犬女ちゃんと海水浴(2)
「私はなんてラッキーなのでしょうか。
ハーレム加入早々、サービス回、
水着回に出くわすなんて。」
「あの美しいお姉ちゃん達の麗しい水着姿を
こんなにも間近で拝見できるなんて、
幸運と言う他、言葉もありません。」
「ここは海イベントを充分に堪能しなくては。」
愛ちゃんは一人でぶつぶつ言っていたが、
早速行動を開始することにした。
まだレジャーシートを敷いたり、
ビーチパラソルを立てたりと
みなの準備が終わったばかりのときである。
まずは一番乗ってくれそうな
夏希のところに行く愛ちゃん。
「夏希お姉ちゃん、ここはチャンスです。」
なぜか愛ちゃんは、
年上女子達をお姉ちゃんと呼んでいた。
純心がお兄ちゃんだから、
彼女達はお姉ちゃんなのだろうか。
「お兄ちゃんにサンオイルを塗ってと頼んで、
海イベントのフラグを立てちゃいましょうよ。」
「なるほどー、
なんか海の定番イベントっぽい感じするねー」
夏希もそういうノリは結構好きだ。
-
「純心、オイル塗ってよー」
純心が振り返ると、
レジャーシートにうつ伏せに寝転がり、
肩紐を下ろして、背中を広く開けている夏希が。
『これは、もしかして、
いつものパターンのやつか?』
夏希がこういうことを言い出すと、
だいたいお決まりの展開になるのを
さすがに純心も学習していた。
犬女ちゃんと純心母は、
ちびっ子達と砂浜で遊んでいる。
まぁ、夏希はまだいい。
小学校の頃は一緒に
お風呂に入っていた仲だ。
未だに兄弟のように
思っているのも嘘ではない。
「お前、もうすでに焼けてるのに、
オイル塗る必要あんのか?」
夏休みの間、
部活で日焼けしている夏希は
すでに小麦色の肌だ。
「やだな、焼きムラにならないようにだよ」
兄弟みたいなものとは言え、
やはり年頃、夏希の柔らかくも、
しなやかな筋肉がついた肌に、
ドキドキしながらオイルを塗る純心。
-
ここまではまだいい。
すでに愛ちゃんにそそのかされたお嬢様が、
顔を真っ赤にして次の順番を待っていた。
「とっても恥ずかしいですわ…。
私は日焼け止めでお願いいたしますわね…」
これはやばい。
上ビキニの紐をほどいて、恥じらいながら、
胸の前でビキニを手で押さえる佇まい。
これは男子高校生が見ていいものでは決してない!
こんな光景を見慣れた男性高校生がいるのなら、
俺は断じて許さん!
無駄にいきり立つ純心。
「美しく透き通るような白い肌。
きめの細かい、デリケートで繊細な柔肌。
触れるとなんとも柔らかく、
心地良い感触が手にまとわりつく…」
純心が思っていたことを、
愛ちゃんが横で声に出して代弁していた。
「お前、横で解説するんじゃないよ」
「あ、あの、なんなんでしょうかこれは…」
おそらくお嬢様はまだ
羞恥プレイいう言葉を知らないのだろう。
-
「お兄ちゃん、
生徒会長お姉ちゃんも、
お願いしたいそうですよー」
そんなことを自分で言えるはずがない
生徒会長に代わって
愛ちゃんが純心にお願いする。
その時点で生徒会長は、
顔を真っ赤にして動かなくなってしまっていた。
ちゃんと息をしているか心配になるぐらい、
すっかり魂が抜け切ってしまっている。
「わ、私の胸を触ったぐらいなのですから、
せ、背中ぐらい大したことではありませんでしてよ…」
「い、いずれ責任を取っていただかなくては
なりませんでしてよ…」
生徒会長はもはや熱に浮かされているみたいに、
うわ言を呟いている。
おそらく、キレて生徒会長の胸ぐらを
つかんだときのことを言っているのだろう。
『お前はいつの話をしているんだ』
純心はそう思ったが、
実際にはまだあれから
半月ぐらいしか経っていない。
結局、中二の愛ちゃんに、いいように
翻弄されてしまう女子高生トリオだった。
-
「次はいよいよ私の番ではないですか。
私もようやくお兄ちゃんとのイベントですね。」
寝っ転がって、ビキニの紐をほどいて、
次の自分の番を楽しみに待つ愛ちゃん。
『ちゅ、中学生の肌に俺が触れるだと?
ぜ、絶対ダメだ、
男子高校生の俺が、
中学生の肌に触れるとか、
これ通報されるパターンだ、
捕まるパターンの奴だ、これ』
純心は焦る。
「お兄ちゃんの手、ずいぶん小さくないですか?」
「それになんでいくつもあるんですかね?
まさか、もしかして触手ですか?」
愛ちゃんが横を見ると、
純心は犬女ちゃんと母親の背中に
交互にオイルを塗っていた。
愛ちゃんの背中にオイルを塗っているのは、
可愛い四人の妹ちゃん達だった。
「でも、でも私はめげませんよー!」
「お兄ちゃんとの海イベント
必ず成功させますよー!」
ある意味、純心母と同じぐらい
ぶっ飛んでいる愛ちゃんだった。




