第九話 赤蓮たる所以、見せてやる!
投稿遅れてすいません。
「身動きが取れない…ッッ!
ぐ…ぐはっ…!!」
複数の蜘蛛の糸で絡め取られた俺は、
久我の蹴りを飽きるほどお見舞いされた。
蹴られるたびに肺が苦しくなり、呼吸を求めるが故に肺が空気を吸い込もうと必死になっている。が、すぐさま蹴りはやってくる。
段々、意識が朦朧としてきて、もう闘える自信がない。
いくら踠いても抵抗しても千切れない、離れない糸。
何だよ、これ。
負け戦じゃねえか、ハナっから勝てなかったのかよ。こんなの、おかしい。
久我祐一に勝ちたい。
負けるのはゴメンだ。
日常が普通でも1番になりたい俺は、必死に踠いた。必死に、必死に。
_____すると、俺の心の中で誰かが囁いてくる。
「汝は我……今こそ解き放て!!
焔の赤蓮たる力を!!」
俺はその声に感化されたのだろうか。
必死に踠いた末に負けるのであれば、それで良い。
けれど、何もしないので終わるのは嫌だ!!
「《今こそ赤蓮たる所以を解き放とうか。
燃えるは焔、炎の囁きに貴様は永遠に燃え続けるが良い!!赤蓮の一振り!》」
俺が叫んだ瞬間。
地面を突き破って噴出する炎の柱はうねりを上げて、久我を追尾する。
「何だよそれ!!
流石、その武器は別格だな!!」
久我は必死に避けることを行っているが、焔の柱は増えて、彼の逃げる場所を無くす。
ただ、俺は思った。
この魔法、自分が1番損する。
敵を追尾してくれることは有り難いが、久我が逃げすぎてもはや逃げ道が存在してないこの状態を俺目線で言うなれば、足の踏み場がない。
自分で出現させたら効かないとかそういうゲーム仕様なことがこの世界で起きるわけもない。
現に、焔の柱から放たれた熱気が物凄く熱い。
柱に囲まれた彼はもう抵抗もしていない。
諦めたのだろうか。
俺はフィールドに座って待つのみ。
相手の息の根を止めるのは、もう俺じゃなくても焔の柱がやってくれる。
ただひたすらにそう信じて。
「《全ての魔法を無に。
魔法の根源とは魔力、魔力とは即ち豪よ。
豪は淘汰されるが良い!豪の淘汰!》」
観客席で誰かが叫び、魔法を使用した。
_____すると、忽ち、焔の柱は消滅し、久我に逃げ道と正気を与えてしまった。
「観客席から魔法なんてアリかよ!!」
「……いや、無しだよ。
この勝負は神代君の勝利だね!」
観客席から空中へ飛んだ白衣で眼鏡をかけた黒髪の男は俺の目の前に着地するなり、笑顔でそう言った。
この男は誰だ?何か見たことがある。
「二位に昇格おめでとう!
それにしても、君の魔法、凄いね!
焔の柱を操る魔法なんて見たことないなあ、流石、この学園の二位様だよ!
いやあ!いやあ!!」
やけにテンションが高いな。
このテンションに乗っていけるか心配だ、というか無理だ。
俺はこちらを見ながら歩いてくる久我から視線を外した。
「何で神代、目逸らしたの?
まさか、俺が負けたから怒ってるとか?
そう思ってんの?
ナイナイ。あの負け方じゃ、怒ることも出来ないよ。ただただ圧巻って感じでさ!!
いやあ、でも君とこんなに話せたのは久しぶりで、しかも前はよくやってくれていたのにやってくれなくなってしまった決闘も出来て!もう満足だよ!」
その言葉には何かが籠っていた。
俺の知らない、ここにいた俺に何があったのかを示しているようなそんな気持ちに。
でも、この時の俺はまだ気づけない。
自分にかかった呪いを。
_____翌日。
校内に入った瞬間、一人のお下げの女の子に声をかけられて、俺は立ち止まった。
「おはようございます!
二位に昇格おめでとうございます!!
神代様!私、お弁当作ってきたんです!
良かったら!」
「え?良いの?
あっ、ありがとう!!」
よっしゃ!と内心喜びながら弁当を受け取ると、その様子を見ていた複数の女性の瞳に炎がついた。
「えっ、神代様がお弁当を受け取ってくれるの!?」
「私も、私も!」
「神代様ぁぁぁあ!!」
え?何モテキ?
よく分からないが、数十個のお弁当を貰い、こんなに食べきれないなーと思いながら俺は途中で職員室に寄って、紙袋を貰うと紙袋に全てのお弁当を入れてから教室に向かった。
「けっ!!
おはよう、死ね!!」
俺の持っているものを早速覗いたタロちゃんは羨ましそうに皮肉と挨拶を同時にしてくる。もうこれは当たり前なんだろう。
良ければ、一つ受け取ってほしいものだが、こういうのは女の子に見られてはいけないんだろうな。
家に帰って、全部食べて食器も洗って返そう。
今日の夕飯は浮くだろう。
「おはよう!久我!」
「おっ、お、おはよう……!
