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第十一話 私はアリス!よろしくね

「因果応報とはまさにこのことだね〜。

タロ君もこれを機にその暴言やめたら?」


いつもと変わらない日常。

だが、今日からは変わる____ようだ。



_______数時間前。


昨日の体育の戦闘実践授業のせいか、

身体が痛い。

特にダメージは無かったのだが、急な速度展開に身体がついていかなかったのだろうか。

地面を強く蹴った際に足を痛めてしまったみたいだ。


今日の朝も来る時に足を引きずりながら、

学校に登校してきたのだがやはりどうしても辛い。

この朝のHR前の読書をする時間帯でも読書をしている振りで本当は痛みのことで一杯だ。


だが、俺はふと気づく。

自分の魔法について。


確か治癒魔法がカンストしていたはず。

これくらいの怪我であれば、カンストに達しているのなら簡単に治りそうだが、そうでもないらしい。

この静寂に包まれた教室内での魔法詠唱は流石にまずい。


治癒魔法で相手に危害を加えない魔法だったとしてもだ。

確か、学校の校則では無許可の魔法展開はダメと書かれていたはず。


何にせよ、この空気の中で魔法を展開するための詠唱をいう覚悟は俺にはない。

よかった、小心者で!!


心の葛藤をかれこれ十分ほど続けていると、

ここに来て初登場の担任の東丸先生が教室に入るなり、大声で読書をやめるように喚起した。



「……君らに朗報だ!!

転校生が今日からこの教室に入ることになったーー!


女の子だ、喜べ!!」


拍手喝采の中、ひょっこりと教室の扉を潜って出てきたのは身長の小さい白髪短髪の女の子。

同級生と言うよりは簡単に言えば小学生のように見えるし、それに発達してない胸がそうだ!何が悪い!とでも言うかのようにこちらを見つめてきている。


……ん?慎ましい胸が……?

近く?


ぐはっ!!!



うん、痛い。

痛くないんだけど、突然のことで痛い。


転校生の女の子は地面を強く蹴って飛び上がり、俺へ顔面ドロップキックを放っていたようだ。

だが、防御力、カンストの俺に物理攻撃など食らってないようなもの。


俺は彼女の真新しい上履きの靴底の冷たさを顔で噛み締めながら、待つこと数分。

どれだけくっついてたんだよ、と言いたいくらいには彼女の上履きとキスしていた。



「……私の胸はそんな理由で小さいわけじゃない。」


……へ?

口には出してないのに、この子、何で分かったの?

まさか……!!



「うん、私は、私の自然の中に入った人たちの心の中を覗くことが出来るの。


ところで貴方、名前は?」


クラスも唖然とする中で能力紹介と俺に名前を聞いてきた少女は、冷たい視線で俺を直視している。



「神代光輝……だけど、君は?」



「神代君ね、よろしく。

私は有栖雪(ありすゆき)


アリスでもユキでもいいよ」


ようやく自己紹介か。

良かった良かった。


これでクラス的にはハッピーエンドだな。



「それじゃ、席はね〜。

神代君の前の席空いてるからそこで!


ちょっとうるさすぎる久我君の隣だけど、気にしないでね!」



「さらっと傷つく言葉やめてください!!

俺はうるさいんじゃなくて、テンションが高いだけなんだよ!!」


久我は怒って担任へのヤジを飛ばした。



「……うん、じゃあ、寝る」


ちょっ!?

席についていきなりご就寝!?


何でぇぇぇ!?!?


なんて無気力な少女なんだ!!



「……んあ、転校生はもう寝てんのかよ死ね!つか、こいつ身長も胸も貧しいのな死ね!」


タロちゃんが俺の席に近づいて来るなり、

寝ている彼女を見ながら言った。


こいつはアホだ。

流石に寝てるわけがない。

彼女に丸聞こえもいいところじゃないか。



_______その瞬間だった。

彼女の真っ白く綺麗な肉つきの足が、彼の顔面を捉え、教室の壁に大穴を開けるまでに吹っ飛ばしたのは。



「……そりゃそうだろうよ。

タロ君もこれを機にその口癖直せば?」


久我が呆れた視線で頭から血を流し、壁の中からひょっこりと出てきたタロちゃんに言った。


うん、俺もそう思う。



「……私の胸と身長は好きでこうなってるわけじゃないんだから!!


このプライバシーのカケラもない男、もう一度蹴りを食らいたい?」


え、そっち!?

死ねって言われたことじゃなくて、身長と胸か。まあ、そうだよな。

本人気にしてるよな。



_______ギリッ!

アリスが俺を睨む。

そう言えば、心を読むことができるんだったな、これは厄介……。



「……んだよ、不意打ちなんか女のやることじゃねえな!!ぶっ殺してやる!」



ちょい、タロちゃんやめよ!?

