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#139 ちょっと調べてみたのデス

SIDEシアン


【はむぅ……】


 捕食本能とやらがハクロに出た翌日、朝起きて早々、ハクロが手にガプリとかみついていた。


【ううっ、我慢したいのにどうしてもぱくっとしてしまいますよ…‥‥}


 そう言いながらも、僕の手を取ってハムハムと甘噛みするハクロ。


「どうしようもなさそうだし、別に気にすることはないんだけど…‥‥」


 あえて言わせてもらうならば、結構くすぐったい。


 舌とかも使って舐められ、魔力も吸われているので脱力感も少々ある。



 まだまだ本能は収まらない様なので、とりあえず今日は外出しないことにした。


 人前でこれをやらかしたら、あらぬ誤解を受けかねないし、こういう時に森の中暮らしは役に立つ。



 堕落はしないためにも、とりあえず今日は魔法の鍛錬をすることにしたが‥‥‥‥


【かぷぅ】

「ハクロ、頭を丸かじりだけはやめて」


 手で魔法を扱っていたら、食べにくいと判断したのか抱え込まれ、頭を噛まれた。


【すみませんシアン、ちょっと我慢できなくて…‥】


 魔力も吸われているようで、いつもよりも魔法が出にくいというか…‥‥ん?


「あれ?てことはハクロって今、僕の魔力を食べていることになるよね?」

【そうなりますね、がぶぅ】


 尋ねている合間にも、隙あらばという感じで僕の手を取って甘噛みをして返答するハクロ。


「魔力を食べて、お腹を壊したりしないの?」

【流石にそれは無いですよ。シアンの魔力ですし、身体に悪いもいのではないはずです!あ、でも……】


 そこでふと、ハクロが何か言葉に詰まった。


【‥‥‥あえて言うのであれば、これ、本能が落ち着いた後でもやらかしそうです】

「どういうこと?」

【なんというか、シアンの魔力が非常においしくて……いえ、魔力に味があるのかどうかは色々と食べている私自身も良く分かりませんが、言葉にすると病みつきになりそうな味なんですよ。体に不思議と力がわきますし…‥‥ほら、いつもよりも糸の質が良い感じです!】


 即興で糸を出し、一着の衣服を目にもとまらぬ速さで作り上げたハクロ。


 その衣服の質を見せてもらったが、素人目で見ても分かるほど、かなり上質なものである事がうかがえた。


「ふむ、僕の魔力が影響しているのかな?でも、普段のハクロの糸もかなりのものだよね?」

【ええ、ですが感覚的にシアンの魔力も練っているので、普段のものよりも倍以上は良い感じですよ】


 魔力も食べているが、その魔力はお腹の中にたまらずに、糸にして排出されているのだろうか?


 だが、糸から出る僕の魔力は、ハクロが取り込んだ量よりも少ないように思われる。


 やっぱり彼女の中にとどまっている可能性があるが‥‥‥‥どう影響を及ぼすのかはわからない。




「一応、健康診断もそろそろだったし、そっちで結果待ちか」


 年に数回はあるらしい、使い魔の健康診断。


 ハクロは僕の使い魔として登録してあるので、その健康診断に出る義務があり、その時に何か異常があれば見つかるだろう。


 

【あむぅ……かぷぅ】


 再び甘噛みするハクロを見ながらそう思いつつ、とりあえず本能が収まるまで好きにさせれば良いかと思うのであった。




――――――――――――――――――――

SIDEワゼ


「…‥‥なるほど、やはりそう簡単に集まりませんカ」

「ツ」


 報告しに来たミニワゼシスターズたちの情報をまとめ、ワゼはそうつぶやいた。


 ハクロの捕食本能についていろいろと調べ直してみたのだが、たいした成果が無かった。


 


 そもそもの話として、通常のアラクネのデータ自体が少ないのだ。


 何しろ、ハクロを見ていると信じがたいが、通常のアラクネは非常に残忍、冷徹、冷酷などと言われており、進んで調べようとする者はいない。


 HWGという組織もできているので、そちらの方でも調べてもらったところはあるが、やはり研究が進んでいないのが現状であろう。




…‥‥と言うか、第2、第3のハクロがいないかどうかという事で、自ら死地(アラクネの群れ)へ向かい、数日後には紐のようになっていたという話もあった。


 勇気ある馬鹿なのか、それとも欲に目がくらみつつ愛を捜し求めた戦士とたたえるべきなのかわからない。


 ただ一つ、この調査の例などから見ても分かるように、そもそもハクロのような亜種がいる可能性が非常に低いのだ。


 いや、むしろハクロのようなアラクネがいること自体、珍しすぎる例と言えよう。


「通常のアラクネとそもそも違う点が多すぎますし、ハクロさん自体が謎だらけですカ。‥‥‥彼女のいた群れを討伐した冒険者の末路などもついでに集まりましたが、これは関係ないですネ」

