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犬女ちゃんと夏休み最後の日(1)

夏休み最後の日。


純心は犬女ちゃんと家で

ごろごろじゃれ合っている。


この夏休みは本当に

いろんなことがあった。


夏休みの前半はまだ母がいて、

夏祭りや花火、海にも行ったし、

ジャガイモの妹の愛ちゃんや

ちびっ子達と知り合った。


本当にいろんな人と出会った。

今までの人生で、

こんなに大勢の人と

身近に接したのは

生まれてはじめてのこと

ではないだろうか。


それまで

どこか距離があった母とも

その距離を少し

縮めることが出来た。


-


犬女ちゃんはそんなことを

考えている純心の顔を

笑顔でじぃっと見つめている。

大きな瞳を輝かせながら。

純心もそんな犬女ちゃんを

じぃっと見つめる。


そもそも犬女ちゃんが

この家にやって来てから、

一緒に暮らすようになってから、

ずっと人との出会いの連続だった。


いつか母が言っていた、犬女には

人間同士のコミュニケーション、

人間関係を活性化させて、

円滑にする効果があるという話は

本当なのかもしれない。

そう信じたくなるようなことばかりだった。



夏休みの後半は、

犬女ちゃんと一緒に

いろんなことをした。

電車や自転車に乗ったり、

買い物に行ったり、

ファミレスやコンビニに

一緒に行ったりもした。


そういえば動画を撮ったりもしたが、

あれは黒歴史にしておいたほうが

よいのではないだろうか。


本当に楽しい夏休みだった。

終わってしまうのが寂しいぐらいだ。


そう言えば、この夏休みの間、

頭が痛くなるようなことも

ほとんどなかった。

やはりすごく楽しいときは、

過去とかそんなことは

どうでもよくなってしまうのだろうか。


-


明日から学校だと思うと

また憂鬱だ。


小学生みたいに、このままずっと

毎日夏休みだったらいいのに

と思ってしまう。


新学期が憂鬱なのは、

一学期の最後、

あの事件があったからでもある。


人の噂も七十五日というから、

四十日余りが経過した今、

残り三十五日を

我慢すればよいということか。


そもそも学校での人間関係は

希薄だったのだから、

人に白い目で見られても

大して苦痛ではないだろう。


しょせんは自分とは

まったく関係の無い人間だ。

見えないふりをすればいいし、

聞こえないふりをすればいい。

気にしないふりをして、

我慢していれば、

七十五日過ぎた頃には、

みんな忘れてくれるだろう。


そんなことを考えていたら

ちょっと癒しが欲しくなって、

純心は犬女ちゃんの柔らかいほっぺを

ぷにぷにしたり、むにむにしたり、

いじってみた。


犬女ちゃんは、

何かを察したのか、

首をかしげながら

純心に笑顔に向ける。


こんな可愛い犬女ちゃんが、

そばに一緒にいてくれるのだから、

まぁ、なんとか

生きていけるだろう、俺は。


いいことが、悪いことが、

いろいろなことがあっても、

それに尽きる。


-


純心と犬女ちゃんが

そんな夏休み最後の日を

過ごしていると、

生徒会長が突然

家に押し掛けて来る。


今日は生徒会長が

犬女ちゃんのお風呂当番ではないのに、

どうしたのだろうと

純心は不思議に思う。


生徒会長は興奮して、

活き活きと目を輝かせている。


が、生徒会長が

そんな顔をしているときは、

結構ろくでもないことを

言い出すときであると、

純心は最近わかるように

なって来ていた。



「喜んでくださって!」


生徒会長は意気揚々、

声を弾ませる。


「犬女さんが!」


「学校に通えるようになりましてよ!」


純心には生徒会長が

何を言っているのか

よくわからなかった。


「は?」


「…」


「はぁぁぁぁぁあ?!」


大声を出す純心を犬女ちゃんは

不思議そうな顔で見つめている。

その大きな瞳で。






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