#131 作戦会議なのデス
とは言え、そんなに会議内容は無かったりする。
SIDEシアン
「ん…‥‥」
……目を覚ますと室内が薄暗くなっていた。
どうやらそれなりに寝ていたようで、夕暮時になっていたようである。
ほんわかとした柔らかさと、程よい高さによって生まれた快適さは、こうも安眠をもたらすのものなのであろうか。
ふと思い、首を動かして上を見れば‥‥‥
【すぅ…‥‥くぅ‥‥‥】
手などを天井に糸で固定して、ハクロが熟睡していた。
まぁ、この体勢だと眠ったらその山で圧迫される可能性があったから、防止策としてやったのだろうけれども‥‥‥それでよく寝れるな。
あ、ベッドの四隅に糸が‥‥‥ちょっと宙づりにしてないかこれ。
でも、僕の事を考えてやってくれたのだろうし、嬉しい事は嬉しい。
そう思いつつ、身体を横へずらし、そっと食指の上から頭をどかして体を起こした。
「っぐー…‥‥ああ、結構楽になったなぁ」
身体を伸ばしつつ、程よく癒されたことを実感する。
そう考えると、ハクロの膝枕……正確には食指枕だが、その効果は絶大だったのだろう。
「ありがとう、ハクロ」
熟睡しているハクロに対して、起こさないように気を付けつつ、そっとその頬を優しくなでる。
……そして、何の気もなしにふと壁際を見て、僕は気が付いた。
「ん?」
「ア」
【シャゲッ】
ワゼたちとドーラが、そろって見ていたことに。
その手元には、ミニワゼシスターズが合体変形したカメラのような姿があり、激写されていたらしいことに。
ひとまずは写真を没収しつつ、ドーラは庭に埋めつつ、気を取り直してワゼに任せていた例の人物たちについての報告を、正座させながらしてもらった。
「‥‥‥ベルガモット帝国の第2皇子?あれで?」
「そのようデス」
報告を聞き、僕は少し耳を疑った。
あの大声メイド服執着マンが、まさかの一国の皇子だったのか‥‥‥‥世も末というべきかも。
一応他国の事だし、人の教育に口を出す意味もない。
とりあえず今は、その詳細を聞くのが先である。
「やはりというべきか、都市キュルストンの時と同じような事をするようデス。しかも、暴力で訴える気なのか、私兵を動かしているのが確認できまシタ」
「それ下手すると国際問題になりかねないよね?」
「ハイ」
その第2皇子ゴジャール…‥‥面倒なので馬鹿殿下として省略することにして、帝国の馬鹿殿下がわざわざ王国の方へ私兵を持ってくる行為は看過できない。
一国の皇子の持つ私兵の数はそれほどではないとはいえ、他国の中で暴れられると色々と面倒である。
帝国は王国の友好国なのでそれなりに甘い部分もあるのだろうけれども…‥‥放置したらダメな奴じゃん。
「それに、都市キュルストンでの違法奴隷騒ぎの黒幕も、こいつなのか」
「ええ、間違いないでしょウ。色々探る合間に出て来たので、ついでに証拠などもばっちり集めておきましタ」
この時点で、もう馬鹿殿下は完全に詰んでいる。
これらの証拠をしかるべきところに出せば、国外強制退去、帝国での裁判などが待ち受けるとは思うが‥‥‥ちょっとこれだと、足りないかな?
ワゼのポケットの収容能力が無茶苦茶とは言え、しつこく狙う輩だし、私兵などを集めている時点で、僕らに害をなす気満々の輩だ。
賢く見せるようにしているらしいが、その行為の時点で既に愚者なのは目に見えているし……潰すべきか。
「ワゼ、既に手は打っているね?」
「ええ、もちろんデス」
僕の問いかけに対して、ワゼは笑みを浮かべて答える。
ここまで調べ、色々と余罪も出るような相手ならば容赦もいらないと思っているだろうし、既に仕掛けてきたのだろう。
あとは、その仕掛けを動かせばいいだけだろうし、こういう輩にこそ、力を振るうべきだ。
まぁ、下手するとやらかしかけないので、念のために王女ミスティアの方へ連絡をしておくことにした。
何かやらかした後にするよりも、やらかす前にわからせておいたほうが対処しやすいだろうしね。
……前提条件の時点でやらかすことが決定したが、まぁ、そのあたりは許容してもらおう。被害最低限に、あくまで対象はこの馬鹿殿下だからな。
「それじゃ、ミスティアから返答が来てから実行しよう」
「了解デス」
どこか手加減をするように言われるかもしれないが‥‥‥まぁ、ある程度までは妥協すればいいかもね。
「さて、そろそろ夕食ですので、用意しておいたので食べに来て欲しいのですが…‥‥ご主人様、ハクロさんを起こしておくべきデハ?」
「あ」
これ以上寝かせると、夜眠れなくなる可能性がある。
昼夜逆転されても困るし、起こしたほうが良いか。
「ハクロ、そろそろ夕食だよー」
【すにゅぅ……あと100時間は寝かせてほしいですよ‥‥】
「思いっきり寝すぎるんだけど!?」
あと5分とかならまだしも、それは流石に寝すぎる。
「電撃を食らわせましょうカ?」
そう言いながら、ワゼが腕を変形させてバチバチする電気の塊を作り上げていた。
「いや、流石にそれはダメだよ」
しょうがないと思いつつ、とりあえず天井で吊るして固定している糸をほどき、身体を動かしやすくした。
「起きてよハクロ、起きてよ」
【ふにゅぅ】
軽く肩をつかんでゆすってみたが、寝言を言う以外は熟睡中。
野生だと色々危ないと思うのだが…‥‥彼女の野生の本能などは何処かへ捨ててしまったのだろうか。
「いったん熟睡されると、本当に手ごわいなハクロ……」
「…‥‥あ、いい案がありますよ、ご主人様」
このまま諦めて、夕食は放棄してもらおうかと考えたところで、ワゼが手を上げた。
「どんな案があるんだ?先に言っておくけれども、海の時みたいにスプレーでブシュと起こすのは無しだからね?」
「ええ、その手は使いまセン。安全性を保障しますが、少し部屋を出てくれませんカ?」
「いや、本当に何をする気なんだワゼ」
取りあえず、起こす手段があるらしいが僕に一旦出て行ってほしいらしい。
気になりもするが、理由を聞けばまだ早いという事以外は伝えてくれない。
疑問に思いながらも、部屋を出て、夕食の場で僕は待機する。
……数分後、大きな音が響いた後、ハクロを連れてワゼが来た。
ただ、どういうわけかハクロが物凄く真っ赤になっているんだけど‥‥‥
「ワゼ、何をしたの?」
「秘密デス」
「ハクロ、何をされたの?」
【…‥‥黙秘しますよ!!】
涙目でうるうると訴えられたが、本当に何をされたのだろうか。
気になるが、何やらヤバイ地雷の気配を感じたので、それ以上追求するのはやめるのであった‥‥‥
何をされたのかは疑問に思いつつ、尋ねる事でもないだろう。
とりあえず今は、その帝国の第2皇子、馬鹿殿下と言う名で決定して処分開始する。
何やら既に工作済みのようだが…‥‥どのような醜態があるのだろうか。
次回に続く!!
……なお、写真没収はしているが、記録は残っている模様。いつでも再生可能なのだが、その可能性をシアンはまだ知らないようである。ご主人様に黙っておくのは良いのか気になるが、一応ある程度わきまえるのであろう…‥‥多分。




