犬女ちゃんと部活体験
熱血脳筋体育教師、
剛田先生の命令で、
運動部の部活体験をすることに
なってしまった犬女ちゃん。
放課後になると、
早速いろいろ運動部を
見て回ることに。
まずは女子バスケットボール部から
行ってみることにする。
以前 3 on 3で大技を
見せたことからも期待がもてる。
ドリブルが出来ない犬女ちゃんは、
パスをもらうと、ボールを持たずに
そのままボールをはたいて
味方にパスを出すという技を
修得してパサーも出来るようになる。
『それ
有名な少年バスケ漫画で
やってる奴だからー』
相手を見ないで
ボールを味方にパスする
ノールックバスも
犬女ちゃんの得意技となった。
なにせ嗅覚だけで、
コート上の全員がどこにいるか
完全にわかるのだから、
わざわざ相手を見て
位置を確認する必要がない。
そして味方パスからの
アリウープでゴールを決めまくる。
「この子人間だったら、うちの部
全国大会行けるんだけどなぁ」
パスケ部顧問も、思わず
嘆かずににはいられない。
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次は、
女子バレーボール部に行ってみる。
ここもビーチバレーで
頑張って活躍していたので
そこそこはやれるだろう。
ボールを握る必要がない
このスポーツは、
案外犬女ちゃんに
向いているのかもしれない。
そもそも瞬発力と俊敏性では、
犬女のほうが遥かに
人間を凌駕しているのだ。
犬女ちゃんは、
器用にすべてのボールを拾う。
すべて顔面レシーブ、
もしくは物理的に頭を使った
レシーブだったが。
そしてスパイクも顔と
物理的に頭を使って、
強烈なスパイクを叩き込む。
俊敏性を活かした
速攻が得意なようである。
しかし純心はハラハラ
ドキドキしながら見ていた。
顔面レシーブで、
犬女ちゃんの綺麗で可愛い顔が
潰れてしまうのではないか。
物理的に頭を使ったレシーブで、
犬女ちゃんの頭が
馬鹿になってしまうのではないか。
激しく頭を振るので、
脳震盪を起こすのではないかと、
気が気ではない。
「この子人間だったら、
全国大会行けるんだけどねぇ」
バレー部顧問も、
バスケ部顧問と
同じことを言っていた。
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剛田先生のススメで、
男子の部活も見学してまわることに。
犬女ちゃんの身体能力は、
人間全般を凌駕しているので、
男子相手でもそれほど引けを取らない。
「犬と犬女がサッカーをする場合、
前脚でボールを蹴るのはハンドなのか、
それは人類の永遠のテーマだからな」
剛田先生は腕組しながらそう言うが、
そんなことを考えたことがある
人類がそれほどいるとは思えない。
男子サッカー部員は、犬女ちゃんと
体を接触させたいがために、
コンタクトプレーを試みる。
やはり特に胸で押し合うとか、
男子ならばラッキースケベを
期待してしまうのも道理であろう。
しかし、検討虚しく男子サッカー部員が、
犬女ちゃんに触れることはなかった。
そもそもボールを持った犬女ちゃんに、
追いつくことが出来ない。
「やはり犬女がサッカーをする場合、
前脚はハンドにしないと勝負にならんな」
剛田先生は腕組したまま
うんうん頷いている。
『そもそも犬女が
サッカーする機会なんて、
そうそうないだろ』
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野球部は、
ボールもバットも
握れない犬女ちゃんには
一番向いてないかもしれない。
それでも、
バットを口に咥えて打つ、
ボールを口で取るという
方法で頑張ったが
硬球キャッチで
歯が折れでもしたら、
可愛い犬女ちゃんが台無しなので、
純心がすぐに止めさせた。
歯抜けの犬女ちゃんは
見たくないし、犬女の差し歯が
この世に存在するかもわからない。
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水泳部は、
海に行ったときと同じで、
犬かきと背負泳ぎしか出来ないので、
まぁお察しだった。
それから、
テニス部、卓球部、柔道部、剣道部と
その他部活を次々と見て回る
犬女ちゃんと純心。
陸上部では夏希と
一緒に走ったりもした。
犬女ちゃんもそれなりに
楽しそうだったので、
大会に出るとかを考えなければ、
案外部活もいいのかもしれない、
そんな風に純心も少し思う。
しかし、改めて純心は気づく。
『なんで俺が部活入ってねーのに、
犬女ちゃんが部活入るんだよ、
どう考えてもねーだろ』
結局、
犬女ちゃんの部活入部は、
各運動部の練習で
人が足りないときなどに
助っ人として時々参加する、
という程度ことにしてもらう。
純心は剛田先生を説得するのに、
相当の労力を費やしたという。




