、ワゼたちはそこへ足を踏み入れるのであった…‥‥‥
対話の前に、何か確実にワゼたちによる企みが起きそうである。
ドーラも関わっているようだが、シアンたちはその事を知らない。
げに恐ろしきは、身内なのであった…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥何気にドーラも積極的にワゼに関わっている。どうも結構仲がいいっぽいけど、悪だくみで組ませてしまったらかなり不味いんじゃないかな?