神代ちゃんんんん!!!」
「神代ちゃん……?」
教室に入ってきた久我を笑顔で出迎えると、彼は何故か泣いてしまった。
号泣に号泣を重ね、号泣で和えて号泣したようなよく分からないほどの涙を流している。
「神代ちゃんが挨拶をしてくれたよおおおおおおお!!」
「ま、マジかよ!神代!!
お前、この夏休み中に何があった!?」
「頭でも打っちまったのか?!」
クラスがそれだけで騒めいている。
そんなに喋らないキャラなの?
てか、何なのこれ。
訳がわからないよ。
今日は学校の日直なようだ。
久しぶりの日直に何故か心ウキウキしていると、やはり顔にも出ているのだろう。
担任の先生もこちらを見て、驚愕した表情を浮かべている。
「それじゃ、神代君。
お、あ、挨拶をしてください」
「起立!礼!着席!!」
何なんだこの反応は。
だんだんムカついてきた、俺は普通の高校生で普通なんだよ。
なのに、このクラスの反応はなんなんだ?
イジメか?いや、そういう雰囲気ではない。
少なくとも、奴らは本気で驚いてやがる。
俺は自分の中で馬鹿と認識しているタロちゃんに聞いてみることにした。
_____授業終わりの休み時間。
理科室前の廊下、人気のない場所をわざと選んで彼に問い詰めようと俺は口を開いた。
「ねえ、タロちゃん。
夏休み入る前の俺ってどんな印象だった?」
「んー、六月までは普通だったな。
けど、六月の終わり頃に性格がコロっと変わってよ。
明るかった性格がいきなり暗くなりーの、
久我のやつの決闘を嫌だ嫌だと断って俺ら全員を無視しやがった。
なんか事情があるのかと思ったけど、
聞くに聞けなくてな。すまなかった。
野暮用は済んだのか?
俺らに言えないようなことなら言わなくても良い。
けど、お前の周りにはお前を気遣ってくれる人間が沢山いるんだ。
だから、安心して頼れよ。
俺もな!」
彼の言葉を聞いて、少しだけ胸の中でホッとしていた。
安心しきったとも言うのだろう。
だが、疑問は募るばかり。
何故、俺はそんな態度を取るに至ったのか。
調べる方法は何にせよ、幾らでもある。
学校の生徒の情報ならお任せあれ!の人物がいると言う噂も聞いた。
まずはその人に聞いてみよう。
けど、暫くは動かないで楽しい日々を築いていきたい。
なんでか分からないが、俺の本能はそう告げるかのように静かになっていた。
キーンコーンカーンコーン。
「あっ、やべえ!
次の授業、体育だ!」
「マジで!?
着替えてないし、体育館行かなきゃ!」
俺とタロちゃんは全力で教室に戻り、全力で体操服に着替えると、体育館まで走り抜けた。学校の設備がある場所までは、現実世界と認識している俺の済んでいた世界と合致していることから体育館までの道は分かる。
速攻で体育館内に入ると、
光速で飛んでくる拳が俺の顔面へ迫ってきた。
_____が、賺さず避けて見せると、横に居たはずのタロちゃんが居ない。
後ろを振り向くと、体育館の扉をぶち破り、校舎のある本館の壁にめり込んで、俯いているタロちゃんの姿があった。
「流石は二位の実力だな!!
一年生で二位を取得するとは、この学校の現一位以来だな。
あっ、久我もそうか。」
厳つい身体に白いTシャツ、短パンを履いた筋肉ばかりの大男は思い出したように笑った。
「ちょっと、剛力先生!
俺を忘れるなんて酷いなぁ」
「あはは!
"負けて"今は四位だったね、すまんすまん」
「うるせえ!!」
そんなやり取りを目の前で行われた俺はどう言うリアクションをしたら良いのか分からず、困った表情を続けていた。
「ところで、なんで遅刻したの?」
「ああ、次の授業が体育ってこと忘れてて……ごめんなさい」
「うん、そうか!!
その謝罪は受け取らないでおこう!
今日の体育の授業は、神代君以外の生徒VS神代君の戦闘演習に変更だ!
はははっ!二位なら余裕だろ?」
何言ってんだ、このおっさん。
このクラス、割と強い人多いんだぞ。
久我がずば抜けてるだけで、他にも二桁圏内の奴らはゴロゴロ居る。
なんだよそれ、マジかよ。
俺は目の前の光景にうんざりしたが、
少しだけやる気も出た。
戦えば、何か思い出すかもしれない。
もしかしたら、俺は記憶喪失か何かなのかもしれないからな。
俺は、反対側にいる29名のクラスメイトに集中力を咎め、臨戦態勢に入ったのだった。
仕事等で結局四日後の五日後の投稿に……!
本当に申し訳御座いません!!
これからの更新頻度もわからないので随時、報告していきます。
後、この作品のポイントが100ptに到達しました。ありがとうございます!!
これからもよろしくお願いします( ´∀`)




