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閑話 面倒見がいいのデス

一方、ハルディアの森では……

SIDEドーラ


【シャシャゲェ~♪シャシャゲェ~】


 ボロン、ボロンと優雅に、その辺の木の板にいくつかの蔦をはらせて即興で作った楽器を弾きながら、ドーラは音楽を奏でていた。


【ガウッ!!】

【ガウガウガウ!!】

【ガウン!】


 その音楽が陽気なリズムであったことが気に入ったのか、合わせて踊る子フェンリルたち。



 現在、ドーラはシアンたちが旅行中の間、フェンリル一家の巣にて、子フェンリルたちの面倒を時折見ていた。


 2泊3日、往復の日数も考えても短い時間ではあるが、子フェンリルたちは今が元気盛りで、放置すれば勝手に動いてどこかに行きかねない状態。


 迷子になられても困るし、彼らの父親であるポチはボコボコにされているので、すぐには動けない。


 そういうわけで、畑や花壇の世話の合間に面倒を代わりに見にきたが、きちんと受け入れられていた。



【シャシャゲ!!】

【ガーウッ!!】


 音楽を楽しんだ後は、軽く踊った身体の調子を活かし、戦闘訓練をドーラは子フェンリルたちへ実践した。


 体の大きさ的には、今の状態ではドーラは子フェンリルたちよりも小さいが、蔓をあちこちへ伸ばせたりすることなどを活かし、地面からの強襲や、先を分裂させるなどして、トリッキーな動きで翻弄する。


 そして子フェンリルたちも負けじとその動きを観察し、どのように対応すればいいのか学んでいく。



 神獣フェンリル、その種族として恥じないようにという誇りでもあるのか、ドーラの戦闘技術を子フェンリルたちは学び、臨機応変に対応する力を強めていた。


 正直、ドーラの感覚的には、もう子フェンリルたちはポチを越えていると言えた。


 


 であれば、もっと(・・・)本気を出していいのかもしれないと、ドーラは考える。


【シャゲェ……シャゲシャゲェ?】

【ガ?】

【ガウガウガーウ!!】


 念のために、子フェンリルたちに問いかけてみたが、その意見に賛成のようだ。


 もっと強い相手を求めて見たいようで、ドーラの強さをもっと見たくなったのであろう。



 その返答に、ドーラは答えるべく、次の段階へ身体を成長させた。


【シャ~~~~~~~~ゲェェ!!】



 ずごごっごっと地面が揺れ、ドーラの身体が縦に勢いよく伸びていく。


 蔓が太くなり、一部では棘も生え、また新たなドーラの頭のようなものが各所から生え、異形の姿を見せる。


【シャゲェ……シャゲゲッゲ!!】

【ガーウ!!】

【ガウッ!!】


 ちょいちょいっと葉っぱを手のように動かし、挑発の姿勢をみせるドーラ。


 その誘いに乗るべく、子フェンリルたちはいっせいに攻撃を仕掛ける。




……だが、ドーラの動きは、先ほどまでの姿とは違っていた。


 根っこが地面から引き抜かれ、太い足のようになり、蹴り技をかけてくる。


 腕のように見える蔓も太くなったり細くなったり、時折分裂して手数を増やしたりするうえに、各動きがより一層洗練され、速くなったり、対応してきたところでわざと遅くし、動きを変えるなどをして翻弄していく。


 また、打撃などの手段だけではなく、所々に新たに生えた頭から種を発射したり、甘い蜜をかけて、視界を防いだりなど、妨害手段などを増やしていく。



【シャゲシャゲシャゲェェ!!】

【【【ガウ――――――ッ!?】】】


……そしてものの数分で、勝負がついてしまうのであった。






【ガウゥ……】

【シャ~ゲ】


 尻尾を下にさげ、うなだれる子フェンリルたちに対して、元に戻ったドーラは慰めるように彼らの頭を撫で上げる。


【シャゲ、シャゲェゲ、シャ】

【ガウ?ガウウ‥‥】

【シャシャシャゲ、シャ~~ゲ】

【ガウウ‥】

【ガウ―ン!!】


 励ます言葉に、心打たれたのか感涙の涙を流し、子フェンリルたちはドーラに飛びつく。


 彼ら全員を慰めたが、どうやら完璧に慕われてしまったらしい。


 どうしたものかとドーラは悩むのであった。


---------------

なお、かなり気にいられたらしく、いつの間にかフェンリル一家の中で、ロイヤルに次ぐ順位にドーラは付いたのであった。


 その代償としてか、ポチの方は急落したが…‥‥

---------------



……それから数時間後、日も沈み、森の中も暗くなってきたところでドーラはシアンの家の、花壇にある自身の居場所へ帰宅した。


 流石に疲れたとはいえ、中々充実した一日であったことに変わらず、ドーラは気分が良いままであった。



 地面に根を張り直し、水や養分を注入し、それらを吸いあげて明日への活力に変えていく。


 ふと、たまには変わった睡眠方法でもしてみようかなと思いつき、ドーラは体を伸ばし、木の上に巻き付く。


 空を見上げれば月明りが出ており、非常に心地いい頃合いである。


【シャ~ゲ♪】


 ついでに、この心地よさを何となく伝えたいような気分にもなり、昼間に使った楽器モドキに蔓を伸ばし、引き寄せ、弾き始める。


 ボロン、ボロンと風にのって流れていく音楽。


 のんびりとした、充実な一日の終わりに、ドーラは満足しつつ、楽器を奏でる。


……正直言って、家の主であるシアンよりものんびりした生活を送っていることに、少々申し訳なさも感じたが…まぁ、世の中にはどうしようもない事があると、ドーラはそう結論付けたのであった。



 そしてその最中に、ドーラはふとある記憶を思い出す。


 いや、その記憶はドーラであって、ドーラではない記憶。


【シャゲェ~♪シャシャゲェ~♪】


 ドーラはその記憶を題材に、歌を作り上げていく。


 一つの物語のようにまとめ、わかりやすいその話を……


ドーラのその話しは、また別の機会。

今はまず、進展が見られそうな2人について焦点を当てたいところ。

甘くしたいけど、邪魔が入りそうなんだよなぁ……

次回に続く!!


……何気にポチの父親としての尊厳が下降中だな。

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