ダンジョンを案内しよう
「それでは、今度、相談させてもらってもいいですか?」
「はい! 任せてください!」
「それでは、日程調整が済んだら連絡しますね。そういえば、菊池さんの連絡先を伺っていなかったのですが」
「あ――!」
「涼音……」
「ち、違うの! お母さん。えっと、連絡先は――」
俺の携帯電話がワンコール鳴る。
「それが私の連絡先になります。あとは……、佐藤さんってSNSとかやっていますか?」
「アカウントは持っていますがグループチャットのようなモノはやってないですね」
「そ、そうですか……。よかったら入れましょうか? 電話だけですと困りますよね? 連絡取るときとか」
「そうですね……」
まぁ、今は絶賛暇人なので、いつでも連絡は取れるが。
スマートフォンを手渡しグループチャットアプリを入れてもらい設定してもらう。
このへんは、おさっさんには大変なのだ。
40歳を過ぎたおっさんは、パソコンでネットやチャットをする世代だから。
「設定できました!」
「すいません。お手数をかけて」
「いえいえ」
手渡されたスマートフォンを見ると見慣れないアプリが一つ。
これが恐らくグループチャットアプリなのだろう。
――佐藤さんへ、これから末永くよろしくお願いします。
そんなグループチャットが流れてくる。
なんだか、俺のところに嫁入りするような定例文だな? と、思いつつ、最近の20代の女性はこんなものなのか? と、思いつつ「よろしくお願いします」とグループチャットを返す。
「これでいいですか? 菊池さん」
「菊池さんですと、お母さんと私どっちか分かりませんので、涼音でいいですよ?」
「そうですか?」
「はい! 私も、和也さんって呼びますので」
「それでは、涼音さん、このチャットで大丈夫ですか?」
「はい! 大丈夫です」
他愛もない会話を続けていると、いつの間にか養老渓谷ダンジョン前の駐車場に到着した。
2週間前まで付き合いのあった木戸商事株式会社のトラックが停まっていた場所を見ると既に木戸商事株式会社の10トントラックが複数台停まっていた。
「木戸商事さんは、多くの冒険者を雇っていますね、和也さん」
「そうですね」
冒険者と契約したという話だったが、見た感じ5人ほどがアイテムボックスから野菜やフルーツを1個ずつ取り出してアルバイトに渡していた。
どうやら、全員、アイテムボックスのレベルは低いようだ。
貝類については、アイテムボックスに入れることはせずクーラーボックスで運んできたようで、息切れしているのが見て取れる。
まぁ、俺の場合は水魔法の応用である氷魔法で貝類を殺して貝と砂を取り除いて納品していたが、クーラーボックスを使っているということは生きている貝を運んでいるという事なのだから新鮮なのだろう。
実際、鑑定で冒険者達を確認した限り冒険者は9人いて、全員が【アイテムボックスI】と【鑑定I】と【剣士I】を習得していた。
レベルは2から3であり、最近、ダンジョンに入ったことは明らかだった。
「雇っている方は、一人を除いて全員、女性なんですね」
「みたいですね。貝類を運んできた冒険者は男性で、農作物を運んできたのは女性ですね」
「――え? そこまで見えるんですか?」
「あ、そうですね」
俺の強化されたステータスは、どうやら一般の人から見てかなり強いらしい。
「それでは、菊池さん。そろそろ、いきますか?」
「はい」
涼音さんの母親である菊池楓さんと一緒に俺は養老渓谷ダンジョン内部へと潜った。




