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犬女ちゃんとマラソン大会(1)

ついに三学期がはじまった。


この期間は、

一学期、二学期と比べると

あまりにも短いため、なんだか

オマケ期間のような気もしてくる。


もう少しすれば進級して

純心もいよいよ高校三年生、

進路のことなどを本格的に

決めていかなくてはならない。


その前に生徒会長達三年生は

後数か月で卒業して行く。

そんな寂しさも

少し感じるような期間でもある。


犬女ちゃんの資格認定も

日向ひなた先生いわく

今年度中には取れそうだということで、

それが取得できれば

人間に変装することなく

晴れて電車などの交通機関や

公共機関にも出入り出来るようになる。

四つ足の犬女ちゃんとして。



その犬女ちゃんは、

相変わらず一緒に学校に来ているが、

正月気分が抜けないのか、

保健室でもぐだぁっとしていることが多い。


『こいつ本当はやはり猫なのでは』


冬休みの間もすっかりおこたが気に入り、

家でごろごろぐだぐだしていた犬女ちゃん。

自分が犬属性だということを

忘れているのではないだろうかと

純心は心配になる。


犬女ちゃんが『猫女ちゃん』になっても

いいと言えばいいのだが、

やはり犬女ちゃんは、

犬らしい性格のほうが可愛らしい。


学校のみんなも

犬女ちゃんがいる生活に

すっかり慣れてしまっており、

教室で犬女ちゃんが

ぐだぁっとしていても誰も気にしない。

今日は随分とだれてるなぁと

思うぐらいのものである。


-


そんな犬女ちゃんが

犬らしさを取り戻すのに

絶好の学校行事が

一月には存在していた。


校内で行われる毎年恒例の

マラソン大会がそれである。


校外の決められたコースを

男子は十キロメートル、

女子は五キロメートル、

各学年の男女分けて走るという

学校の伝統行事みたいなものだ。


『マラソン大会というのは、

どこの学校でも

なぜこのクソ寒い時期にやるのか』


寒いからこそ温まるためにやる、

それはわかっていても、

去年、寒さに震え、

鼻水垂らしながら

マラソン大会に参加していた純心は嘆く。


夏場の暑い盛りにやろうものなら

熱射病や日射病、脱水症状で

倒れる者が続出するというのはわかるのだが、

せめて秋ぐらいにして

もらえないものだろうかとも思う。


-


「さすがに

チャンが参加したら

勝負にならんからな、

チャンには一緒に伴走して

みんなの応援係をやってもらおう」


熱血体育教師の剛田ごうだ先生にも

ようやく最近やっと

犬女ちゃんが人間ではないということを

わかってもらえたようだ。


『みんなの応援係』


その言葉に目を

キラキラ輝かせている犬女ちゃん。


たいがいこうときは

いろいろやらかしてくれるのだが、

今となってはそれもみんなの

楽しみのひとつになっている。

そのはずだ、多分。


-


マラソン大会、

二年男子のスタート前、

いつもの体育会運動部の連中は

円陣を組んでやる気まんまん。


「いいかみんな、

犬女ちゃんの尻を追っかけるんだぞ!」


「あのペースについていければ

ダントツで優勝間違いないなしだからな!」


「犬女ちゃんのお尻を

バックショットで拝める

最大のチャンスだからな!」


「運動部の名誉のためにも

ここは一位にならないとな」


「下僕としての名誉のためにも

ここは尻を追い回さないとな」


『どっち目的なんだよ、一体』


一位を目指すガチ勢と

犬女ちゃんの魔力に魅入られてしまった

ガチ勢とが入り混じって、

わけのわからない

カオスな状態になっている。



純心は足が速いわけではないが

かといって遅いわけでもない、

ランクをつけるとしら中の上ぐらいか。


ただ毎朝犬女ちゃんと散歩しているぐらいで

毎日運動しているわけでもないので、

意気込みなども特になく

無理せずゆるい感じでいくつもりでいる。


『それなりの順位で完走出来ればいいかな』






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