それを言うなら男のすることじゃねえ!だから、女の子にはその理屈通用しないよ!?



_______刹那。

彼の頭上に光速で現れたアリスはかかと落としでタロちゃんを床にめり込ませる。

そして……。



「あれ?こんなところにいい、サンドバックがあるね〜〜!じゃあ、使おうかなっっ!」



彼の身体の骨を粉砕するような惨い音と乾いた音が連続して教室内を濡らすと、グッタリとして意識を失ったタロちゃんへ最後に!と言わんばかりのドロップキックをお見舞いすると、彼女は自分の席へ戻った。



「……やべえ。

アリスちゃん、やばいなー」



「……何が?

私の何がやばいの?」



アリスの隣の席の久我が次の標的?

彼女はギリッと彼の返答を待った。



「……何も?

俺のは独り言だから気にしなくて良いよ」



_______瞬間。

先程と同じような蹴りが彼の顔面に放たれたかと思えば、流石元二位の実力者。

足を片手で抑えていた。



「……何、やるの?」


本気で手を出された時の久我はなぜか嫌な予感がした。


うん、逃げたほうがいい。



本能がそう告げているような気がした。



「……ん、結構やるのね。

今の蹴りだけで5パターンの切り返しを考えてるなんてなかなか、流石元二位ってとこなのかな」



「……ちぇっ、人の心の中覗くなよ。

この学校じゃ、戦闘は日常茶飯事だけど、不意打ちは良くないなあ。


やるなら、マナー守って闘技場でやろ?」



すると、アリスは一礼して申し訳なさそうに。



「ごめんなさい。

私、昔から怒りやすくて、ムカつく奴片っ端から締めてたから……」


それであのタロちゃんの末路か。

流石に久我には当たらなかったな。


久我が見た目通りのお子様じゃなくて良かったよ本当に。



「……久我が見た目通りのお子様じゃなくて良かった。だってよ、私の後ろの人が考えてた」



「……神代ちゃん、それはどういう意味!」



こいつチクりやがった汚ねえ!!

自分の能力が心を見透かせるからって狡い!


クッソ……可愛い顔してとんでもないことしやがる!!許せねえ!



「許さなくてどうするの?

私と一戦交えてみる?」


いやいやいやいや、俺は平穏に暮らしたい人間だからいいわ!!



「ふーん、二位なのに変だね。

もっと強さを求めてるから闘志燃やして、二つ返事で承諾してくれるかと思ってた」



どこの負けず嫌い系主人公だよ!!

俺はいいっての!


「……ん、じゃあ寝る」



いやいや、もう授業まで一分ないから!!

起きろって!!



「嫌だ……じゃあ、神代君、代わりにノート取っといて〜〜」


そう言って彼女は寝てしまった。


仕方ないので授業内容を2つのノートにまとめる作業を始めると、久我がニヤニヤしながらこちらを見てきている。

何が言いたいのかは大体わかるが、仕方ないだろ!頼まれたらやりたくなるんだよ!!



今日の授業内容は詠唱魔法と基礎魔法についてだ。


詠唱魔法は、自分の魔法武器に有された特殊な魔力を詠唱で発動させ、放つ魔法。


魔法武器にも様々な種類、形があり、強さによってランク付けされている。

上から《伝説種(レジェンダル)》《幻獣種(アビス)》《魔法種(ステッキ)》《通常種(ウェポン)》となっている。


最下層の《通常種》に関しては魔法武器自体に魔力は秘められておらず、自分の魔法を纏わせて戦うのが一般的だ。


因みに俺のレーヴァテインは《伝説種(レジェンダル)》らしい。

久坂部魔法高等学校が有している《伝説種》計4本の中の一つだそうで、今では俺の所有物だったが前はこの学校の所有物だった。



どうやって取得したのかさえも理解してないんだがな。記憶がなさ過ぎて……!!



次に基礎魔法だ。

基礎魔法は、詠唱も要らない基礎的な魔法で、一般人でも訓練すれば放つことができるようになる。


基本的に属性を持っており、

光、闇、水、風、火、氷、土の属性に分かれている。


それらの魔法を組み合わせて、強力な魔法にすることも可能だが、それなりの技術がいるという。



_______俺は、今日やった授業の内容を全て2つのノートに纏め終わると、彼女の机の上にそっと置いて、教室を後にしたのだった。


投稿遅れてすいません!

決して、エタってるわけじゃないんです!!


仕事とか色々重なって……言い訳はやめましょう!

長々とコメディが続きます(゜∀゜)

次回もお楽しみに!

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