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#105 本人たちより取りまきの方がたちが悪いのデス

いや、この場合取りまきとは違うのかな……?

SIDEボラーン王国:首都内の貴族街


「ぬわんだと?やはり失敗したか」

「どうやらそのようです。一応、我が家までは到達しないように、いくつかを複雑に経由させているので、今すぐに疑われることはありませぬ」

「ふむ、それならば良いのだが…‥‥しかし、失敗するとは」


 やれやれと、元から期待していなかったようなやり取りを行うのは、この屋敷の主である貴族。


 いや、正確には彼はもう当主の座を降りており、既に彼の息子が跡を継ぎ、隠居生活を送っていたのだが……それはあくまでも建前の話。



 実権は未だにその人物に握られており、権力闘争に現役同然に参加していたのであった。


 そんな彼らが今回企んでいたのは…‥‥国家反逆とも思われてもおかしくない行為、王族の暗殺。


 適当な都市に敵対する派閥の筆頭となる王子・王女を誘導し、そこでまとめて殲滅する予定であったが……どうやら他の派閥の者たちも同意見だったようで、同じようなことをしでかされたようなのだ。



 とは言え、現状彼らに不利益はなかった。


 成功すればいいと思っていた程度の事であり、実際に彼らがやったのではなく、思考をそのように誘導した程度なので、自分たちにまでたどり着かれるとは微塵も考えていない。


 自分は高みの見物で、いらなければ切り捨てれば良いと思っていたのである。



「しかし解せないな…‥‥他の者たちも暗殺者、もしくは暴漢などを送り込んでいただろうに、何故失敗したのだろうか?」

「詳細は不明ですが、何者かの襲撃にあったようです。金を握らせて情報を引き出してみましたが、いかんせんこれ以上踏み込めば我々が疑われかねませんでした」

「だろうな……まぁ、良い。これで失敗したのだし、すぐには事を起こさずに、しばらく様子を見たほうが良いだろう」



 王族を暗殺しようとした者たちがいるとバレた以上、今回からしばらくの間は警戒がされるはずである。


 とは言え、人とは喉元過ぎれば熱さを忘れると言うように、時間経過と共に緩む場合がある。


 今すぐに動くのではなく、時期を見て再び動けば良いと彼らは考えた。




「いや、もしくはすぐに事を起こすのもありか」


 とは言え、そのように考えたところで次の時期は分からない。


 ならば、この際誰かを実験台にして試すのも悪くないと思いついた。


「ちょうどいい人物は、今の所誰がいると思う?」

「そうですね…‥‥うまい話に乗りやすそうな、思慮が浅そうで、なおかつこの派閥内でも害をなすようにしか思えないような馬鹿者となると限られますが…‥‥この家の子息はどうでございましょうか?」


 そう言いながら、手渡された情報が載った書類を読み、その人物は口角を上げた。


「うむ、まさに都合が良い。愚物が出られても困るし、ここで排除し、より一層繋がりを強めるための犠牲にもふさわしいだろう」


 愚者ほど利用しやすいものはなく、かと言って制御を誤れば自分たちの方にも災いをふりまく可能性があるのだが…‥‥それでも、大丈夫だという自信が彼らにはあった。


「しかし、都合の良い者とはいえ、これではまだ足りぬな……王族に接触すること自体少ないようだし、何処かで一度、ごたごたを起こせればいいのだが…‥‥」


 決定づけたところで、やらかしてくれなければ困るし、迂闊にやって自分体との関係が露見しても困る。


 ゆえに、慎重に議論を重ね、彼らはその愚者を生贄として目的のために使用することを決定づけつつ、機会をうかがい始めた。



……しかし、そんな彼らこそ、愚者とも言えるであろう。


 自分たちこそは大丈夫と言う、その慢心。


 長年培ってきた経験があるとは言え、そのようなものは幻想のように淡く、そしてはかなく散りやすい。


 そして、その散るであろう原因を、その王子・王女襲撃時で構築し始めていたことに、彼らは気が付かなかったのだから……




――――――――――――――――――

SIDEシアン


……王女たちとの話し合いから数日が経過しており、今日も僕らは魔法ギルドにて依頼を捜していた。


「今日の依頼は何があるかな?」

「都合の良い依頼が一番楽デス」

【でも、そういうのってなかなかありませんよね】


 依頼掲示板へ向かい、どのような依頼があるのかくまなく確認する。


 面白い依頼もいいが、その裏にあるモノも考えて真剣に検討しなければならないが…‥‥まぁ、以前の海での出来事を考えるに、まだ油断はできないだろう。二度と巨大イカはごめんである。


 それに、謎の液体騒動・・・・第1王女が作った物体Xからもそう時間は立っておらず、少々警戒することが多いせいなのか、やや都市内の防備を固めるためのようなものが多かった。


 衛兵たちの巡回するルートの清掃とか、都市周辺の生態調査……いや、これはアンデッド騒動の影響かな?


 他にも建物の補強工事の手伝いや、いざという時の排水溝の設置、整備など、ここ最近の騒動の影響を受けた依頼が多い。



 まぁ、中には子守りだとか魔法屋の仕事としてはどうなのかと言えるようなものもあるが、それでも依頼な事は依頼だ。


 

「どれが一番良いのか……迷うね」

【うーん、依頼があるのは良いんですけれども…‥‥こういう時にパッと決められるシステムがあっても良いんですがね】


 数が多いと選ぶ幅も多いが、その分迷いやすくなるのも困りものである。


「そういうシステム構築は、まだ無理デス。心理的なものは難しいですからネ」


 ハクロの言葉に、ワゼがそう答えたが、メイドゴーレムの彼女でも流石に無理な話しみたいである。


……「まだ無理」と言う言葉に、少しだけ疑問を持ったけれどね。まだってことは、何時かは可能になるのかな……メイドゴーレム、おそるべし。


 

 とにもかくにも、王子王女たちの事もあったが、しばらくは平和そうに出来そうなことに、今は喜ぶべきかもね。


 暗殺者とかも現状いないようだし、できればこのまま平和に過ごしていきたいなぁ‥‥‥‥




……と思っていたが、世の中はそう甘くはなかった。


 この時僕は知らなかった。こういう平和な時は、割と直ぐに終わるのだと。


 いやまぁ、経験的に少しは予想できたかもしれないが……予想もしたくはなかった…‥‥

何やら着実に面倒ごとが形成されている模様。

シアンたちにとって関係ないと言いたいが、それでも巻き込まれるであろう。

今回ばかりは、どこぞやの神聖国も関わることはない……と思いたい。

次回に続く!!


……甘くしたいのに、なぜいつも邪魔が入るのか。

ジャンルが恋愛ではなくファンタジーゆえに、甘い要素を入れにくいのか。

いやまぁ、基本がほのぼののんびりなのだが…‥‥

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