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#98 速やかに解決を図るのデス

面倒毎が起きた際には、即座に対応いたしましょう。

ハクロの背に乗って逃走しても良いけど、実はワゼに運ばれた方が早かったりする。

……まぁ、立体起動性能などを考えるとハクロの方がまだ上でもあるが。

SIDEシアン


 突如として湧き出てきた謎の液状物質。


 それから逃げるために、ハクロの背に乗りつつ猛ダッシュで駆け抜けてもらったが…‥‥ある程度進んだところで、僕らは気が付いた。


「……あれ?全然危害がないような」


 振り返って見れば、液状物質に足が使った人たちが逃げまどっているのだが、誰一人として怪我などをする人がいない。


 焼け爛れるとか、溶けるとか、変質するなどが考えられたのだが……パニックになって逃げていた人たちも、その事実に気が付いて足を止めている。



【そのようですが…‥‥あんなものに足を触れたくはありませんね】


 そう言うと、ハクロは糸を飛ばし、簡易的な蜘蛛の巣を張り、そこを足場として乗った。


「ふむ、どうやら無害な物質で出来ているようですが……っと、ご主人様、ようやく成分分析結果が出ましタ」


 しゅたっとハクロの糸の上に飛びのったあと、ミニワゼの一体がいつの間にか分析していたらしく、その結果が書かれた書類をワゼは受け取って読んでいた。


「構成成分はどうやら……食材のようデス」

「え?」

【食材ですか?】

「ええ、信じられませんが99%が、一般的に食用可能な食材で構成されているようデス。残った1%が液状化の原因のようですが…‥‥これだけは不明デス。しかし、毒性はなく、精々口に含んだ瞬間に、あの世へ逝きかける程度のまずさとなるようですネ」

「それって十分毒性があるような…‥‥」


 とにもかくにも、それ以外を除けばただの一般家庭で食べられるような食材で出来ているらしい。


 謎の液状物質の正体を単純明快に言うのであれば、大失敗したスープであるらしいのだ。


「何をどうやってこの1%が産まれたのかが気になりますが…‥‥口に含まない限りは、ただの水と言う認識で大丈夫デス」


 だけど、流石にこんな液体に足を付ける勇気はないので、どうにかするようにワゼに命じると、どこからともなく長靴を彼女は取り出した。


 履いて試しに足をつけて見れば、確かにただの溢れた水のような感触以外、特に危険という事もなさそうである。


「本当だ、何ともないや」

【私はちょっと遠慮したいですね……糸の上を渡りますね】


 ハクロの方は、流石にまだ勇気がないようで、浸かろうとしない。


 まぁ、飲まない限りは安全らしいが、それでもやはり抵抗があるのだろう。地面垂れ流しの液体を飲むような人はいないと思うが…‥‥


 




 ひとまずは、住民たちもただの洪水モドキのような物であると認識したようで、液状物質の排除に乗り出した。


 こういう洪水モドキの災害など、以前あったアンデッド系集合体の奴に比べればましである。



 バケツリレー形式でかきだされ、水はけのよい所へ投げ出されれば、あっという間に吸水されていった。


 とは言え、一応謎の物質が1%も混じっているようだし、変なものが生まれる可能性があるので用心したいのだが…‥‥


「そもそもの話として、一体どこから流れてきたんだ?」


 現代の自己風に言うのであれば、水道管の破裂に近いが、こんな液状物質が出る水道管なんぞない。


 食材が使用されていたという事は、何処かの調理場でやらかされた結果出たのだろうけれども…‥‥何をどうしてこんなことになったのかが皆目見当がつかない。


「流石に、この1%だけで起きた事故と言うよりも、もはや呪われているといったレベルの人が調理した結果生まれた物として考えるのが良さそうデス」

「そんな料理、いや、この料理災害と言えるような調理が出来る人っているのだろうか…‥‥」

「確率としては……そうですね、わかりやすく言えばポチが最強になって性格も神獣にふさわしくなるぐらいのものデス」

【…‥‥ほぼ0%に等しい確率ですよね】

「そうだよね…‥‥」


 例えが酷いようだが、非常に分かりやすい例えであった。確かにそれはほぼ0%だよね……以前、ヴァルハラさんに矯正されていたけれども、いつの間にか戻っていたし…‥‥




――――――――――――――――――――――

SIDE???


……シアンたちが発生原因について推測していた丁度の頃、都市アルバスの一角では言い争いが起きていた。


「おい!!何をどうしたらこんなものが出来るんよ姉上!!」

「ん~、わからないな~。でも、今度こど美味しいものが出来ると思っていたのにね~」


 一組の男女だが、彼らは別にカップルでもなく、とある事情でここに来てみた姉弟。


 そして、今回の謎の液状物質現象の元凶でもあった。



「兄上たちは最初に巻き添えを喰らって流されたし、都市内でいきなり大問題を引き起こすとは……ミスティアに知られたら絶対に嫌われる案件だよ!」

「それはちょっと困るわね~」

「ぜんぜん真剣さが無いよ!」


 のほほんとした姉に対して、その男性の方は必死になって言うが、ふざけているのか真面目なのかわからない返答に、その弟は色々と言いたいが良い言葉が見つからなくてもどかしくなる。



「……セ」


 そしてその様子を、しっかりと見ている者がいた。


 ワゼの命令によって素早く動き、謎の液状物質の発信源へといち早くたどり着いたミニワゼシスターズの一人、ズィーベンである。

 

 手に持ったホースで、液状物質を回収し、より精密な検査を行うため取っていたのだが・・・・どうやら元凶を見つけてしまったらしい。


 あの男女の内、片方の姉と呼ばれている方が今回の事件を引き起こした張本人のようだが……



「セ!」


 とりあえず、逃げられる前にいったん捕獲しようとズィーベンは考えた。


 軽い気絶でもしてもらえれば楽なので、ひとまずはちょうどいいサンプルがあったのでそれを利用する。


 給水していたホースのモードを射出に切り替え、先端を細くして狙い撃ちしやすいようにスコープを取り付ける。


 そして、会話の最中で両者とも口を開いたタイミングで、発射した。



……そう、回収した謎の液状物質を微量ずつ、均等に、彼らの舌に触れるように。


 そして、狙い通りに口の中に入った次の瞬間、その二人の男女は声を上げる間もなく、瞬時にその場に倒れ込み、痙攣を引き起こし、ぴくりとも動かなくなった。


 確認のために近寄り、完全に気絶していることをきちんと調べた後、他のミニワゼシスターへ支援要請を送るのであった。



密かにスナイパー技術を獲得していたミニワゼシスターズ。

暗殺ではないとはいえ、痙攣している時点で大丈夫なのだろうか?

何にしても、検死解剖になる前に何とか情報を得ないとね。

次回に続く!!


……銃弾ではなく、超激マズ液体なので血を見ることはないだろう。

しかも、できたてほやほや新鮮な物なので、腹を壊すことも…‥‥無いのかな?

実験のために、誰かに飲み干してほしい。ポチ辺りが無難かね?

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