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犬女ちゃんとガールズバンド(2)

『この人達、

ギターとか弾けるのか?』


純心はいろいろと

心配をしていたが、

そんなのはまったくの

杞憂だった。


早速、練習を開始しよう

ということになり、

体育倉庫の荷物をどかして、

機材を運び込み、

簡易スタジオをつくって、

そこで練習をはじめることに。



「弦楽器はバイオリンぐらいしか

習っておりませんでしたので、

少し不安ですわ」


お嬢様はエレキギターを肩にかけ、

コードをアンプにつなぐ。


「あら、

私はバイオリンの他にも

アコースティックギターも

少し習っておりましてよ」


「でも弦楽器ですから、

遥さんにもすぐ弾けるように

なりましてよ」


生徒会長が少し教えると、

お嬢様はあっという間に

ギターが弾けるようになっていた。

しかも超高速早引きが出来るレベルで。


そうなのだ。

この人達、普段が

あまりに天然ボケ過ぎて

すっかり忘れてしまっているが、

小さい頃から一通り

すべての習い事をこなし、

英才教育を受けて来ている

スーパーレディの

ご令嬢達なのだ。

どんなに頑張っても

人間どこかに偏りが

出てしまうものである。



「となると、

あたしはやっぱり、

ドラムかなー」


夏希は座って

ドラムを叩きはじめる。

さすが運動神経抜群の

夏希だけあって、リズム感も

体力的にもバッチリだ。



「私も小さい頃、

エレクトーンやっていたので、

キーボードなら出来ます、多分」


何がびっくりするかと言えば、

これまで散々大人しい

と言われ続けた図書委員が

参加するのが当然であるかのように

やる気になっていることである。


それはきっと

いいことなのだろうけど、

最近あまりに積極的過ぎて

驚きを隠せない純心だ。


-


このままではギターが二人で

ベースがいないので、

どうしようかということになる。


だが、いつの間にか

紛れ込んでいたのか、

小夜子先生がベースを

弾きはじめる。


純心は思わず吹き出した。


『先生、ガールズハンド

なんですけど、【ガールズ】』


ガールズというからには

少女でなくてはならず、

一人だけ二十代後半が

どさくさに紛れ込もういうのは

少々痛い。


しかし、

ベースもいないので、

まぁいいかといつものように

雑い決まり方でベースは

小夜子先生ということになる。


小夜子先生のゴリゴリいわす

重低音のベースは、

もはやデスメタルレベルで、

殺意すら感じる。

やはり人間性が出てしまう

ものなのであろうか。


-


練習の休憩中、

夏希がいろいろ決めよう

と言い出した。


「衣装はどうするの?

もしかしてまたスクール水着?」


『やめてあげてー

スクール水着の

ライフはもうゼロよー』


スクール水着で演奏する

ガールズバンドというのも

なかなか斬新なのかもしれないが、

今回は学校公認でもあるので、

さすがにそういうわけにもいかない。

純心は胸を撫で下ろす。


ちょうど文化祭の準備で、

メイド服があるので

今回はメイド服で

撮影することになった。


-


「あ!あと、バンド名はどうしようか?」


PVを撮るだけだから、

バンド名などなくてもよいのだが、

こういう話はみんなですると

結構盛り上がる。


そこで、各人思い思いの

バンド名を挙げて行く。


「ワンワンワンダフル」


『お嬢様らしくて、可愛らしいけど』


「お風呂ガールズ」


『それ、ピンクのお店で

働いてる人みたいになっちゃうから!』


犬女ちゃんの

お風呂係メンバーだと

言いたいのはわかるが、

いろいろと誤解を招くだろう。


「地獄の番犬ケルベロス」


『図書委員も、もしかして厨二?』


読書好きの読書にラノベが

入っていても不思議ではない。


「犬女さまと犬奴隷達」


『名前だけですでにR18だから!』


一人だけ発想が『ガール』じゃなかった。



結局、

犬女ちゃんメインのバンドであるし、

犬女ちゃんと仲間の美少女達ということで、

バンド名は『犬女ちゃんガールズ』になった。

一人だけ少女ではないのが混ざってはいたが。



練習が再開されると、

みんな慣れて来て

どんどん演奏が

よくなって行くのがわかった。


当然、

純心はガールズバンドには

参加出来ないわけだが、

なんだか自分でも

やってみたいような

そんな気分になってくる。


そんな感想を漏らすと、

「あなたには舞台がありましてよ」

と生徒会長に突っ込まれて、

舞台のことを思い出して、

気分が重くなる純心だった。







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