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#137 動くのか動かないのかデス

SIDEベルガモット帝国:王城内


「‥‥‥何?我が息子入り箱が奪われただと?いや、そもそも何だ、その箱とは?」

「それが…‥‥」


 ベルガモット帝国の王城内にて、第2皇子ゴジャールの私兵団長であったデッドラは今、この国の帝王であり、あんな皇子の親なのかと帝国7不思議に数えられる人物ガードレッドに謁見し、報告を行っていた。


 かくかくしかじかと詳細を報告し、その内容を聞いて帝王の眉間のしわが深くなった。


「なるほど…‥‥この帝王の息子ながら、愚かな真似をしたな。だが、それも自業自得か」


 一口に言って、これはどうしようもないことだ。


 確かに、あの馬鹿を自然なふりをして誘導していた事実はあるが‥‥‥それにしても、見事なまでの自爆劇である。


 いっその事、そこまでの馬鹿っぷりを本当に劇にして、公演したらそれなりに儲かりそうだ。



 いや、重要なのはそこではない。


 この件で、2つの問題が生じていた。



「まずは、その馬鹿息子入り箱を攫った勢力が気になるな。あのような愚息、いや、もはや籍を抜くことは決めたが、あれを欲しがるような相手がいるのか?」

「いないと思いますが…‥‥」


 まず一つに、ゴジャールが入った箱を攫った者についてである。


 この件に関して、色々やらかしているゴジャールがどうなろうとも、もはや親の手から離れた子なのでどのような目に遭っても構わない。


 情がないのかと言われたとしても、教育は他の者に任せていたし、その本人の資質によるところが大きいので、どのような自爆をしても知った事ではないのだ。


 だがしかし、あのような我が儘大声傲慢不遜馬鹿男入りの箱なんぞ、誰が欲しがるものであろうか?



「考えられるのであれば…‥‥神聖国か」


 神聖国ゲルマニア。


 預言者と呼ばれる存在がおり、一種の宗教国のようなものなのだが、その実態は未だにつかみにくい。


 例えるのであれば、絵の具のようなものだ。


 他の国々が、赤や青、黄色と言った多彩な色で表現できるのに対し、神聖国はまるでいろいろな色が混ざった、黒にはならない不気味な色合いになっているのだ。


 邪悪な物でもないし、まともな部分もあるのでさほど気にするようなところではないが‥‥‥現在でも、つかみどころがない。




 ただ、ある噂がある。


 それは、本当にダメダメな腐った者たちをわざと放置しておき、ある時期が来たら回収され、行方不明になるという物だ。


 風通しも良くなり、組織などではそのような邪魔者がいなくなるのは好都合なので、特に手出しをするような事もないし、不必要な者たちを回収してくれるのであればむしろ感謝したいほどだが…‥‥第2皇子、見事にその腐ったダメ人間として当てはまっているように思えるのだ。


 ゆえに、神聖国の者が回収したのではないかという可能性があった。


……籍を抜かし、もはや皇子扱いする気もないが、一応帝国の者。


 国際的な問題もあるのだが…‥‥こういうのはどう手出しをしたものか悩ましい所であり、打開するような案もない。




「まぁ、そのあたりは後で考え得なければいけないとして…‥‥もう一つが、あの馬鹿が手を出した勢力か」


 神聖国で確定と言う訳ではないが、それ以上考える意味もないので切り替え、2つ目の問題について帝王は口にした。


 今回、馬鹿が馬鹿をやらかした原因の一つが、どうやらとあるメイドの衣服らしい。


 何でもあり得ないほどの収容能力を誇るポケット付きで、馬鹿はそれを利用すれば自分たちにとって莫大な利益を得る事が出来、帝位継承権争いを勝ち抜けるかもと思ったらしい。


