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少年と考え事

やっぱり変態キャラって必要なのかな…

「お~い、こっちだこっち!」

 校門前で大きく手を振っている爽やか風のイケメン。

「うるさい。お前はバカなのか?それなのになんでこんな進学校に入れたのか疑問だ」

「可愛い女の子がいっぱいいるからに決まってるじゃないか!」

「煩い変態」

 やはり残念な野郎のようだ。

「…たしかお前は池だったか?」

「僕のことは気軽に慎吾って呼んでよ」

「慎吾じゃなくて紳士の方がぴったりだな」

「確かに僕は中学時代男子に紳士と呼ばれたね。幼女を愛してやまない変態紳士と!」

「ああ、お前は変態紳士だ。誇りを持っておけ」

 爽やか系のイケメンであるが正体はただの変態思考だだ漏れの変態のようだ。

 こいつは多分黙ってればモテる。

 ってかこいつロリコンなのか。

「おい、池。なんで俺は初めて会ったやつに校門に呼び出されにゃならんのだ」

「こ、コウモン……なんて破廉恥な言葉を使うんだ君は!」

「絶対解釈間違えてるよなお前、と言うか話をそらすな」

 こいつは極度の変態のようだ。

 何故か周りの視線が痛い。

「ごほん。駅前のミャクドナルドで語り合おうじゃないか」

「おい、ちょ、まてなんで俺は今日初めて会った奴にこんなをしなければいけないのか15文字以内で答えろ」

「僕の紳士レーダーが反応したから」

「見事!――じゃねーよ!なんでそこだけ冷静に答えてるんだよ!」

「ちなみに半径3メートル範囲で反応する」

「無駄な解説はいらない、俺の襟持つな、服が伸びるから」

「ちなみに別モードでは見た女子のスリーサイズを知ることができる」

 そうして俺は謎の顔見知りにミャクドナルドに連れて行かれるのだった。

 変態紳士が高校初の友達って……





 何故か唐突に会い、変な語らいに巻き込まれ、リア充への恨みを2時間語られた。

 途中、池の友人を誘い、さらに語られた。

 池の中学時代の友人だという法木と言う奴はいかにもムッツリと言った感じで池との変態トークを盛り上がらせていた。

 心の中だから言うがこういうのはちょっと新鮮だ。

 中学校時代はひたすら格闘技三昧だったので友人と話すというのも少なかった。

 よくマネージャーが話しかけてくれたっけか。

「それにしても七瀬って可愛いよなー」

「ああ、アイツと中学校同じだった俺的にはあいつの50人切り伝説がさらに記録更新するのだろう」

 七瀬と同じ中学校だった池と法木はあいつの凄さを語ってくれた。

 ちなみにこいつらもアタックしたのだが見事に玉砕されたらしい。

「だって、告白を断る時のフレーズがいつも『私にはあのバカぐらい骨のある奴じゃないと付き合う気にはなれない』って一点張りだ」

「あのバカって結局誰も知らないんですよね」

「そんな奴の顔を見てみたいぜ」

「少なくともバカなんだからうちの高校にはいないだろ」

 そう馬鹿笑いをする。

「それと―――」

 ひたすらもてない男トークは続いた。




 高校の入学祝に両親から送られてきたケータイ電話。やはりメディア慣れがしておらず、使うとしてもラジオとして使うくらい。電話帳には家族と池、法木、それと祖父の所の門下生数名。この位だ。

