国際会議(2)
最後の国、日本国が国際会議場の椅子に座ったあと、国際会議が始まる。
集まった国は、G7を含めて十数か国。
所謂、G20であった。
しばらくは、それぞれの国の現状が語られていき議題に上がっていくが、後半になるにつれて国際会議場の空気が重苦しくなっていく。
そんな中で、重要な資源についての議題が話に上がらない事に業を煮やしたトルコのファトマ大統領が声を上げた。
「皆様、現在、地球規模での資源、石油枯渇問題についての話し合いと言う事で集まったと思いますが――」
女性大統領であるファトマの言葉に、どの国も心中穏やかではなかったが国の代表として余裕を見せる必要があったために、もっとも重要な議題を提供したトルコ政府に対してニヤリと内心では歓喜の声を上げていた。
「おほん! 日本政府としては、その辺は、どう思っているのかね?」
アメリカのルーズバルト大統領がチラチラと日本を見る。
日本国総理大臣である謙島首相にとっては非常に頭が痛く振られたくない状況下でのキラーパスで会ったこともあり、「こいつう」と、心の中で思いながらも各国の前で答えないという訳にも行かず、
「日本国としては、現在の世界的な石油枯渇問題について由々しき事態だと検討しております」
日本国首相の独自の言い回しに、各国の代表が苛立った空気を纏う。
そんな中で中国国家主席である王国家主席は、「中国政府として日本国に面倒を見てもらおうとは考えてはいない」と、声を上げた。
その言葉に南アフリカ共和国のネルソン大統領だけでなく、インドのチャーチル大統領、ドイツ、フランス、カナダの大統領まで驚いた表情を中国に向けた。
中国なら、日本を脅してまで石油に代わる資源確保を口にすると思っていたからであった。
「まるで、我が中国が日本を侵略するのが当たり前のように思われているようだ」
その王国家主席の言葉に日本を含んだ全ての国々が疑心暗鬼な視線で中国の国家主席を見る。
「中国は、現在、ロシア、北朝鮮と協力してロシアのモンスターに占領された東部を取り戻す作戦を展開している」
「なんだと!?」
アメリカのルーズバルト大統領は、いきなりの話に声をあげる。
モンスターがロシア本土に上がったという話は、全世界的にニュースになっていたが、それ以上の情報は不自然なまでに各国に入ってくることはなかった為、寝耳に水であった。
「本当のことだ……」
ロシアのアリスタリフ大統領は難しそうな表情をして短く中国政府の王国家主席の言葉を肯定する。
「今、現在、ロシアの東部はモンスターに占領されている」
そのロシア大統領の言葉にざわつく国際会議場。
「どのくらいまで占領されているのだ?」
「北朝鮮、中国人民共和国と面しているロシア領まで占領されている。正確な面積は、判明していないが、日本国の国土5つほどと見てくれればいい。すでにモンスターにより呑み込まれた都市が10を超えており、人口1000人以下の町や村は言うに及ばない。そういう認識で見てもらっていい」
「何故……、その情報をもっと早く――」
「自国内で起きた問題だからだ。だが、それだけ魔鉱石を回収できている。よってロシア、中国、そして、この場にはいない北朝鮮は日本に対して石油に代わる資源について口にすることはない。ただ日本国に対しては謝罪と賠償を請求したい」
ロシア大統領の言葉に一瞬、どの国も凍り付く。
自国内で起きた問題なのに何故に謝罪と賠償を日本に請求するのか? と、言う疑問であった。
それに対してアメリカ大統領は笑みを浮かべて「どういう理屈で?」と、疑問を呈した。
「決まっている。日本の神々のダンジョンから溢れたモンスターによりロシアは数百万人の人民の命を失い領土まで占領されたからだ」
そうロシアが口にしたところで、都市部の衛星写真が手渡されていくが――、その内の何枚かが明らかにモンスターが破壊した後ではない衛星写真が映っており、
「この写真は、まるで核兵器を使ったあとのように見えるが?」
綺麗に更地になっている町の残骸。
それを見たアメリカ合衆国、ルーズバルド大統領が、ロシアのアリスタリフ大統領に尋ねた。