 普通に交渉しても断られたそうなので、そこであきらめればいいのだが、わざわざ私兵を動員して、力づくで奪おうとしたが…‥‥見事に返り討ちにあったのだ。


 そして、問題なのがその返り討ちにしてきた相手。



 私兵たちは、馬鹿王子側の者たちだったとはいえ、その腕前はそれなりにある。


 それらをいともたやすく迎撃できていることから、相応の実力はあるのだが…‥‥


「神獣に、そのメイド、今垣間見えるだけのものでもまだまだ隠されているな」


 フェンリルの攻撃や、その不思議ポケットなメイド。


 それだけのものが今回は見えただけだが、それ以外の物も隠されていることがうかがえる。




 となれば、やはり…‥‥


「‥‥‥戦争時の謎の戦力、都市アルバス周辺の治安向上、また関係性は不明だが、温泉都市のほうでも色々と動いているようだ」


 不可解な能力の持ち主が存在しており、その実力は下手すると国すらも相手取り、いや、戦争の情報がある時点で、相当な戦力も有しているのは目に見えているだろう。



 もう見捨てたも同然な第2皇子を利用して、この謎の存在を探ってみようと思ってはいたが、予想以上の存在であることを帝王は確信した。


 そして、ついでにその逆鱗には触れてはいけない様な、恐るべき相手であるという事実も。




「‥‥‥不可解なことが多く、可能であれば帝国のものにしたかったが…‥‥これではできぬな。いや、もはやその者自体が一つの国のようなものか」


 そうつぶやく帝王。


 まだまだ見えないところも多いが、そのすべてを暴かなくとも桁違いに不味い存在である事が理解させられる。


 これではまるで、魔王と呼ばれるような…‥‥いや、むしろ魔王と確実に呼べる者としか思えない。




 幸いな事に、どうやらその相手は怒らせるようなことをしなければ何もしない様なので、不干渉を貫くか、もしくは友好的に接していけば何とかなる希望ぐらいは見える。


 だがしかし、逆にその逆鱗に触れるようなことがあれば、その時こそこの国は終わってしまうだろう。



「‥‥‥民には第2皇子は不慮の事故で隠居したと公表しよう」


 こういう情報は、迂闊に表に出すとそれこそ不味い事になりやすい。


 ゆえに、帝王は第2皇子に関しては不慮の事故という噂で表から消えてもらうことにした。


 そして、継承権争い中の皇子・皇女に関しては、この存在についてほのめかしつつ、絶対にやらかしてはいけない存在であると釘を刺しておく。


 何か接触した時に、友好的にできるのであればそれでいい。


 だがしかし、敵対するような真似だけはしてはならない。


 したら、その瞬間に何もかも滅びる運命が待ち受けていると告げ、それでも馬鹿な真似をしたら廃嫡どころでは済まないと。



……念入りに、そして心の底から確認させておくことで、釘は刺した。


 とは言え、人は押すなと言われたら押したくなるような衝動があったりするので、馬鹿をやらかす者が出る可能性は0ではない。


 何にしても、その馬鹿が出た時に、帝国自体に被害が及ばぬような対策を、帝王は練らなければいけないのであった‥‥‥‥




――――――――――――――――

SIDE神聖国ゲルマニア



 べきぐしゃぼきぃっと、何かを潰し、かみ砕いていく音が神殿内に響く。



 そして、その音はやんだ。



「‥‥‥ふむ、恐怖のエッセンスで味付けされているのも、悪くないね」


 そうつぶやきつつ、その音を出していた主…‥‥預言者はそうつぶやく。


「‥‥‥結局、その箱には何があったんだ?」

「それは聞かないお約束♪」


 預言者に対して、ツッコミを出す青年に対して、適当な返答が返された。



「まぁ、何にしても仕事も速いし、合格点かな。うんうん、呼び寄せてよかったよ」

「いや、俺ーっちは早く帰りたいのだが…‥‥まだあるのか?」

「そうだよ?まだまだノルマには足りないけど、でもこの調子なら早く帰れるかもね」


 預言者の言葉に、その青年はがっくりと肩を落としつつ、溜息を吐く。


 

「あ、そうだ。君って友人に色々と凄いのがいるよね?」

「ああ、そうだが?」

「だったらね、ちょっと前に問題を起こした相手がいて、色々とぎくしゃくとしたというか、警戒されるような事になっているんだけど…‥‥今度、これを渡しに逝ってくれないかな?」

「‥‥‥おかしいな。今、絶対に何か発音は同じでも、意味が違うような言葉が聞こえたぞ」


 何にしても、便利屋扱いされているようであるが、ここに置かれているのであれば、従うしかあるまい。


 嫌々ながらも、青年は指示された場所へ向かうのであった…‥‥



さらっと見捨てられた第2皇子。

その犠牲は帝国できちんと確認され、増やさないようにするためにも警告が出される。

一方で、神聖国の方も何か動いているようだが?

次回に続く!!


……というか、微妙にシリアスっぽいのは考えるとストレスがたまる。

甘い成分補給をしたいなぁ…‥‥糖度はどの程度にしてみようかな?

いっその事段階を進めてしまおうかな?

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