 俺は元々、兄弟のいない一人っ子だ。

 それでもさびしくなかったのは多分同年代のメイドさんがいたからなんだと思う。

 ついさっき両親から、一人暮らしは大丈夫?とか、入学式いけないでごめんね。などの親らしい電話がかかってきた。

 2LDK、リビングと個室一つ。キッチンとか、風呂トイレもついている。

 引っ越し祝いにもらったテレビ、洗濯機、ベットその他もろもろ味気ない部屋を少し彩っていた。

 こっちに来てからまだ2日目なので部屋にはダンボールが散らかっている。

 この部屋はどうも広すぎる。

 祖父母の家では6畳分の広さの部屋をもらっていたけれども広すぎる気がする。

 リビングの冷蔵庫を開け一言。

「なんもねえ」

 祖父母の家は家から結構離れた距離にコンビニがあり、家から少し離れたところには商店街みたいな所があった。

 なのでコンビニに行く習慣などなく、買ってきたもので料理をするのが基本だった。

 ちなみに祖母に「筋がいい」と言われ、調子に乗った俺は調理が割と上達した。割と乗せられやすい体質なのかもしれない。

 2週間違うのメニューを作れるくらいはうまいはずだ。

 そうと決めれば無駄に伸びきった髪を池の真似をして髪を上げ、ウザったいメガネを外し、駅前に商店街があった事を思い出し、そこへ向かった。


「らっしゃい、カッコいい兄ちゃん冷やかしなら他の所へ行ってくれ」

「いいえ、なかなか鮮度のいい野菜だと思ってつい足を止めたんです。そのキャベツ結構よさそうですね」

 半農家状態の家で育ったのでついいい野菜を見ると食べでみたくなる。

「おお、兄ちゃん若いのに分かってるじゃねえか!」

 八百屋のオッチャンに気に入られたようだ。

 それでそのキャベツについて熱く語ってくれた。結構標高の高い所で作られた有名なものだという。

 標高が高いと雹とか霜がこわいとか。

 思わず共感。

 熱く語ってるうちに日が暮れ始めていた。

 池とかと別れて家に着いたのが4時。

 一時間ほど語っていたようだ。

「お、わりいな兄ちゃん詫びにサービスしとくよ」

「ありがとうございます」

 キャベツを半玉買い、その他にもキュウリとかトマト、色々買った。

 やっぱりこういう所は値切ったりして安くなるから嬉しい。

 ホクホク顔でちょこちょこ回っていった。

 色んなところで声をかけられ、話し込んでるうちに若いのにしっかりしてるとか、うちの息子とトレードしてもらいたいぜとかいろいろ。

「ありがとうございます、ちょっと今晩は豪勢な欲時になっちゃいそうです」

「良いじゃねえか、お前さんは育ちざかりなんだろうから」

 商店街の皆さんに色々と話をしてるうちにすでに六時。

 家に帰り夕食を作ろうと思い、マンション四階の右角から3番目の部屋のカギを開けようとすると、隣から同い年くらいの女子が出てきた。

 美少女である。色に混じりけがなく癖のない綺麗な黒髪でうなじのあたりで適当にまとめられ、黒の縁の細いメガネが妙に見合っている。

 そゆ言うか七瀬だった。

 軽く頭を下げ部屋へ。お隣さんに挨拶するのはちょっと田舎すぎる気がしたので却下。

 早く飯作ろう。

 新鮮なものって結構おいしいから。




 家からチャリで数十分の学校に登校し、授業を受ける。

 高校の最初はやはり科目ごとのオリエンテーション。

 シラバスなんか配られたりして今後の予定確認。

 これくらいの授業スピードならついていけそうな気がする。

 午後の授業。

 昨日の段階で決まった委員会ごとに集まらないといけないらしい。

 おとなしく図書室に行く。

 ちなみに池も一緒だ。

 朝から池の変態トークは炸裂し、見た目はいいのにな……と思ってしまうこの頃。

「げっ」

 つい口に出してしまった俺は悪くないと思う。

 七瀬だ。こいつも図書委員だったようだ。

 俺は何回、あいつに遭遇すりゃ気が済むんだ?

 それでもスールーは鉄則。

 池を後ろから押し、視線を集めさせ、自分はそんなに目立たないと言う寸法だ。

「ブツラップっ!?」 

 見事に成功したのだが、この奇妙な声は七瀬に殴られたから。俺がやった結果ではない。軽く『ちょん』ぐらいの強さでやったつもりだ。

 それを池はうまい具合に重心を崩し、七瀬の胸の方へダイブした。

 ある意味、変態の起した結果としては正解だろう。だって嬉しそうな顔で女子の胸へ飛んでいくのだから。

 それを冷静に七瀬は回避し、横から蹴りを入れた。男の勲章に。

 そのまま変態は撃沈し、奇妙な声を上げながら倒れた。

 ご愁傷様。





 それから特になく、2週間ほどが過ぎ、運悪くと言うかなんというか七瀬と図書当番になってしまった。

 この図書館県内有数のジャンル数を張っている所なのだが、使う人が少ない。

 漫画の部類が置いていないのも一つの理由だろう。

 俺は数少ない利用者で、色々読んで楽しんでいる。

 昔から本を読むのは好きだったし。知らなかったジャンルに手を出すのもいいかもしれない、と思い最近はweb小説が書籍になったものを読んだりする。パソコンとかは慣れてないから。

 二人無言で読書。

 正直、居ずらいのだが本が面白くてそれどころではない。

 今読んでいるのは現代ファンタジー系の作品。

 ちょっと、ちょくちょく吹き出しそうになるのを我慢しつつ読む。

 読み終わるとすでに図書室の窓から見える景色は暗くになり始めており、自分がいかに本に集中していたかを実感した。

 もう当番の時間はとっくに過ぎているので帰ろうと思った時、

「…………スー……っん……」

 隣で七瀬が爆睡していた。

 ちょっとその寝顔が新入生代表としていた、あの凛々しい感じはみじんもなく、ただ年頃の女子だなと思った。

 時間も時間なので起こすことにした。

 ちょっとふざけて胸ポケットに入っていたボールペンでカウンターをたたいてみる。『起きろ』と。

 それですごい勢いで起き上がった。

「はっ、ここはどこだ」

「図書室です」

「えっと、平津川だったか」

「はい。用事があるのでお先にお暇させていただきます」 

「あ、ああ」

 なんか言葉のハッキリとしない七瀬を置き先に家へと帰った。

 商店街で買うのは気が引けるが今日はスーパーのタイムセールなんだ!

 


いい感じの区切りがなかったので微妙な長さ。

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