スキルと魔法の追求
都築さんをダンジョンに案内してから、一週間が経過した。
その間、都築さんよりダンジョンへの同行申し出の依頼があったが、全部、断っていた。
理由は、何気なく都築さんを鑑定した時に、スキル【アイテムボックスⅠ】と【鑑定Ⅰ】を習得していた事に気がついたから。
そして何かあったか聞いたときに何もなかったと言っていたので、少しばかり人間不信になっていた。
「あの……、佐藤さん」
「はい? 何でしょうか?」
「我が社の都築と何かありましたでしょうか?」
「いえ。何もありませんが、少しダンジョン内ですることが多かったもので」
「それでは、都築を同行させても」
「それは、しばらくは――」
「そうですか」
日本ダンジョン冒険者協会が提供している冒険者掲示板には、基礎レベルが10離れていれば、相手を鑑定することが出来ないと書かれていた。
つまり、俺のレベルは木戸商事にはバレていないはず。
何度か木戸さんが、俺に対して都築さんの同行をお願いしてきていたが、それは俺の力を測りかねているという事だろう。
少し、俺も油断してしまい都築さんの同行を許可してしまっていたが、本来ならアイテムボックスにどれだけの容量を入れられるなど黙っておくのが普通だった。
正直、ここ数か月、トントン拍子に上手く行っていたので、警戒が緩くなっていたと反省した。
俺の生命線は、アイテムボックスの容量とレベルの高い鑑定スキル。
それを鍛えるためには、些細なボーナスも見逃すわけにはいかない。
何せ、俺と同じか、それに近いアイテムボックス容量の冒険者が出てきた時点で、競合他者となり、稼げなくなるのだから。
幸い、11階層以降に得られるスキルは、アイテムボックスと鑑定は殆ど得ることが出来ず逆に戦闘系のスキルが多いらしい。
つまり、10階層までのスキルを獲得できる魔物や農作物を狩り切れば俺の優位性は崩れないということ。
正直言ってダサい行いではあるが、そこは勘弁してほしい。
出来れば戦闘は避けたいのだ。
木戸綾子さんと会話をしていると養老渓谷ダンジョン前に到着したので、すでに到着している10トントラックに稲穂付きの新米や果実や穀物に、農作物をアイテムボックスの転移を使い載せていく。
「あの、佐藤さん」
「なんですか?」
「佐藤さんのアイテムボックスって、一度は回収した箱にフルーツなどを並べて、トラックの荷台の上に転移させているんですよね?」
「そうですね」
「それなら、稲穂付きの新米の玄米部分だけを選別して分けることとかは――」
「あー、どうですかね」
そこまでは気が回らなかった。
木戸さんに言われて初めて気がついた。
固定観念に支配されていたと言えば、それまでだが。
アイテムボックス内に、明日の朝に菊池さんに渡す稲穂付きの新米が20トン入っているので、米粒――、新米部分だけを稲穂から切り離す。
それをアイテムボックス内でコピペしてソートして実行!
一瞬にして、玄米がついていた稲穂と、玄米に分かれる。
「出来るみたいですね」
これは便利だ。
分離する物を指定するだけで、アイテムボックス内で、部位を指定して分けられるならいろんな用途に使えそうだ。
まぁ、これが出来るようになるのは【アイテムボックスⅧ】からだったので、どれだけの人が使えるか分からな……。
「――ん?」
「どうかしましたか? 佐藤さん」
「いえ」
これ、もしかして潮水を浴びたジープの海水を指定すれば、1200万円もの金を払う必要はなかったのでは?
もっと自分のスキルの使い道について追及する必要があるな。
次は水魔法を追及しないと。




