#123 油断はできないのデス
1,2,3ってなんかリズム良いような。
色々な曲とかに使われているイメージがあるなぁ‥‥‥
SIDEボラーン王国:王城内
いつも平和な王国内ではあるが、本日は国にとってある重要な事が行われていた。
「‥‥‥よし、これで今後も友好関係が保たれますな」
「ああ、良好関係が築かれ続ける方が望ましいな」
ボラーン王国の国王エドワードの言葉に対して、その場にある書類に調印した友好国『ベルガモット帝国』の帝王であるガードレッドはそう答えた。
そう、本日は友好関係に関して、貿易や各種協定などを見直し、結び直す日。
しかも、わざわざ向こうのトップである帝王自ら出向いてきたので、今回はミスティア含む王子・皇女など王族総出で友好関係をアピールしていた。
なにしろ、ベルガモット帝国は軍事大国であり、軍事力もかなり強く、かつてボラーン王国を攻めてきたヌルダニアン王国なんて赤子に等しい。
偶然にも友好関係を築けているからこそ攻められることはなく、その関係性を重要視しているからこそ、王族総出できちんと敬意を表しているのだ。
なお、帝王にも皇子・皇女がいるようだが、こちらは今回来ていない。
と言うのも、ボラーン王国のミスティアたちのような仲良いような関係とは異なり、帝国の方は険悪な兄弟仲らしいのだ。
王位継承権争いが起きており、ある意味正しいような形なのだが‥‥‥その対立が激しすぎた。
先日、帝国内でもはや第何次と数える事もなくなった正面からのぶつかり合いがあったようで、まとめて入院という事態になってしまったのである。
何にしても、それは他国の事情ゆえにこれ以上踏み込むことはできない。
とにもかくにもそれは置いておくとして、ようやくすべての条約などの再確認も終え、帝国との友好関係が保たれることが決定した。
「はははは、我が国との友好関係が保たれて安心できました」
「まぁ、大丈夫だろう。この国へ我が帝国が攻め入る事はない。互に利益がきちんとあるからな」
国王の言葉に、帝王はそう答える。
帝国は軍事大国と言われるが、何も某弱無人に戦争を仕掛けるような国ではない。
きちんとこの帝王は仕掛けるべき国、仕掛けずに友好を結ぶべき国と分けており、この王国であれば友好を結ぶべきだと判断しているのだ。
「ところで国王殿、ひとつ質問をさせていただけるか?」
「ん?何かあっただろうか?」
ふと上げた帝王の言葉に、国王は首を傾げた。
「ああ、先日と言うか、つい数か月前の事か。ヌルダニアン王国とやらがこの国へ戦を仕掛けたという情報があったが、すぐに壊滅したと聞く。だがこの国の軍はそうすぐには動かなかったと思うが‥‥‥一体何が、壊滅させたのだろうか?」
「…‥‥」
その質問に対して、国王はどうこたえるべきか迷った。
その話しの内容にある、殲滅したものとは‥‥‥確実に、シアンたちの事である。
まだまともに面識はないが、第2王女ミスティアとは既に面識があり、万が一の時などの交渉役にしているのだ。
何しろ、彼らは一国の軍を殲滅できるほどの戦力の持ち主。
しかも、その主であるシアンと言う魔法屋自身も相当な物であり、先日の温泉都市での騒動から魔力量が桁外れらしいという事も判明し、ちょっとばかりとある事例と重なっているのではないかと言う話もあった。
何にしても、シアンたちの事は国にとっては機密に近い。
「そ、そうだな…‥‥ああ、あえて答えるのであれば、神獣が原因かもしれないのだ」
「神獣だと?」
「そうだ。その戦争時に、どうも神獣のフェンリルがその場にいたらしくてな‥‥‥」
とっさに出たごまかしではあるが、あながち嘘ではない。
神獣とはこれはこれで人外レベルの実力を持つ者たちもであり、彼らが出向いたら軍が潰されておもおかしくはないのだ。