「ファーファ」

「ええ、確かに色々とおかしいデス。それに‥‥‥‥」


 ハクロのような存在はさておき、その捕食本能で魔力を食べる事が出ているという点で、一つ気になる事があった。


 シアンの魔力は人間では考えられない量の膨大さがあり、ハクロが食べていてもあまり問題はない。


 ただ、その魔力の影響をワゼは考えていた。


「私もご主人様の魔力で動きますが、それはあくまでメイドゴーレムとしてエネルギーにして稼働しているようなものであり、影響はさほどないデス、ですが、あくまでゴーレムとしてですし…‥‥ハクロさんのような、モンスターが捕食した場合が分かりませんね」


 ワゼの場合は稼働するエネルギーに変えられるが、ハクロは生きたモンスターだ。


 魔力そのものをエネルギーに変えるとしても量的には余るだろうし、糸に混ぜ込んで排出しても体内に残っているらしい。


 では、その残った魔力はどう影響を与えるのか。


 その観点から情報を集めてみたが‥‥‥‥こちらはこちらでわからないことになっていた。


 


 他者の魔力をモンスターが得た場合、どうなるかについては色々と過去に研究もされていた事例があったのだが、その結果が多種多様。


 拒絶反応で死亡、魔力で自ら強化、進化、眷属化、巨大化、縮小化…‥‥その他諸々あり過ぎて、ハクロであればどのような結果になるのか推定しにくかったのである。


 まぁ、死亡してはいないので拒絶はないようだが‥‥‥‥むしろ、スムーズに受け入れている可能性もあった。


「となると、予想できるのは強化、進化、眷属化などですカネ?」

「シー」

「セセセ」

「ええ、巨大化や縮小化も考えましたが、今の所はその傾向もないようデス」


…‥‥しいて挙げるとすれば、一部が大きいとは思うが、あれは違うだろうとワゼたちは結論付ける。


 もしそのような効果があれば、むしろ自分たちがあやかりたい。



 話がずれたが、結局のところどうなるのかはワゼにすらわからない。


 ただ、シアンの魔力自体も‥‥‥‥色々おかしくもあり、その量も膨大なので、確実に何かが起こる可能性が高い。


「とりあえず、最善の手が尽くせるようにどのような事になっても対応可能な体制で動きましょウ」


 できれば何事もない方が良いのだが、計算上それはあり得ない。


 せめて、まともなものになればいのだが‥‥‥‥


「スー」

「ん?他の調査結果ですカ。魔力に関しての方面で…‥‥ン?」


 と、ここでミニワゼシスターズの報告を見ている中で、一つ気になる物を彼女は見つけた。


「‥‥‥この件に関しては、もう少し調査する時間が必要そうデス。こういう時は私以外にも何かできそうな人がいればいいのですが‥‥‥知恵を拝借できそうな方は…‥‥いや、いましたネ」


 考えていても、自分たちだけではわからない。


 それに、普通に調べていても、その手の研究自体がそう多くないのでつかめない。


 ならば‥‥‥‥むしろ、誰も知らない様な、記録に残らない様な昔の方面で探してみればいいだろう。


 そう考え、ワゼたちは動き出すのであった‥‥‥‥



「ところで、知恵の拝借をしてもらう代わりに何か対価を上げたほうが良いかもしれませんが、何かありましたカネ?」

「シー!」

「ふむ、箱庭であればいいかもしれませんネ。そうです、ついでに回復できる薬湯を付ければ、面白そうデス。…‥‥ポチが悲惨な目に遭うかもしれませんが、まぁ、それもある意味対価という事で良いでしょウ」






【ぶえっくしょい!!】


 丁度その頃、森の奥のフェンリル一家の巣にて、ポチが盛大なくしゃみをした。


 それも、色々飛ばし、運の悪い事には目の前にロイヤルがいて、全部かかった。



‥‥‥数分後、森の奥から絶叫が聞こえてきたが、誰も気が付かないふりをするのであった。



さらっと最後の方でポチが悲惨な事になっていた。

まぁ、それはどうでもいい事かもしれないが、シアンたちに向けてある者が動き出していた。

何か用事があるようだが…‥‥何が起こるのだろうか?

次回に続く!!


‥‥‥甘噛みしている姿、街の中でやらかしたらどんな誤解を生むだろうか。容姿が絶世の美女で、その美女に手や腕、頭を軽くハムハムとシアンが甘噛みされている姿‥‥‥

むしろ、そっちの方で話を作ってみてもおもしろかったかな?いや、血の海ができそうな気しかないが…‥‥

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