都合の良い事に、都市から離れた場所にあるハルディアの森と言う場所に神獣フェンリルが住み着いているらしいという事は確認済みで有り、離れていても狩りとかで偶然その帰りに出くわして潰したなどといっても、真実性はあるのだ。
それに、第2王女からの報告によれば、温泉都市の方にも神獣ファフニールが確認されており、どっちが出て来たとしても、軍を潰せるというごまかしがきくのであった。
「なるほど‥‥‥神獣に出くわしたのか。それは相手の方が気の毒だとは思えるだろう」
国王の言葉に納得したのか、帝王がふむと頷くような動作を取り、国王は内心ほーっと安堵の息を洩らした。
仮にすべて話したところで、信じられそうにもないだろうし…‥‥それだけの戦力が注目され、むしろ帝国側へ流れてしまうのも避けたいし、最悪の場合対立して余計に悲惨な状況へなる事を恐れていたのである。
「神獣と言うのは、これはこれで軍事大国である我が国にとっても油断できないようなものであるからな‥‥‥まぁ、彼らの気まぐれと言う可能性の方が大きいが、ある意味この国はそれだけ運に恵まれているのであろう」
「そうだと良いんですがね。まぁ、そのおかげでヌルダニアン王国軍は撤退し、終戦いたしましたしね」
戦争を吹っ掛けてきたヌルダニアン王国は現在、国内の立て直しが行われている。
元凶である聖女とやらは逃亡したようだが、これで争わずに済むのであれば、そうしたいのだ。
何にしても、一国の王として、国王は帝王をもてなし、バレないようにするのであった…‥‥。
……が、それは無意味であった。
「‥‥‥神獣が、そう都合よく出てくるわけもあるまい」
深夜、用意されていた宿泊室にて、帝王はそうつぶやく。
情報を仕入れたが、この程度のことを知れただけでも十分であった。
晩餐会での国王の態度から、帝王は国王が明らかに隠し事をしているのを理解していた。
深くは追求せずに納得した振りをしつつ、この王国内に何か隠された秘密があるというのを確信したのである。
「しかし、優れた間者を放ったが…‥‥第2王女の元の方へ近寄らせないほうが良いな」
この国の第2王女ミスティアの情報は、帝王も知っていた。
王子・王女たちの中で王位継承権が一番低いとはいえ、その働きには感心するものがある。
できれば帝国側の皇子と婚約をさせて見たかったが…‥‥政略結婚など、受け入れるはずもないだろう。
むしろ、油断しないほうが良い相手でもある。
情報によれば、過去に刺客などが仕向けられているが、ある時期から明らかに撃退され過ぎて数が減っているのが目に見て取れた。
その時期はちょうど、あのヌルダニアン王国がこのボラーン王国へ戦争を仕掛けた時期と重なっており、撃退した場所の近くにいたらしいという情報もある。
「あの王女の方であれば、確実に情報を得られるかもしれぬが…‥‥警戒されているようだし、まだ近づけぬな」
何かがあるこの王国に興味がありつつも、その何かへ中々手を出せない帝王。
軍事大国として発展させ、様々な状況を乗り越え、画策してきた身であったが、どうやら非常にやりがいのある事のようで有ると彼は考えた。
「さて、明日にはすぐに帰国するが‥‥‥秘密があるらしいという事だけは得られたんだ。となれば、その秘密を暴かせるのに駒を使うか…‥‥」
不気味な笑みを浮かべつつ、そうつぶやく帝王。
近頃若干不眠症のために、安眠を得るべくアイマスを着用し、帝国から持ってきた自分の枕を頭の下に敷き、どうすべきか考えつつそのまま眠りにつくのであった…‥‥
何やら不穏な動きが見え始めてきた。
とは言え、甘い雰囲気にしたいので抗いたい。
しかし、そううまいこと行かないのが厳しい現実である。
次回に続く!!
……駒って、何を仕向ける気なのだろうか。作者としては穏便にほのぼののんびり甘くしたいので、できれば穏便に済ませてほしいが‥‥‥無理だろうか?




